しかし、これがロシアにとって苦難のはじまりでもあった。アメリカが、日本、欧州を巻き込んで、「経済制裁」を課したからです。2014年、日本では、「プーチンは世界の孤児」という表現が使われていました。
しかし、皆さんご存知のように、ロシアは、「AIIB事件」で救われます。これで、中国がアメリカ最大の敵になり、アメリカはロシアとの和解に動きはじめた。
2015年5月、アメリカは、「南シナ海埋め立て問題」をバッシングしていました。日本の新聞にも、「米中軍事衝突か!?」と記事が出るほど、両国関係は悪化していた。
同じ5月、ケリー国務長官はロシアを訪問。「制裁解除もあり得る」と発言し、世界の人々を仰天させました。同7月、米ロは共同で、「イラン核問題」を解決します。同9月、ロシアは、シリア「イスラム国」の空爆を開始。欧米は、「ロシアはISだけでなく、「反アサド派」を空爆している!」と批判しています。しかし、ロシアの空爆でISが弱体化していることは誰も否定できません。その理由は、ロシアがISの資金源である石油インフラを遠慮なく破壊していることです。
12月、ケリーは再度ロシアを訪問し、プーチンと4時間会談を行いました。2014年、欧米の指導者は、誰もプーチンに会おうとしなかった。しかし2015年、欧米の指導者がプーチンに会うことは、もはやタブーではなくなっています。そう、プーチンは、「クリミア併合」からはじまった危機を、約1年で切り抜けることに成功したのです。しかし…。
一難去って、また一難
しかし、プーチンの苦難はつづきます。問題は、経済です。ロシアは現在、
・経済制裁
・ルーブル暴落(1ドル35ルーブルから70ルーブルまで下落)
・原油暴落(バレル115ドルが40ドル以下に)
で苦しんでいます。今最大の問題は、「原油価格の暴落」でしょう。08年夏はバレル140ドルだったのが、今では40ドル以下である。しかも、「シェール革命による供給過剰」が主因。つまり、原油価格低迷は、「長期化」する可能性が高い。いまのところ、原油価格が上がる可能性は、前号でも触れたサウジとイランの対立が大きな戦争に発展していくこと。
いずれにしても、プーチンにとっては、「厳しい年」になりそうです。
ちなみに、モスクワ在住筆者から見ると、一番実感しているのは、「インフレ」です。ルーブル暴落で、輸入品が高くなり、インフレが進んでいる。公式発表では、「2015年は約16%のインフレ」とのことですが。食料品は「1年で倍になった」ぐらいの感覚で、庶民は嘆いています。