プーチンの次の戦略は「米中を戦わせて、ロシアが漁夫の利を得る」

 

米中覇権争奪戦におけるロシア

最後に、「米中覇権争奪戦」におけるロシアのポジションについて触れておきましょう。

既述のように、アメリカは、中国との戦いに集中するために、ロシアとの和解に動いています。しかし、その中国とロシアは、05年以降「事実上の同盟関係」にある。それで私は07年、「中国・ロシア同盟がアメリカを滅ぼす日」(草思社)という本を出版したくらいです。

中国とロシアは、「アメリカの一極世界をぶち壊す」ことで心をひとつにしています。そうなのですが、いつもアメリカと戦っているのはプーチンなのですね。中国はこれまで、「チャイナロビー」によって、アメリカのバッシングを回避することに成功してきた。

その一方で、「チャイナロビー」を使って、アメリカの対ロシアバッシングをやめさせようとした形跡はありません。つまり、賢い中国は、「アメリカとロシアを戦わせて漁夫の利をえることに成功していた。

これは、ロシアにとって「損」です。ですから、ロシアはアメリカの接近を歓迎することでしょう。

米中を戦わせてロシアが漁夫の利を得る」というのは、リアリズムの視点から、ナイスなポジションです。要するに、米中覇権争奪戦におけるポジションは、ロシアは、中国の事実上の同盟国だが、アメリカとも和解したい。できれば、「自分で戦いたくない」ということなのです。

これを、「バックパッシング」(責任転嫁)といいます。狡猾に思えるかもしれませんが、実はみんなやっていることです。たとえば、アメリカは、グルジア(ジョージア)やウクライナをロシアと戦わせた。日本だって、「中国が攻めてきたらアメリカに戦わせよう」とあたりまえに思っている。これは、「バックパッシングしよう」ということ。

逆にいえば、アメリカが「日本を使って中国と戦わせよう」というのも、当然あり得ます。日本は、グルジアやウクライナのような立場にならないよう、細心の注意が必要なのです。

ロシアをまとめましょう

・AIIB事件以降、アメリカの主敵は中国になったので、ロシアバッシングは下火になる
・しかし、原油価格は低迷し、ロシア経済は苦しい(サウジとイランの戦争が起これば、原油価格は上がるが)
・米中覇権争奪戦において、ロシアは中国寄り

しかし、米中が戦うとロシアは漁夫の利を得ることができるので、アメリカとの和解は歓迎

となります。

2013年は、シリア。2014年は、クリミア。2015年は、シリア・IS空爆。毎年世界を驚かしつづけるプーチンは、今年どう動くのか?目が離せませんね。

image by: Wikimedia Commons

 

ロシア政治経済ジャーナル
著者/北野幸伯
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