子育てにおける“真理”は、ビジネスの世界にもぴったり当てはまる!? メルマガ『ビジネス発想源』の筆者・弘中勝さんは、自らのご家庭での子育てを例に、“顧客に直接聞くマーケティングは失敗する”と指摘しています。
直接要望を聞かない
子育てで大変な思いをしないコツの一つは、「子供に好みの要望を聞かないこと」です。
食事時に「何か食べたいものある?」とか、出かける時に「どこに行きたい?」とか、お店で「どれが欲しい?」とか、どうしたいかを聞かないようにするのです。
やっぱり子供の喜ぶ顔は見たいし、子供が質問に答えてくれるのは嬉しいから、ついつい要望を聞いてしまう人が多いんですね。
かつて塾講師の時に、たくさんの子供とその親御さんを見てきましたが、わがままに育って人を困らせる子供、または何も考えずに自主性のない子供は、大抵は親がそういう育て方をしています。
そういうことが分かっているので、私も子供が産まれた時に、うちの家内にはきつく「そういう育て方したら、3歳を超えた時に困るで」ということを伝えていました。
ところが、やっぱり家内は子供がかわいいから、「何が食べたい?」「どこ行きたい?」と聞いてばかりで、子供のいう通りにしていたら、やっぱり3歳からとても困っています。
例えば家内が「何が食べたい?」と4歳の長男に聞いたら、「ホットケーキがたべたい」と言うので、家内がそれから近くの店に卵を買いに行ってまでホットケーキを焼いて食卓に出したら、「ぼく、やきそばがたべたかった……」とか言い出して、全然食べずにわめくんですね。
ところが、毎日夕食は私が作っているのですが、私が作った料理は、子供の具材が全く入っていない。野菜炒めなどでも「やったー」と言って食べ始め、もちろん残すことはよくありますが、「あれが食べたかったのに……」とはごねません。
家内は、いつもそれが不思議でしょうがないらしく、自分のほうが子供の好きなモノを作ってるはずなのに……と、しょっちゅう困り果てています。
子供の好きなものを作っても、子供の行きたいところに連れて行っても、子供の欲しいものを与えても、逆に子供は言うことを聞かなくなるんですね。
子供の要望を聞けば、子供は頭で考えて言うので子供の思考力が高まって表現力も豊かになる、なんていうのも、正直全く違うと思います。
子供の頭の中の選択肢なんて小動物程度なので、そんな中で考えさせたって大した思考力になりません。
そして親にとっても、子供が欲しいと思ったものを用意するだけだから、親の思考力も退化します。
それよりも、そういう子供の事前の要望は関係なく、必要なものや良さそうなものを提供することで、「これは好き」「これは面白い」という経験を増やしていくほうが、はるかに思考力が高まるし、また提供する側も発想力が高まるのです。
別に、親の制御しやすい子供に育たせる、ということではないんですね。
だから、子供がきちんと自分の考えを持ち、また親が子供に翻弄されないようにするには、直接要望を聞いたらダメなのです。
まあ、子育てには各家庭にそれぞれ信念があるので、反論のある方もおありだと思いますが、あくまでも経験則による一般論です。
そして、この子育ての当たり前の真理は、ビジネスの世界にもぴったり当てはまります。
マーケティングリサーチをする時に、「どんな商品が欲しいですか?」「どういう色だったら、買いたいですか?」というように、消費者の要望を聞いたらダメなのです。
「いや、それがニーズだろ」と思いがちですが、実はこれが全くニーズではありません。
「この商品、青色だから男性っぽいけど、私たち女性はピンクだったら買うかな……」なんていう要望を真に受けてピンクで出しても、そう言った人はほとんど買ってくれません。
逆に同じ色で、ただリボンをつけただけ、みたいなものが売れたりするんですね。
これも子育て理論と同じことで、消費者の要望は本当のニーズを表しておらず、またそのニーズに応えようとするだけだと、発想力や開発力が退化してしまうのです。
それが分からないと、モノが売れない時に「じゃあもっとたくさん要望を聞かなくては」と、悪い方向に行っちゃうんですね。
そういう窮地を脱するためには、「消費者に直接要望を質問しない」ということが大事なのです。
よくマーケティング担当者の成功論の中で、「街に出て道行く人をじっと眺めている」とか「現場を見学させてもらって作業をずっと見る」といった話が出てくるのですが、直接質問したら早いはずなのに見るだけなのは、「直接聞いたら本当の答えが分からないから」です。
自分の目で確かめながら、「こういう要望があるのではないだろうか」「こんな要望があるに違いない」という仮説を立て、検証をしていくのです。
御社がお客様の要望を知るためには、アンケートのような直接聞くこと以外に、どんな方法がありますか?
【今日の発想源実践】(実践期限:1日間)
・「お客様の要望」とは、自社にとってはどのようなことを指すか。その定義をノートに書く。
・アンケートのような直接質問すること以外に、「お客様の要望」を知るためにはどのような企画ができるか。簡単な案をノートにまとめる。
『ビジネス発想源』(無料メルマガ)
<まぐまぐ大賞2014・総合大賞受賞> 連載3,000回を突破した、次世代を切り拓くビジネスパーソン向けの情報メディア。
<<最新号はこちら>>