無慈悲な核攻撃宣言。北の「オオカミ少年」が無視できなくなってきた

 

アメリカ、戦略の変化と北朝鮮問題

しかし、オバマの時代になると、アメリカで大きな変化が起こってきました。最大の変化は、「シェール革命」です。アメリカは、すでに世界一の「産油、産ガス国」に浮上。「資源がたっぷりある」中東の重要度はどんどん下がっています。

もう1つの大きな変化は、中国が十分力をつけ、アメリカの覇権に挑戦するようになった。つまり、中国が最大の脅威」に浮上した。このことを踏まえて、ここ数年の動きを振り返ってみましょう。

  • 11年11月、オバマ、戦略の重点をアジアに移す」と宣言
  • 13年8月、オバマ、「シリア(アサド政権)を攻撃する!」と宣言
  • 13年9月、オバマ、シリア攻撃をドタキャン

この頃、「イランとの和解」に動きはじめる。

  • 14年3月、ロシア、クリミアを併合

アメリカは、日欧を巻き込んで「対ロシア制裁」を発動。

  • 14年8月、アメリカと有志連合、イスラム国への空爆を開始
  • 15年2月、ロシア、ドイツ、フランス、ウクライナ首脳、ウクライナ内戦の「停戦」で合意
  • 15年3月、「AIIB事件」。親米国家群を多く含む57か国が、アメリカの制止を無視し、中国主導「AIIB」への参加を表明。以後、アメリカの「反中」はエスカレートしていく
  • 15年5月、米中、「南シナ海埋め立て問題」で対立。「米中軍事衝突」を懸念する声も
  • 15年9月、習近平、訪米するも冷遇され意気消沈。同月、ロシアは、ISと反アサド派への空爆を開始
  • 16年1月6日、北朝鮮、「水爆実験」
  • 16年2月7日、北朝鮮、長距離弾道ミサイル実験
  • 16年2月22日、アメリカとロシア、「シリア停戦」で合意
  • 16年3月2日、国連安保理、北朝鮮制裁決議案を採択
  • 16年3月7日、アメリカ、韓国、「最大規模の軍事演習」開始。北朝鮮は、「米韓を先制核攻撃する!」と恫喝。

こうやって振り返ると、アメリカが、ウクライナ問題とシリア問題を解決し、アジアに重点をシフトしている様子がはっきり見えてきます。

00年代、石油の枯渇を恐れるアメリカは、中東を重視し、アジア・北朝鮮問題を事実上無視してきた。しかし、今は、シェール革命と中国の台頭で、中東の重要度が減りアジアの重要度が増している。それでイランは救われ、北朝鮮問題が浮上してきたのです。だから、今までの延長で北朝鮮問題を見ていてはダメなのですね。

中国は北朝鮮を守る

日本ではよく、「中国も、わがままな金正恩に困っている」「中国も北朝鮮を見捨てる」という話をよく聞きます。確かに、中国がわがままな金正恩に困っているのは、そのとおりでしょう。しかし、「見捨てる」というのは違うと思います。なぜでしょうか?

地政学的な理由です。中国が北朝鮮を見捨てたらどうなるでしょうか? そう、韓国を中心に朝鮮半島は統一されるでしょう。そして、韓国は、米中間で揺れているとはいえ、「アメリカの軍事同盟国」です。ということは、「南北統一」後、アメリカ軍が中国の国境沿いに駐留することになる。統一後、北朝鮮、中国国境にミサイルでも配備された日にゃあ。こう見ると、中国には、「なんとしても北朝鮮を守りたい」動機がある。

ちなみに、国連制裁。成功するかどうかのカギを握っているのは、中国です。

しかし効果的な制裁になるには条件が1つ満たされなければいけない。北朝鮮貿易取引の90%を占める中国が徹底的かつ持続的に制裁に参加しなければいけないという点だ。

 

中国はその間、制裁に積極的に参加するような態度を見せ、時間が過ぎれば手綱を緩めてきた。これでは5回目、6回目の核実験を防ぐことはできない。

 

政府は国際社会、特に中国が国連制裁を徹底的に守るよう万全を尽くさなければいけない。

(中央日報3月3日)

中国の国益から見ると、「制裁を守るわけがない」ということになります。

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