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入社前「研修」拒否した学生の内定取り消し。なぜ会社は敗訴したか?

 今年もそろそろ就活シーズンが本格化してきますね。さて、あなたの会社では内定者に対して、入社前研修の参加を義務付けていますか? 今回の無料メルマガ『「黒い会社を白くする!」ゼッピン労務管理』では、入社前研修への参加を拒否したことで内定を取り消された学生vs企業の裁判例を紹介しています。はたしてその判決とは?

入社前研修への参加を強制できるのか

結婚をしている場合、浮気(不倫)は、法律的に問題になります(ただ、厳密には「犯罪」ではないようですね)。

では、もし結婚する前であればどうでしょうか。これは、浮気をされた本人にとっては大きな問題にはなるとは思いますが、法律的には問題はないでしょう。つまり、同じ行為であっても2人の関係によって(結婚しているのか、そうでないか)法律的にその問題の捉え方が大きく違うということです。

これは、会社における研修についても同じことが言えます。社員であれば、研修は義務です。「受けたくない」と言っても会社の業務命令であれば、受けなくてはなりません。また、会社は研修を受けることを強制することもできます。

では、これが社員になる前の内定の時点であればどうか? 会社は内定者にも研修を強制することができるのか?

それについて裁判があります。

ある出版の会社で、内定者の学生が入社前研修の参加を断ったことから、その会社は内定の取り消しを行いました。そこで、その内定者の学生が「内定取り消しは違法である!」として会社を訴えたのです。

では、その結果はどうなったか?

会社が負けました

そのポイントは学生の立場」にあります。実は、この内定者の学生は、最初は内定者懇親会や入社前研修に参加をしていました。ところが、その懇談会や研修でレポートや課題をたくさん出され、この学生の卒業のための論文作成に支障をきたすようになってしまったのです。この部分を、裁判所は「学業を阻害してはならない」としてこの学生の言い分を認めました。

さて、いかがでしょうか?

おそらく、みなさんの会社でも、内定者に対する入社前研修を行っているところが多いでしょう。そして、その参加もほぼ強制」になっているのではないでしょうか。ただ、この裁判のように、その参加を強制することはできないのです。

とは言え、入社後になるべく早く一人前になってもらうには入社前研修もとても重要です。では、どのように行ったら良いか?

そのポイントは3つあります。

まずは、頻度や内容を参加しやすいものにすること。今回お話した裁判のように、参加する学生が負担に感じるようでは参加してもらうのは難しいでしょう。また、なるべく実務的な研修が教育には良いのはわかりますが、学生が参加したいと思えるような多少は「楽しみ」のある内容にするのも1つの方法でしょう。

2つ目が、採用の段階で入社前研修に意欲的な人材を選ぶことです。採用の条件を「入社前研修にすべて参加できること」と明言してしまうのは問題ですが、「入社前研修に意欲的な人材」を社内的な採用基準にするのであれば、問題はありません。学習熱心な学生は、むしろ入社までに研修を受けて成長したいと思っている場合も多いでしょう。そういった学生を選ぶようにするのです。

最後の3つ目は、入社前研修と少し話はズレますが、早く一人前に育てるという意味で入社日自体を早めてしまうことです。

※ご参考「『ユニクロ』一足早い入社式

ただし、それに対する批判もあるようですね。

※ご参考「1か月早い『3月入社式』への風当たり 『ブラック企業』批判も出てきたが…

入社前研修が重要なのは、私も人事を長いこと経験してきましたので充分わかります。ただ、そのやり方には工夫が必要ですね。

image by: Shutterstock

 

「黒い会社を白くする!」ゼッピン労務管理
【経営者、人事担当者、労務担当者は必見!】
企業での人事担当10年、現在は社会保険労務士として活動する筆者が労務管理のコツをわかりやすくお伝えいたします。
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