【3】旅行の予防医学
高齢の旅行者では、心臓や肺の病気の悪化に注意すべきです。上空を飛んでいるときの航空機内では機内の酸素分圧が低くなるので、これらの病気の増悪に注意する必要があります。妊婦の場合には、冒険や探検、危険な場所へ行くことなどのリスクの高い行動は控えたほうがよいでしょう。
また、持病を持つ方は、その種類と内服薬の詳細内容、アレルギー歴などについて、英語や現地用語で記載したメモを携行することをお勧めします。内服薬は渡航前に十分に補充しておくと安心です。健康保険や傷害保険の内容も確認しておくとよいと思います。巨額の医療費を支払うことになった人も多くいるようです。
最後に、最新の渡航医学知見の「まとめ」をお示しします。
- 旅行中の死亡原因で多いのは心臓突然死,交通事故,溺水
- 感染症で死亡するリスクは意外に小さい
- ホテルのランクが高ければ高いほど下痢症の予防処置が十分というわけではない
- 旅行者の10%が新たなセックス・パートナーを得て,約半数は無防備な性交を経験する
- 親戚や友人を訪問する旅行者はワクチン未接種が多く、感染リスクが高い
- メディカル・ツーリズム(海外で手術などを受けること)で術後合併症が起きると問題がかなり複雑化する(治療代金や賠償などの未払いが多い)
- 機内キャビン環境での呼吸器系病原体(結核など)の感染リスクはそれほど高くない
参考文献
McIntosh IB. The Pre‐Travel Health Consultation. Journal of travel medicine. 2015;22(3):143-4.
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