自分でドレスを着て、売り込みに奔走
藤 しかしそこから店舗を持とうと思ったのはどうして? ネットオークションだけでも十分利益が出てたんじゃないですか?
清 そこはやっぱり私も欲が深いというか、商売っけがあったので(笑)。たまたま新潟の繁華街で遊んでいる時に、飲み屋ビルの1Fにある8坪の店舗が空いてるのを見つけたんですよ。すごく小さいし家賃が安かったからこそ、「私でもお店ができる」と思えたんです。街で見かけるのがスーツを着てるコばかりだったから、ドレスを流行らせることもできるなとも思えたし。すべてがプラスプラスに働いて「ここで店を出そう!」って決めました。
藤 すごく運命的な展開ですけど、最初から売れたの?
清 いや、売れなかったですね。企業のきの字も知らずに始めてるから、どうやればお客様が来るかわからなくて。待っていても誰も来てくれないので、自分がドレスを着て「いらっしゃいませ❤」って営業してみたり(笑)。そうすると少しずつ物珍しさでお店に入ってくれる人や、「着てみよう」って勇気を持ってくれる人が増えてきて。誰か1人がお店で着始めると、その輪も徐々に広がって行って。ドレスの方がスーツよりも華やかさが出るじゃないですか。告知しないとお客様が来ないことにも気づいて、手書きのチラシを作ってビラ巻きに行ったりもしてました。
藤 オークションで儲かってるんだからいいか、とは思わなかったんですか?
清 よく言われてましたね。でもその間はネットオークションを辞めてたんですよ。そんな時間もなかったし、店舗を軌道に乗せることで頭がいっぱいで。外販をやろうと思い立ったときは、ドレスを持ってアポなしでキャバクラを回りましたね。大概追い返されましたねけど。田舎ってやっぱり閉鎖的で、よそ者を嫌うんですよ。
藤 新規の営業ってなかなか受け入れられにくいですもんね。
清 でも数打ちゃ当たるもので、東京のキャバクラに遊びに行ったことがあるオーナーさんは「待ってたんだよ、こういうドレス。うちはドレスに切り替えたいと思ってたから、買ってあげるよ」って喜んでくれて(笑)。で、そのお店がドレスに変わると、今度は知り合いのお店をたくさん紹介していただけて。地方の面白いところなんですけど、最初はめちゃくちゃ閉鎖的でも、一度仲良くなるとものすごく良くしてくれるんです。それでどんどん輪が広まって、みんながドレスを着るようになって。2年目くらいでようやく人を雇えるようになったんです。