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【UFO】ついには国会にまで。軍事アナリストが語る最新UFO事情

古今東西、UFOの目撃談を上げれば枚挙に暇がありませんが、はたしてその真相は? 軍事アナリストの小川和久さんがメルマガ『NEWSを疑え!』の中で、数々の目撃談や疑問点などを挙げながら冷静に解説しています。

UFO──最近の事情は??

国際変動研究所理事長 軍事アナリスト 小川和久

Q:2015年4月1日、参議院予算委員会でアントニオ猪木氏が中谷元・防衛大臣に「UFO(未確認飛行物体)にスクランブルをかけたことがあるか」と質問。中谷防衛相は「地球外から飛来したと思われる未確認飛行物体を発見した事例については承知をしていない」と答弁しました。UFOについては、眉にツバをつけて半信半疑で話題にしたりすることが多いのですが、国会質問にまで出るとは思いませんでした。たまにはUFO最近事情を振り返っておくのも一興でしょう。

小川:「UFOに関するアントニオ猪木氏の国会質問は、産経新聞やスポーツ紙などが報じたほか、英『デイリー・メール』紙米CNNなども伝えました。質問した日がエイプリルフールの4月1日。また、猪木氏がブラジルのコーヒー園で働いていた少年時代にUFOを見た、知人に宇宙人からチップを埋め込まれた人がいる、などと『体験談』を語ったこともあって、半ば冗談まじりに受け取った人も少なからずいたでしょう」

「UFOにスクランブルは?」猪木氏、防衛相にまじめに質問(産経新聞サイト 2015年4月1日)

猪木氏が国会で大マジメ「UFO質問」(東スポWeb 4月2日)

Aliens have never tried to invade from space: Japan’s defense minister(The Japan Times 4月2日)

Alien spacecraft have NEVER invaded Japan: Country’s own defence minister forced to answer questions in parliament about possible aerial invasion(Daily Mail Online 4月2日)

Rest easy Japan: No sign of space invaders(CNN 4月3日)

小川:「実は、たまに私もテレビからUFOの話をしてほしいと依頼されることがあり、そんなときは『実録・自衛隊パイロットたちが接近遭遇したUFO』(2010年、講談社)という著書のある佐藤守さん(防衛大学校7期生、元空将)を紹介するようにしています。佐藤さんはF-86F、F-4EJ、F-1などで飛んだ戦闘機パイロットで、田母神俊雄氏(元航空幕僚長)の上司だったこともあり、UFOを何度か見たといっている人です。『金正日は日本人だった』なんて本も書いています。私自身はUFOに詳しいわけではありませんが、今回は知っている範囲でお話しすることにしましょう」

「実録・自衛隊パイロットたちが目撃したUFO」佐藤守著(日刊ゲンダイ 2015年1月6日)

ロズウェル事件で火がついた

Q:有名なUFO遭遇事件がいくつかありますね。紹介してください。

小川:「世界的にもいちばん有名なのは、ロズウェル事件でしょう。これは1947年7月に米ニューメキシコ州ロズウェル付近で墜落したUFOが米軍によって回収されたとして有名になった事件です」

「1947年7月8日にロズウェル陸軍飛行場が発表したプレスリリースで『第509爆撃航空群の職員がロズウェル付近の牧場から潰れた空飛ぶ円盤(flying disc)を回収した』と発表したのですが、数時間後に第8航空軍司令官が『職員が回収したのは空飛ぶ円盤(flying saucer)ではなく、気象観測用気球だった』と述べたことが発端とされています」

「その後、1970年代末ころに残骸の回収に関わったという人物が、軍は異星人の乗り物を秘密裏に回収したと証言したことから騒ぎが大きくなり、その後、さまざまな憶測が飛び交い、それなりの研究、調査などが重ねられ、多くの本が書かれました。空飛ぶ円盤の墜落から、異星人の死体の回収、軍による隠蔽工作、生きた異星人の存在などと、話がどんどん広がっていったのです」

「ロズウェル事件は、映画、テレビドラマ、小説などでも盛んに取り上げられています。エリア51と呼ばれるネバダ州南部のグルーム・レイク空軍基地にロズウェル事件と関係するUFOの残骸、または異星人の遺体があるという話もその1つです。これは基地従業員の証言で明確に否定されています」

「ロズウェル事件に対するアメリカ政府の公式見解は、1997年6月24日にアメリカ空軍参謀本部が提出した報告書としてまとめられています。この結論は、1947年7月に回収されたのは極秘の調査気球で、宇宙人の死体の回収と解剖は捏造であり、1956年6月26日に起こった航空機墜落事故との記憶の混同がある、というものでした」

ロズウェル事件(Wikipedia)

ロズウェル付近で回収された残骸(左)は、米軍の極秘の調査気球に吊るされたレーダー反射材と確認された(米空軍『ロズウェル・リポート─事件解決』p.7)

>>次ページ 日本の政府調査線が遭遇したUFOの正体とは?

日航機や政府調査船も遭遇

Q:日本がらみのUFO遭遇事件もあるでしょう?

小川:「有名なのは日航ジャンボ機UFO遭遇事件です。これは1986年11月17日、パリ発アンカレッジ経由東京行き日本航空ボーイング747-246F貨物機JL1628便が、米アラスカ州フェアバンクス上空高度約1万メートルを飛行中にUFOに遭遇して、1時間弱併走された、とされる事件です」

「貨物機のコックピットには機長・副操縦士・航空機関士の3名が乗っており、機長によると、UFOは旅客機の胴体ほどで両端にライトのようなものを点灯させた母船型だったといいます。また、機内の気象レーダーにも雲のようなもの(金属ではない)として写っていたようです。ただし、副操縦士は『光は見たが、形は確認できなかった』と証言しています。航空機関士も何も見ていないと証言しているようです。さらに、機長は熱を感じたといっていますが、これは副操縦士・機関士ともに否定しています」

「この機長は、86年11月の事件の前後にもUFO目撃談を語っており、86年11月の事件後にアラスカ上空でUFOを目撃したと証言し、これについては後に光柱現象の誤認だったと認めたようです」

日航ジャンボ機UFO遭遇事件を伝える新聞1
日航ジャンボ機UFO遭遇事件を伝える新聞2

小川:「日本がらみのUFO遭遇事件では、水産庁の調査船『開洋丸』が1984年と86年に遭遇したとされる事件があり、日本版『サイエンス』誌1988年9月号に『調査船「開洋丸」の見た未確認飛行物体』という記事が掲載されたことがあります。複数の観測・調査専門家が証言したために、新聞などメディアでも取り上げられました」

「まず1984年12月18日には、南アメリカ大陸南端付近のフォークランド諸島付近で、開洋丸の航海士が東へ動く不審な光体を発見。2等星ほどの明るさで、速度や方向が一定しないままフラフラと動き、途中から速度を上げて一直線に視界から消えた、というのです。次に1986年12月21日には、ウェーク島近辺、北緯26度の日付変更線付近でマッハ4の速度で飛行180度ターンなど不規則運動をする巨大タンカーほどのレーダー映像を確認。ただし肉眼では見えなかった、といいます」

「これについては、レーダー上にゴーストを作り出す電子戦の演習と、勝手に日本船を的として訓練した軍用機の飛行ではないか、という見方があります。それなりの説得力があるように思いますから、紹介しているブログページにリンクしておきましょう」

第一次・第二次 開洋丸UFO遭遇事件(実録!! ほんとにあった(と思う)怖い話)

>>次ページ 小川さんは肯定? それとも否定?

でっち上げや誤認も多いが…

Q:まあUFO(=Unidentified Flying Object アンアイデンティファイド・フライング・オブジェクト)、つまり未確認飛行物体との遭遇ですから、相手が何ものか確認できず正体不明なのは当たり前ですし、遭遇したと証言する人が、嘘をついているわけではない場合が少なからずあるでしょう。ただし、その何かが自然現象や航空機・衛星など人工的な現象であるケースと、証言者の頭や身体の中で起こっている(たとえば本当に多数の光る物体が、存在しないのに見えている)ケースがほとんどでしょうね。

小川:「ウィキペディアの『未確認飛行物体』という項目を見ると、さまざまな事件が並んでいます。目立ちたいとか、メディアなどに話を売って金銭を得たいといった理由で、証言者がでっち上げた事件が少なくありません。それから誤認がとても多いようです。日航ジャンボ機UFO遭遇事件と開洋丸UFO遭遇事件については、前者は自然現象、後者は軍事演習の誤認で説明がつきそうに思います」

「ただ、私もよく知っている佐藤守さんは『何度も見た』と証言しており、嘘をいっているとも思えません。たとえば、ひたすら座禅を組み厳しい修行を重ねていると、あるとき、ものすごい光を本当に見るということがある。しかし、それは脳内の現象として説明がつく、とも考えられているわけですね。UFOとの遭遇を語る人には、そのようなことが起こっているのかもしれません」

未確認飛行物体(Wikipedia)

Q:ここ20年ほど宇宙の観測がめざましく進み、宇宙の年齢は約137億年とか、アンドロメダ銀河との距離は250万光年(宇宙最高速である光のスピードで250万年かかる)あって秒速約122kmで接近中とか、いろいろなことがわかってきた。空飛ぶ円盤がどこから来てもよいですが、何十年かの間に何回も来るはずがない。そもそも彼らは、なぜ地球を「発見」することができるのか。地球から宇宙に出ていった人工の光や電波は、まだ100光年くらいの距離までしか届いていないでしょう。人類が電波を使うようになってから、それくらいの時間しかたっていませんからね。その電波を受けた異星人が地球を『知的生命体がいる星』と認め、地球を訪れようとしても、光のスピードで100年後ですよ、到達するのは。

小川:「それもそうだし、そもそも地球を訪れることのできる高度な文明を持つ異星人のくせに、人類に何のコンタクトも取らず、航空機と並んで飛んでみたり、いきなり消えたりするのは、奇妙ですね。地球でも月の裏側でも、彼らが秘密基地をつくって隠れなければならない理由が見つからない。いきなり攻撃してくるほうが、まだわかる(笑)」

「まして、異星人の遺体なるものが人類、それもたかだか数千年前のミイラなんかに似ているのもヘンですね。地球上だけを見ても、人類に似ていない生物(動物や植物)のほうがはるかに多い。違う星の出身なのに人類によく似ているというのは、考えにくい偶然で、結局は想像力に限界のある人間が自分に似せて異星人像をつくった結果でしょう」

「しかし、何か正体不明のUFOと遭遇した、あるいは見たという人がいる以上、それが何であるかを解明する取り組みを、政府機関JAXA(宇宙航空研究開発機構)のような組織が担当してもいいだろう、と私は思います。その研究のなかから、何か新しい発見があるかもしれませんからね。夢を持つのは大切なことです」

聞き手と構成・坂本 衛

image by: Shutterstock

『NEWSを疑え!』第407号より一部抜粋

著者/小川和久(軍事アナリスト)
地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。
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実録・自衛隊パイロットたちが目撃したUFO 地球外生命は原発を見張っている (講談社+α新書)

 佐藤守さんの言にも説得力が

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