このほど東証上場が決定し話題となっている、老若男女問わず幅広い層から人気の「コメダ珈琲店」。無料メルマガ『MBAが教える企業分析』では、個性的なメニューと長居歓迎と謳うほどのくつろげる売り場作りなどのビジネス戦略、そして東証上場の意味を詳しく分析しています。
東証上場の意味(財務の基本)
今回は東証への上場が決まった、個性的なメニューで人気の企業を分析します。
●コメダ珈琲店(株式会社コメダ)
戦略分析
■戦場・競合
- 戦場(顧客視点での自社の事業領域):珈琲店
- 競合(お客様の選択肢):ファミレス(ガスト、サイゼリヤ等)カフェ(ルノアール、ドトール等)など
- 状況:市場規模はここ数年、回復傾向のようです。
■強み
1.居心地がいい、長居できる
- くつろげる
- 周りを気にせずのんびり会話ができる
2.顧客密着の臨機応変な対応
- 店員が常連さんの「いつもの」を記憶している
- 可能な範囲で常連さんの希望にこたえる(トースト薄め、コーヒー熱めなど)
⇒上記の強みを支えるコア・コンピタンス
★地域密着、長居大歓迎の文化
- 回転率低くても(顧客が長居しても)収益を確保できる仕組み(ノウハウ)
- 省スペース、少ない食材でも多メニューを提供できるノウハウ
- マルチ対応人材(厨房とフロア)、くつろぎを邪魔しない接客スキル
→研修センターにて教育を行っています。
上記のような独自の文化やノウハウがあるからこそ、強みを実現できているといえます。
■顧客ターゲット
- 平日のお茶の時間は、地元の主婦や高齢者
- 休日は、家族客
→老若男女、幅広い層の支持を得ています。
戦術分析
■売り物
- コーヒー
→世界で厳選された豆は独自の焙煎・抽出によってコメダオリジナルブレンド。コーヒーカップは、厚みのある有田焼で時間経過による温度低下を避けるために設計されたオリジナル。 - モーニング
→モーニングはドリンク料金で厚切りトーストとゆで玉子がつきます。 - ファミレス並みのフードメニュー数
→ボリュームメニュー(二人以上でわける)メニューも多い。サクサクふんわり焼いたデニッシュパンの上にたっぷりのソフトクリームを乗せた「シロノワール」が人気。
■売り値
- ブレンドコーヒー(420円)、シロノワール(600円)、ミックスサンド(580円)など
→客単価は約650円
■売り方
- 口コミ重視
- 独自のプリペイドカード「KOMECA(コメカ)」
→利用額の100円につき1円分のポイントが付与されます。金シャチ会員になるとコメカで支払った金額の3%がポイントで還元されます。
■売り場
- 店舗は幹線道路から離れた住宅地がメイン
- リビングルームのような店内
→広々店内、広い座席スペース。プライバシーを守るさりげないパーテーションにより半個室風。天然木を使ったテーブルや漆喰をモチーフにした壁で、くつろげるやわらかい空間を実現。新聞、雑誌(20~40種)を用意しています。
※売り値や売り物は調査時の情報です。最新の情報を知りたい場合は、企業HPなどをご確認ください。
まとめ(戦略ショートストーリー)
地元の主婦や高齢者をターゲットに「地域密着、長居大歓迎の文化」に支えられた「居心地がいい、長居できる」、「顧客密着の臨機応変な対応」という強みで差別化を実現しています。
気軽に入りやすい住宅地に出店し、リビングのような店内環境を整え、独自の人気メニューやお得な独自のプリペイドカードなどで、消費者の支持を得ています。
分析のポイント
「東証上場の意味(財務の基本)」
コメダは東証への上場が決まりましたが、東証上場の意味を整理してみます。
東証上場により、コメダにもたらされるものはいろいろありますが、最も大きなものは、「資金」です。つまり、上場するということは、「資金調達」という「財務面」への影響が最も大きいといえます。
「財務」について、少しご説明しますと、「財務」の基本要素は、下記のとおり3点あります。
- 何かに投資することの意思決定
- その投資に必要な資金をどう調達するかいう意思決定
- 調達した資金を活用した結果として得たお金をどう配分するかという意思決定
「財務」といえば、「資金調達」と思っている方が多いですが、「資金調達」は「財務」の一要素なのです。
コメダのケースで想定されるのはまず、新規出店(目標1,000店舗体制)に投資することを決めて、その次に、それを実現するために上場して資金調達することを決めて、今後、調達した資金を活用して得たお金をどう配分するかということを決めていくことになります。
また、「資金調達」するということは、投資家から資金を預かるということでもありますので、預かった資金を適切に使うことはもちろん、投資家が期待する収益をあげなければならないということでもあります。
さらに、お金を預かる責務として、事業がうまくいった、いっていないなどの経営成績やリスクに関する説明責任を果たさなければなりません。要するに資金調達したあとの責任は非常に重く、プレッシャーも相当なものであるということです。
ここまで、上場による資金調達に関連して「財務」の基本的な話をしてきましたが、事業活動における「財務」の重要性について、認識いただければと思います。
そして、資金調達以外で、コメダが東証に上場することの大きな意味は、「安定した、しっかりした企業」というイメージを得られることです。
コメダ珈琲店は99%がフランチャイズ店舗なのでオーナーを集めるにも安定した企業であるということは非常に重要となります。1,000店舗体制を実現するうえでも、オーナーの確保は必須となりますので、有効な打ち手であるといえるでしょう。
最後に、コメダの実質的なオーナーであるアジア系の投資ファンドにとっては、新規上場は投下した資金(買収額)を回収する絶好の機会になるということも補足しておきます。
image by: コメダ珈琲店 公式Facebook
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