MAG2 NEWS MENU

ここに来て急浮上した、トランプでもヒラリーでもない第三の立候補者

トランプVSヒラリーの一騎打ちになる可能性が高いとされていたアメリカ大統領選ですが、ここに来て、第三党で元ニューメキシコ州知事のゲーリー・ジョンソン氏の支持率が急上昇しています。かつてアメリカ大統領選を賑わせたロス・ペロー氏のように台風の目となることはできるのでしょうか? 無料メルマガ『ジャーナリスト嶌信彦「時代を読む」』に、嶌さんによる詳細な分析が記されています。

第三党も出てきたアメリカ大統領選、第二のペロー旋風なるか

本日はアメリカの大統領選についてふれたい。トランプ氏がかなり優位と言われているが、第二のペロー旋風が吹いている。かつてロス・ペロー氏がアメリカ合衆国改進党から大統領選に独立候補として出馬し、20%近く票を獲得したことがあった。

そういう意味でいうと、今回リバタリアン党から元ニューメキシコ州知事のゲーリー・ジョンソン氏が候補として登場。この人がロス・ペロー氏のような働きをするかは定かではないが、共和党のエリートたちはトランプ氏に対して少し困惑しているところもあり、大統領選は混乱した状況にある。

ジョンソン氏はどこまで善戦できるのか!?

5月18日にFOXニュースが発表した世論調査(The Fox News Poll / 3ページ4の投票意向の問)によると支持率はトランプ氏42%)、クリントン氏39%)、そして第三党のジョンソン氏10%)が2桁の支持を獲得。

かつてのペロー氏が出てきた時と似ているようなところもあり、いったい大統領選はどうなっていくのかと皆やきもきしているというようにもみえる。トランプ氏、クリントン氏とも盤石ではなく、嫌悪を示す人もいるので、そこをどれだけジョンソン氏がすくっていけるのかがカギとなっている。

混乱状況で思い出されるロス・ペロー旋風

ここで、ロス・ペロー氏はどういう人物かにふれたい。かつて「ロス・ペロー旋風」を巻き起こした人。海軍を経て、IBM勤務後独立し、エレクトロニック・データ・システムズ(EDS)を創業。その後EDSをGEに24億ドルで売却し、一躍5本の指に入る大富豪となった。富豪という意味ではトランプ氏に似ているが、自社の社員がイラン革命(1979年)の際に捕らえられたのを自ら特殊作戦の専門家を雇い救出したこともある。この英雄的行為で人気を博し、「鷲の翼にのって(原題:On Wings of Eagles)」という小説や映画となったほどの人物

その人気に乗り、1992年の大統領選に独立候補として出馬。敗れたものの一時は世論調査でトップになったこともあった。その人気ゆえ、もしかしたら二大政党時代に終わりをつげるのではないかという注目も集めた。この状況は、今の混乱した状況と似ているというようにみられている。

今なお語り継がれる伝説

ロス・ペロー氏が出馬した際に選出されたのがビル・クリントン大統領。予備選時にブッシュ(ジョージ・ハーバート・ウォーカー・ブッシュ / ブッシュ・シニア)候補は37.4%、クリントン氏が43%、ロス・ペロー氏が20%近く獲得した。ロス・ペロー氏が出馬しなかった場合にはその票がブッシュ氏に入り、ブッシュ氏が再選した可能性があったかもしれない。それほどの大影響を与えたロス・ペロー旋風は、いまだに語り継がれている。

今回のジョンソン氏がそういう役割を果たすのかどうかということも注目されはじめている。ロス・ペロー氏は今でいうとトランプ氏に似ているともいえる、一匹オオカミの独立した人でお金持ち。ブッシュ親子、クリントン夫妻など政治エリートとも違う。

独立精神旺盛な国民

元々アメリカはヨーロッパから流れてきた人たちが自分たちで西部を開拓して独立してきた、独立精神が旺盛な人たちだ。まっさらな草原に自分で会社を興す人が尊ばれる雰囲気がある。トランプ氏はまさにそういう人に当てはまる。そういう意味でもペロー氏に近い存在でもある。

トランプ氏もある意味ではアメリカの英雄的な存在。企業経営の中で何度も失敗するが、立ち直らせトランプタワーを建て、五指に入る大富豪にまで上り詰め、自分の力で頑張ってきた。アメリカの世相は混乱し、中国に追いかけられている。その中でトランプ氏は政治スローガンとしてアメリカ・ファースト米国第一主義)」を掲げている。

強いアメリカに回帰

これは、レーガン大統領が唱えた「強いアメリカ」に非常に似ている。アメリカが世界の覇者から陥落しようとしている時にトランプ氏が立ち上がってくるということを、カッコイイと思う国民も多いのだろう。ペロー氏もそういうところがあり、そこが人気につながった。

ただ、ペロー氏の場合は共和党でも民主党でもない独立の党であった為、20%近くの得票率があっても選挙人を取ることが出来なかったため敗れた。トランプ氏は共和党の代表として出ているので、そこがペロー氏との相違である。共和党のエリートはそこに窮している。

トランプ氏の雇用をもっと創出するような大統領になるという表明も、アメリカ国民に受けているように思う。TPPに反対しているが、ペロー氏も当時NAFTA(North American Free Trade Agreement / 北米自由貿易協定)に反対していたところも似ている。

ティーパーティーを味方につけるが…

トランプ氏は「日本も核を持て」といった極端な議論が多いことから共和党エリートは違和感を感じている。今後もはたしてそういう主張をつづけるのかどうか? だんだんトランプ氏周辺にはブレーンが集まり始め、最近は表現も柔らかくなってきたともいわれる。これは大統領選で一騎打ちになることを意識し、かなり抑制的になってきているという見方をしている人が多い。同時にトランプ氏にはティーパーティーという保守派もついていることも大きい。

この状況において世界があまり心配しないような主張に和らげてくれば、トランプ氏が突出する可能性はあるだろう。一方でヒラリー氏の人気は低落気味のため、いったいどちらが勝つのだろうかという中で、本気でトランプ氏に対する注目が集まってきたといもいえる。今や中傷合戦のようになってきたが、トランプ氏の個性が強いのでジョンソン氏がそこに割って入るほどの力はないように思う。

民主党と共和党から出ていないという点でも弱い。ペロー氏は非常に強かったが選挙人は0だったので、そういう意味でもトランプ氏対ヒラリー氏の一騎打ちになる可能性が高い。

土壌との相違をどうとらえるか

ヒラリー氏の人気が伸びないのはブッシュも親子、クリントン氏は夫妻というのは先も述べたが、アメリカの独立して頑張るという基本的な土壌と合わないようにも思う。一人で戦っているトランプ氏の方がアメリカ人らしいというように思う。日本も今一生懸命トランプ氏に近づこうとしているようだ。

(TBSラジオ「日本全国8時です」6月7日音源の要約です)

image by: Christopher Halloran / Shutterstock.com

 

ジャーナリスト嶌信彦「時代を読む」
ジャーナリスト嶌信彦が政治、経済などの時流の話題や取材日記をコラムとして発信。会長を務めるNPO法人日本ウズベキスタン協会やウズベキスタンの話題もお届けします。
<<登録はこちら>>

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け