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日本とは真逆。上杉隆が海外で体験した「モルヒネ」大胆使用ナマ現場

メルマガ『上杉隆の「ニッポンの問題点」』の著者でジャーナリストの上杉隆さんが、自身の冠番組「週刊リテラシー」(MXテレビ)のロケで「医療用大麻」について取材したそうです。欧米の先進国では「常識」となっている医療用大麻について、上杉さんは「日本のペインクリニックは極めて遅れている」と語り、12年前に上杉さん自身がチュニジアで体験した、日本では考えられない医療現場におけるモルヒネの投薬について語っています。

 赤、白、それともモルヒネ?

「週刊リテラシー」で「大麻」のロケに行った。何やら怪しげな取材のようだが、なんのことはない、多くの国ではすでに解禁されている医療用の大麻の取材だ。

日本のペインクリニックは極めて遅れている。「痛みも病のうち」という考え方は欧米の医療と共通しているが、そこからの対処方法が180度違う

日本では「だから我慢しろ!」となるが、欧米では「出来る限り取り除きましょう」ということになる。

もちろん歴史も文化も環境も違う我彼のこと、一概にどちらが正しいかなどというつもりはない。ただ、双方のペインクリニックの現場を患者として体験した私からすれば、圧倒的に楽だったのは欧米のそれだった。

モルヒネは大麻よりも強い麻薬と言われている。だが、12年前、私が入院していたパリの病院では、そのモルヒネは解禁という言葉を超越するほど、大胆に使用していた。

今回のメルマガは、日本とフランスのペインクリニックの差を知ってもらう「特別版」として、当時の月刊誌に寄せた文章を再掲する。

2003年12月、私の乗るシトロエンは、チュニジアの南端、つまりサハラ砂漠の北端を走っていた。

第二次世界大戦中、ドイツ軍のロンメル将軍が駆け抜け、偉大な写真家であるロバート・キャパも立ち寄ったガフサの町。そこの古ぼけた食堂で、私は寒さに凍えながら軽い食事を済ませた。その夜の宿まではあと100キロメートルほど。順調に行けば1時間もすれば到達する予定だった。

地平の果てまで続く直線道路は、制限速度90キロメートル。少々喧しい音を立てながらシトロエンは軽い上り坂にかかった。そこを上りきった途端、視野に予想外の「影」が飛び込んできた。

貨物列車!

そう思った瞬間、強烈な衝撃とともに意識は無くなっていた。

昨年暮れ、私はイラクへの取材を企図して、中東に向かった。自衛隊の先遣隊が入る前に是が非でも現地を見てみたかったからである。

当初は、トルコのイスタンブールからヨルダンのアンマンに入る予定だったが、現地入りする前にサハラ砂漠を見たくなり、一旦、マグレブに向かった。それが運のツキだった。

クルマごと貨物列車にぶつかるという大事故に遭い、どうにか一命は取り留めたものの、事故から9カ月経った現在でも身体にはプレートと釘が入ったまま、リハビリ生活を余議なくされている。

事故直後、たまたま車で通りかかったアルジェリア人の一向に助けられ、ガフサの病院に運ばれた。その時点ではほとんど意識がなく、裂けた顔面と脱臼した大腿骨の応急処置が施されたようだ。1、2時間後、今度は救急車に乗せられて、約500キロメートル離れた首都チュニスの軍病院に搬送された。

救急車内では、看護師が定期的に腕を取って静脈に注射を打つ。朦朧とする意識の中、砂が入ってザラザラする血の味の口を開いてどうにかその注射の正体を訊ねる。

モルヒネ

銀色の防火服のようなものに身を包んだ若い女性看護師は、身体を寄せて私の髪の毛を撫でながら、こともなげに答えた。

──モルヒネ! たしか戦争映画などで、瀕死の兵士に打つアレだ。そうか、私はそんなに悪いのか。

自分の知識の中で最も強い麻酔を打たれていることを知り、私は悲観的な気分に陥った。しかし、なぜか現実感がない。怪我の状況もわからない。ただ現時点で生きていることだけは確かなようだ。夢うつつのまま、私は時々激しく揺れる救急車の中で、そんなことばかり考えていた。

モルヒネの静脈注射。これが私にとって初めての海外医療現場との出会いになった。(続く)

image by:Shutterstock

 

上杉隆の「ニッポンの問題点」』より一部抜粋
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