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しぶとい中国市場。日本の「中国崩壊論」は、ただの「願望論」だった

株の暴落に対する中国政府の措置に関してあざ笑うかのような報道も見られた日本ですが、メルマガ『田村耕太郎の「シンガポール発 アジアを知れば未来が開ける!」』の著者で元参院議員の田村耕太郎さんは「金融のプロは中国の市場コントロール能力を信頼している」といいます。その理由とは?

中国政府の危機対応能力を舐めてはいけない

日本人はとにかく中国を舐めている。特にリーダー層がそうである。それは観光客のマナーを見ているくらいしか中国と触れあえないからだろう。中国の真のエリートの優秀さに触れあうことがないからだろう。あんな巨大な国を、優秀とか愚かとか一言で言い尽くせるわけがないのだ。

中国には新興国そのものの部分も貧困国家の側面も先進国を超える部分も全てが共存している。私がよく言う、「Oxymoronな表現」を使うべきだ。

昨日から日本の色んなメディアが中国が株価急落に際し取ったあらゆる措置をあざけわらっていたが、私はよくやったと思う。リーマンショックの時に正確には当事国でないのに世界で最も暴落していた市場を指をくわえてみていた日本政府とは断然違う。今回の中国政府は、世界からあざけ笑われ、たいして効かないかもしれない、全く洗練されていない施策を愚直に連発している。

市場の暴落を絶対止めてやるとの強い意志を国内外に見せつけていた。あれでいいのだ。下落を止める効果がなくても、パニックがもたらすオーバーシュートを防ぐには十分だった。急な激しい動きが最もやっかいなのだ。

資本市場をヘッジファンドに狙い打たれた時に、資本市場を自由化していた国と管理した国では運命が違った。先進国は一様に自由化してショックを外に出せというが、そうした国は一様にやられ、シンガポールやマレーシアのように管理していた国はショックをコントロールすることができた。全くこれは先進国とヘッジファンドのポジショントークである。

危機の時はレッセフェールが一番危険だと私は思う。リーマンショックの時はまさに与党の金融政策の時の当事者だったが、日本政府がもっと早く市場を管理してでも絶対にオーバーシュートは防いでみせるという気概を見せていれば、日本はもっと打撃をコントロールできたと思う。

>>次ページ 中国が日本のバブル崩壊の轍を踏まないわけ

さて、中国である。私のシンガポールの金融界の多くの友人たち(実績といい運用スケールといい日本では稀有な本当の金融のプロ中のプロである)は多くが中国政府の市場コントロール能力を信じているのが特徴的だ。欧米系もインド系も中国系も。彼らは市場のことを知り尽くすプロだが、中国政府の持つ人材とオプションとパワーを深く信頼している。つまり、彼らがCNBCやブルームバーグに出る時はレッセフェールを訴えるのだが、私と食事している時には彼らの「市場の危機には政府のコントロール能力が大事」とのホンネが出てくる。

私は中国市場はしぶといと思う。バブル崩壊で日本の二の舞とはならないだろう。それは彼らが20年以上かけて日本のバブルと崩壊直前直後の日本政府の対応をずっと分析してきたからだ。そしてリーダーシップのクォリティが違う。悔しいけどリーダーが選ばれ、競争させられ、訓練されている。私も中国のトップエリートと触れあうと彼らに対抗できる日本人は見当たらないと思ってしまうくらいだ。

日本の「中国崩壊願望」はみなおした方がいいと思う。中国が嫌いで、中国を敵視する人ほど中国をバカにしているのが残念だ。私は中国を本気で警戒するからこそ、なめてはいけないと思う。この30年中国を舐めてきた人たちは全部中国に負かされている。

来年の中国の経済成長予測は5.8~6.0%でこの25年で最低のものだが、14%成長していた2007年の中国の総GDPは今の半分以下のサイズだった。だからこのサイズ、日本の約3倍の大きさ、で6%成長する経済のインパクトを舐めてはいけない。

少なくとも各界リーダーはもっと中国を警戒して、リスクペクトを持ちながら、対応していくべきだと思う。これくらいの危機は軽く乗り越えるだろう。

『田村耕太郎の「シンガポール発 アジアを知れば未来が開ける!」』より一部抜粋

著者/田村耕太郎(前参議院議員)
早稲田大学、慶応大学大学院、デューク大学法律大学院、エール大学経済大学院を各修了。シンガポールを拠点に、歯に衣着せぬ鋭い論調で「日本の良い箇所・悪い箇所」を指摘するメルマガは、世界で勝負したいという人必読。
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