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地震で被災、一番困るのはトイレ。あらかじめ備えておくべき物とは?

地震大国・日本に住む私たちにとって、災害対策はどれだけしてもこれで充分、とはいかないものです。意外な盲点となるのがトイレ対策、というのは無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』の著者・廣田信子さん。東日本大震災時、10日に渡りトイレが使えなかったというご自身の経験を元に、一般家庭が備えておくべき対策グッズなどについて記してくださっています。

地震対策の要はトイレ対策

こんにちは! 廣田信子です。

大地震発生時の備えで一番大切なものは…と聞かれたら、迷わず、「トイレ対策と答えます。私自身が、東日本大震災時には、10日間トイレが使えない生活の体験者ですから、切実にそう思います。

大震災では、給水がストップしてしまうだけでなく、排水ができなくなることも想定しなければなりません。よく、お風呂の残り湯を捨てないでトイレの水に使うという防災対策を耳にしますが、排水そのものができなくなると、水があっても流せないのです。まさに、私たちが浦安で体験したのはその状態でした。

トイレの重要性は、私はもちろん他の防災関係者もいろいろな媒体で伝えていますので、マンションの防災担当の方の間にはだいぶ浸透したかな…と思いますが、実際にお話を聞いて、まだ理解が浅いな…と感じることが続きました。

まず、マンションで、災害用の仮設トイレを購入したことで、トイレ対策ができている…と思っている方もいますが、それでは甘いのです。屋外に設置された仮設トイレをみんなで使うという状況は実際に体験してみないとわからないでしょうが、そんなにたやすいことではありません。

需要を満たすことも、プライバシーを確保することも、衛生状態を保つことも、汚物の処理も、簡単にはいきません。後ろに人が並んでいる状態でトイレを使うというのは、かなりのプレッシャーです。避難所で体を悪くする人が出るのも、トイレを使えないことが原因になることが少なくないのです。マンホールの上にトイレを設置して、そのまま下水管に汚物を落とすという方法も、排水管がつまって、水が流れない状態では、連続使用は難しいと思います。

また、エレべ─ターが止まっていたら、高層階の人はトイレの度に階段で1階に降り、戻るということを繰り返さなければならないということです。電気が止まってしまったら、夜中に真っ暗な非常階段を行き来しなかればならないのです。

災害対策は常に最悪を想定して、それでも対応できるように考えなければなりません。

トイレで痛感したのは、水や食料は、誰かが高層階まで届けることができるけど、高層階の高齢者に替わって1階の仮設トイレまで、トイレの用を足しに行ってあげることはできないということです。結局、水が出なくて、排水もできない状態になっても自宅でトイレが使える状態に各自が備えることにつきます。

ですから、管理組合や自治会で仮設トイレを購入したからと安心しないで、トイレ対策は、各自がするように、ぜひ徹底してもらいたいのです。仮設トイレ購入が、居住者に、マンションでトイレ対策はしてくれているから安心と思わせるようでは、逆効果になってしまします。

では、自宅で何を備えるかです。最近、非常用のトイレ袋の備蓄は、だいぶ進んだとおもいますが、具体的にどこでどのように使用するか、発生した汚物はどう処理するかまで、しっかりイメージできていないのです。

まず、トイレの便器にかぶせるタイプのトイレ袋があります。実際に体験してみると、トイレの空間は狭いですし、使用を始める前にトイレを掃除し水をまったくなくするようなことはできないので、頭で考えるほど、うまくいきません。しかも、トイレは昼間でも明かりが入らない場所にありますので、停電になったら、常に真っ暗です。高齢者や子供がいる家庭では、その辺もよく考えて頂きたいと思います。

一番無難なのは、組み立て式の箱型のトイレにトイレ袋を掛けて使う様式だと思います。自宅の一室の一角に設置すれば、暗い狭いところにいる恐怖感もなく、落ちついてトイレが使えるのではないでしょうか。

で、トイレ袋はどのくらい備蓄すればいいか…それもよく聞かれますが、余裕をもって清潔に使うためにも、多めに備蓄するに越したことはありません。私は、自分が10日間、トイレが使えなかった経験者ですから、3日とか7日分では心もとないと思います。消費期限があるものではありませんので、ぜひ迷ったら多めに用意してください。ゴミ袋と大人用のおむつをセットで使うというような代用品によることも可能です。

そして、もう一つ重要なのが、発生した汚物をどうするかです。簡単にゴミ収集車が来ないことを想定して、しばらくは、自宅のバルコニー等で汚物を保管しなければなりません。汚物は入った袋は、あまり密閉するとガスで袋が破裂してしまうことがあります。少し余裕を持って密閉し汚物袋を、ポリバケツのような容器に入れて保管するというところまで、イメージして備えている方は、まだまだ少ないです。普段は別の用途につかっているけど、いざとなったら汚物の保管に使えるような密閉容器をぜひ備えてください。

トイレ問題への備えは、被災後の自宅での避難生活の要になります。

image by: Shutterstock

 

まんしょんオタクのマンションこぼれ話
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