なぜ宮本武蔵ほどの剣豪が「果たし合いには応じるな」と教えたのか?

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江戸時代初期、兵法者としてその名を広く知られた宮本武蔵。現代でも多くのファンを持つ剣豪ですが、圧倒的強さにも関わらず、戦いを避けるどころか立ち去ることもあったといいます。いったいなぜなのでしょう。無料メルマガ『弁護士谷原誠の【仕事の流儀】』では、宮本武蔵の信条を紹介するとともに、そこに見える「現代の働き方との共通点」を記しています。

宮本武蔵は試合をしない?

こんにちは。弁護士の谷原誠です。

今回のメルマガで取り上げるのは、剣豪、宮本武蔵のエピソードとして読んだことがあるものです。

ある日、武蔵の元に、兵法の修行者と称する男が面談を申し入れてきました。話に応じた武蔵は、男の実力を見抜き「あなたの腕なら、どのような大名の指南役にもなれるでしょう」とほめました。

するとこの男は気を良くし、無数の刀傷が付いた木刀を見せ、「試合を申し込まれたら、この木刀で戦います」と、歴戦の経験を得意げに語りました。

武蔵はそれを聞くと、おもむろに小姓を呼んで、その前髪にご飯粒をつけ、無言で剣を抜き一太刀、飯粒だけを真っ二つに切りました

武蔵に「あなたにこれができますか」と尋ねられた男は「私にはそれほどの腕はありません」と答えるしかありません。

すると武蔵はこう言って諫めました。

「その程度の腕であれば、むやみに果し合いをするものではない。私の腕でも勝負に勝てるかどうかなどわからないのだ。果し合いを求められたら、すぐにその場を立ち去るのが兵法の達人というものだ」。

武蔵は物語に取り上げられることが多く、創作による逸話が無数にありますので、このエピソードが本当かどうかはわかりません。しかしこの話には、武蔵の勝負への厳格な考え方がよく表れていると思います。

心技体を磨き、達人と呼ばれるようになっても、実際の戦いでは何があるかわかりません。武芸者は一つのミスで命を落とすことになります。本物の戦いの厳しさを知っている人は、むやみに戦うことなどできないはずです。

武蔵は60回以上の真剣勝負を行い、一度として負けなかったといわれますが、する必然性のない勝負はしない、たとえ戦いを挑まれてもその場を立ち去ることを信条としたといいます。だからこそ、いざ戦わなければならないとき、圧倒的な集中力で命を賭することができたのでしょう。

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