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消費税0%。米国の小都市「ポートランド」がなぜ今、日本で流行?

みなさん、ポートランドという街をご存知でしょうか?アメリカの太平洋岸北西部にあるオレゴン州に位置しているこの街は、人口約60万人と決して大都市とは言えませんが、その豊かな自然と穏やかな街並みは、「全米住みたい都市第1位」にも選ばれており、日本人の間でも留学先として人気を博しています。そして今、ポートランドをテーマにしたビジネス、いわゆる「ポートランドビジネス」が日本で流行しているとのこと。その火付け役と人気の理由に迫ります。

なんと消費税0%、住みやすい街ポートランド

アメリカは州によって法律やルールが異なることはみなさんもご存知ですよね。

同時に物価や税率も地域によって異なる訳ですが、ポートランドには何と消費税がないのです。

その分、比較的高めの不動産税を納めているようですが、物品に関しては、同じものがより安く販売されているわけなので、別の州からポートランドに買い物をしにくる人も多いのだとか。

他にも、大手スポーツメーカー「NIKE」や「Columbia Sportswear」の本社があったり、ビール工場が多いのもポートランドの特徴です。

また、数多くのハイテク企業が存在し、「シリコン・フォレスト」と呼ばれていたり、多様なジャンルの芸術が混在していることから、全米第10位の「芸術都市」にもランクインしています。

自然に恵まれて産業も盛ん、消費税もないなんて、確かに住み心地は良さそうですよね。

カルチャーショックが功を奏した若者の「ポートランドビジネス」

ポートランドが日本人の留学先としても人気だと先述しましたが、Atlas Obscuraによると、今東京を中心とし、日本でポートランドをテーマにした「ポートランドビジネス」をスタートさせているのは、かつてポートランドに留学していた若者が中心なのです。

渋谷にて、ポートランドの独特なテイストの漂うビールバー「PDX Taproom」を経営するヒラマツ ミユキさんもその一人。

 

OshiriAiさん(@oshiriai)が投稿した写真

彼女は1990年代前半にポートランドへ留学を果たし、帰国後はポートランドに本社をもつ「Columbia Sportswear Japan」で働いていました。

そんな彼女が「日本でクラフトビールを通じてポートランドの文化やライフスタイルを提案してみたい」と思ったのがきっかけで、このビジネスを始めたそうです。

また、オレゴン州の大学で学んでいたマツシマ ダイスケさんは、ポートランドをテーマにしたコーヒーショップ「Paddlers」の経営者。

木材を基調とした店内には、ビンテージ・モダンのデコレーションが施され、レコードのコレクションが展開されています。

提供するのはポートランド発、アメリカで大人気のStumptown Coffeeだけというこだわり。

マツシマさんは、現在のポートランド人気のきっかけは、2011年に起きた東日本大震災だと同サイトに語ります。

「震災がきっかけで、自分の人生をどう過ごすかについて、改めて考えさせられました。私たち日本人はどちらかというとキャリア志向の高い傾向にあります。しかし一部の若者の間で、その考え方が変わりつつあるのです。彼らは、本当に自分のやりたいことを実現する人生に価値を見出し、そしてポートランド人がそれを体現している象徴として捉えているのです」

カフェバー「ME ME ME」のオーナーであるハレル コウヘイさんは、同じくポートランドに留学経験を持ち、「日本は組織としての行動を重んじる文化。そのために、私たち日本人は、長い間『個性』を失っていたのです」と言います。

「同時に、日本人は消費に溺れ、本当の幸せを感じることが少なくなっていました。それが今になってようやく、ポートランドの少し風変わりだけどどこか共感できる、そんなライフスタイルのなかに、私たちが求めている答えを見つけ出したのかもしれません」

「ポートランドカルチャー」は、SNSでも話題になっています。

 

Aya Nishidaさん(@aya24da)が投稿した写真

都内で味わえる、ポートランド産のクラフトビール。見た目も可愛くてオシャレ。

 

Seira Tokutakeさん(@seira0828)が投稿した写真

「PDX Taproom」。ビールサーバー上のメニューも英語で、本場アメリカの雰囲気満載。

 

Azusaさん(@nacamie616)が投稿した写真

ポートランドのカフェ。こういった雰囲気が落ち着くのは、万国共通です。

東京にも出店したポートランド発ドーナツショップ「Voodoo Doughnut」ポップで奇抜な雰囲気が若者にウケるのでしょうか。

私も単身アメリカに渡ったときに、同じようなことを日々感じていました。

彼らはオン・オフの切り替えがとても上手で、他人の目を気にせず、あくまでもマイペースで自分に正直に、とてもシンプルに生きているように見えたのです。

日本人はいつでもモラルや調和を重んじるため、それによって生じる責任感に大きなプレッシャーを感じる傾向が強く、何だか同じ人間なのに、人生を損しているなあと漠然と思ったのを覚えています。

日本と違う「何か」を求めてポートランドに渡った人たちも、きっと現地でカルチャーショックを受け、そこで彼らが感銘を受けたポートランドの文化、考え方、そして生き方をもっと多くの日本人に知ってほしい、世界にはこんな生き方もあるのだと伝えたい、という強い思いが、ビジネスという形になったのではないでしょうか。

もちろん、日本ならではの良さもあります。

みながプレッシャーを伴う責任感を持ち、その結果の秩序のもとに成り立っている信頼というのも、この国の大切な要素です。

そこに海外からの新しい要素を取り入れて、うまく組み合わせることができれば、単純に人々の選択肢が増え、視野や価値観を広げることができるのだと思います。

もし日本が今後より多くの異文化を受け入れ、「カルチャーの坩堝」になれば、私たちの次世代の若者はどのように感じ、育つのでしょうか。

世界的に見て移民の少ない日本ですが、これからはもっと多くの文化や価値観を根付かせることが必要とされる時代かもしれません。

Source by: Atlas Obscura Wikipedia Stumptown Coffee

文/貞賀 三奈美

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