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山手線に30番目の「新駅」誕生で、東京の通勤はどう変わる?

2020年東京オリンピックに向けて新しく建設される予定の「品川新駅構想」。山手線と京浜東北線の「田町ー品川間」のほぼ中間地点に設置されるというこの「新駅」について、メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』の著者で、鉄道に造詣が深い作家の冷泉彰彦さんが、現在までにわかっている情報から駅の構造を予想。さらに新駅の「名前」についても、リアルな予測を立てています。

山手線・京浜東北線は品川新駅開業でどう変わる?

山手線・京浜東北線の「田町=品川」間のほぼ中間点に設置する「品川新駅」構想については、既に概要が発表されています。これに加えて、9月6日には、隅研吾氏の設計による「折鶴」をモチーフとした透過光式の大屋根と、ガラス張りのデザインが明らかとなり期待が高まっています。

新駅は2020年の五輪の年に暫定開業、2024年に本開業ということが発表されていますが、では、開業後に山手線・京浜東北線はどうなっていくのでしょうか?

まずこの新駅ですが「線路別2面4線の島式ホーム」だということが発表されています。どういうことかと言うと、配線が品川と同じで現在の田町とは違うということです。

現在の配線では、京浜東北線は大井町方面から北上する方向で見ると、品川駅の直前で左から山手線の線路が来ますが、特に交差はしないで、そのまま京浜東北は3番線(北行)、4番線(南行)に入ります。その間にホームがありますから、このホームは京浜東北専用です。山手線は1・2番線になります。これが「線路別」です。山手は山手のホーム、京浜東北は京浜東北のホームです。

ところが、田町から田端の区間は違います。山手と京浜東北は並走しますが、各駅のホームは「方面別の2面4線、島型」になります。つまり、田町の場合でいえば、山手は2番線(内回り)と3番線(外回り)という内側に入ります。そしてホームで言うと、内側(山側)のホームの方は、1番線が京浜東北の北行で2番線が山手内回り、もう一つの海側のホームは3番線が山手の外回りで、4番線が京浜東北の南行、になります。

どうしてこうなっているかというと、乗り換えを便利にするためです。並走区間を乗り降りする乗客については「どっちか先に来た方に乗る」ニーズが多いからです。そして、この「方面別」の構造を活かして、1988年からは日中の京浜東北は快速運転がされています。快速運転時間は、目的駅に応じて山手(各停)と京浜東北(快速)を対面ホームで乗り換えるという利便性を提供することにもなっています。

この「線路別」から「方面別」に入れ替えるために、品川と田町の間には「立体交差」が設けてあります。田町駅に近づいたところで、京浜東北の北行が、山手を越えて海側から一番山側に出るのです。

実は、今回の新駅設置とその山側の「巨大再開発」に伴って、この区間の山手線・京浜東北線の線路は大きく海側に移設され、今ある「立体交差」も移設になると思います。では、新駅はどうなるのかというと、既に発表されているように「線路別」です。ということは、

(1)新駅の配線は品川と同じ。山手と京浜東北の乗り換えは対面式ホームではできない

(2)従って京浜東北が快速運転をしている時間帯も、この新駅は全列車が停車するだろう。

(3)けれども、昼間に快速(京浜東北)と普通(山手)に乗客を振り分けるには、「快速運転の両端」では、「方面別ホーム」で乗り換えの利便性を確保する必要がある。そこで、田町の快速(京浜東北)停車はやめられない。快速は「田町=田端間」というのは変わらないだろう。

ということが考えられます。更に、この配線変更ですが、今年の11月にまず東海道線の上りを国道15号線に沿った山側から、海側に大きく移動させる切り替え工事が行われます。そして、品川の5番線が使用停止になるとともに、6番線と7番線が供用開始になります。

これは上野東京ラインの開業による直通運転開始の関係もありますが、何よりも今回の「新駅と再開発」のために、線路を海側に移動するというのが最大の目的であるわけです。ということは、次は山手と京浜東北の番です。駅の開業は仮に暫定的とはいえ先になりますが、かなり早い時期(2017年から2018年)に線路だけは海側への移設がされると思います。

その際の注目点ですが、先程お話した「京浜東北北行の立体交差」も移設されるはずです。恐らく99%、いや99.9%はそうなると思います。その立体交差は「新駅と田町の間」に建設されるはずです。工事が始まったら、この点に注目です。

仮に0.1%でも、この「立体交差が建設されない」という場合は、田町から田端までの並走区間が「全面的に線路別」になるということを意味します。そうなる場合というのは、この区間を並走する「山手」「京浜東北」「上野東京ライン」の3複線における列車の流し方、乗客の分離などが大きく見直されるケース(大阪環状のように、山手線に環状運転以外の列車が入る?など)ですが、仮に空港新線(?)や、相鉄からの直通が入って来るにしても、そこまではないでしょう。

ところで新駅の名称ですが、「高輪」が有力視されています。イメージもいいし、実際に現在の地図では、駅の場所は「港南」になるのですが、駅と一体で開発される地区の山側は「高輪」だからです。

ですが、難点もあります。というのは、「高輪」という名前の駅は地下鉄に既に2つあるからです。「白金高輪(南北線・三田線)」と「高輪台(浅草線)」です。東京に住んでいる人間にはお馴染みですが、そうでない人間には「高輪」「白金高輪」「高輪台」という3つの「高輪」という名前を冠した駅ができるというのは混乱の元になります。

ですから、今、検討されているのはこの周辺の地域の江戸時代の地名である「芝浜」という名前です。混乱を避けるという意味ではいいと思います。その場合は、是非、新駅の至近にある京浜急行と浅草線の接続駅である「泉岳寺」も「芝浜」に改称して同名とし、乗換駅として地下通路等を整備していただきたいと思います。後はダークホースとしては「高浜(近くを通る運河の名前)」もいいのではと思いますが、同名駅が茨城や愛媛にあるのでちょっと難しいかもしれません。

更に京浜急行の空港アクセス便と、JRの乗り換えについてもこの新駅(芝浜?高浜?)を使うように誘導できれば、品川駅の構内の混雑解消にもなります。品川はリニアの始発駅になりますから、その準備として必要ではないでしょうか?

image by: konicabook / Shutterstock.com

 

冷泉彰彦のプリンストン通信』より一部抜粋
著者/冷泉彰彦
東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは毎月第1~第4火曜日配信。
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