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見た目よりも機能美? ジョブズが愛した「美しいデザイン」の深い意味

デザインのイロハを初心者にもわかりやすく教えてくれる、人気のメルマガ『プロが教える「美大いらずのデザイン講座」』。最新号では、デザインに関する“そもそも”な話である「本当に美しいデザインの基準」について、大いに語っています。

本当に美しいデザインの基準とは?

どうもkeloです。如何お過ごしでしょうか。

暑いですね。しかも雨降りも重なって体調崩される方が多くなってます。お気をつけ下さい。

今回は久しぶりの「そもそものお話」です。

デザインをするにあたって、「美しさ」とどう付き合っていけば良いのか? 「美しさ」という数値化出来ないものについて、どう考えれば良いのか?

そんな根本的な話を真正面から取り上げて、書かせてもらえればと思いました。

最近、ネット等で、デザインについて、「デザインとは問題解決である。」とか、「見た目だけのデザインが多すぎる、機能を重視しないとダメ」など、ある意味ではとっても正しい意見・定義が語られるようになってます。
※ 「デザインとは問題解決である。」とは僕もこのメルマガで過去に書かせてもらってます。

そういう議論があるのは素晴らしいことですし、語られていることに「ほぼ」間違いはないと思うんですが、少しだけ違和感を感じるというか、誤解されないかな?と感じることがありました。

機能性・使い勝手・ユーザビリティ、、、に心を配るのはいいでしょうが、「見た目の美しさ」はどうでも良いのか? そんなわけないですよね?

機能性を大切にしろ!と声を大にして語るのはいいですが、デザイナーはデザインを美しくする努力を忘れてはならないのです。

当たり前の事ですが、確認しておきたいと思い、今回のメルマガのテーマにさせてもらいました。

かの有名なスティーブ・ジョブズの言葉に次のような格言?があります。

デザインとは「どう見えるか」ではなく、「どう機能するか」の問題である。

この言葉は色々なところで取り上げられてますし、過去にこのメルマガでも取り上げさせてもらいました。素晴らしい言葉だと思います。

しかしジョブズの言葉は、色々な深い意味が込められてるにも関わらず、非常にシンプルにまとめられてます。つまりは時に大きな誤解を生んだりもします。

「どう見えるか?」ではなく「どう機能するか?」が大切(の問題である)って言ってるんだから、ジョブズはデザインにおいて「美しさ」はさほど大切ではないと言ってる。

この言葉だけ見ればそんな風に誤解されて、受け取る方もいるかもしれません!

もちろん、、、そんなわけはないんですね。良いデザインには「美しさ」は必要です。

では、なんでジョブズはこのようなことを言ったんでしょうか?

>>次ページ ジョブズが本当に言いたかったことは?

僕が思うにジョブズは、「見た目の美しさ」ばかり気にしてし「機能性」を後回しにしてしまうデザイナーに対して、

「美しさばかり追求して、使い方もわからないものを作っても仕方がないだろう。まずは『どう機能するのか?』を意識し、そこをテーマにしてデザインしてみようじゃないか?」

そんな風にあえて言いたかったんではないでしょうか。

ジョブズの求める美しさが、ある種研ぎ澄まされた機能美である事は、否定しません。しかしその半面、「遊び心に溢れたデザイン」もジョブズは、決して嫌いではないはずです。

1980年台にジョブズがAppleに暫定CEOとして戻った時に、「オレがいない間にApple製品にはセックスアピールがなくなっちまった!」と(いう意味のことを)叫んだと言います。

セックスアピールとは、つまりは製品の「魅力」であり「美しさ」であり、もちろん製品の醸しだす「色気」でもあります。

もう25年も前の事なんで、若い読者の方達はご存じないかもしれませんが、当時瀕死のAppleを救ったのは、1998年に発表された初代iMacと言われています。ベージュやグレーの筐体しかなかったPCを、いきなり半透明のおむすび型にデザインしてしまったというもので、その時の衝撃は今のApple Watchの比ではありませんでした。

少なくとも「機能性」だけを追求して、このデザインが生まれるはずもありません。「遊び心に溢れた美しさ」が、このPCに溢れているとは思いませんか?

デザインとは「どう見えるか」ではなく、「どう機能するか」の問題である。

あらためて言いますが、ジョブズのデザインに対する考え方を、この言葉でだけで測るわけにはならないわけですが、しかし、この格言が「機能美」の説明に繋がっていく事はとても興味深いことです。

つまり、“デザインとは「どう見えるか」ではなく、「どう機能するか」の問題である。”……の言葉の後に、“どう機能するのか?考え抜けばおのずと「美しく」もなる!”という、機能美の真髄を紐解いてくれているようにも思えます。

「おお、機能性を追求して無駄をそぎ落としていけば、美しさも手に入ってしまうわけね!」というわけで、機能性と美しさの関係について、なんとなく「オチ」がついた気もしますが^^

>>次ページ 機能性を突き詰めれば本当に美しくなるのか?

しかし、、、! 本当に「どう機能するのか?」のみを、突き詰めていけばおのずと美しくもなるものでしょうか?

・もっとシンプルにわかりやすいUIにできないか?
・ トリセツなしで子供から大人までいきなり使える製品にできないか?
・ 普通の電化製品ならボタンを3つ押さないとならないのなら(appleであれば)1回押すだけで済まないか。

apple製品のデザイナー達は、日夜こういった事を考えぬいているでしょう!

しかし、その「機能性の追求」だけで、彼らが求める、世界中の人達から注目される美しいデザインに到達できるかと言えば、決してそうではないと思います!

「美しさ」を完全に後回しにして、「機能性」のみ追求しているだけで、美しいデザインに自動的に到達する? そんなに甘くはありません。

あえて経験のあるデザイナーが、あえて「美しさを追求しすぎる思考」をストップさせて、まず「どう機能するのか?」を考える。そういうアプローチは「アリ」かもしれません。

しかし、そういう方法論でデザインするにせよ、完全に「美しさ」を無視してデザインなどできないでしょう。

優れたデザイナーであればあるほど、デザイナーの無意識が黙っていないでしょう。

デザイナーがただ「どう機能するのか?」を追求して作っているつもりでも、彼らは無意識に「美しさ」を求めて、「製品が少しでも美しくなるようにデザインしている」のです。

さて、ではここで、根源的な問いになりますが、美しさ美しさって、気軽に書いてきてしましましたが、そもそも「美しさ」って何でしょうか?

この問いだとあまりに漠然とし過ぎてしまいますかね^^。では、もう少し具体的な問いにしましょう。

デザイナーが目指す「美しさ」の基準ってどこにありますか?

ここまで本当に「機能だけ追求するのではダメでしょう」「美しさ・見た目も大事でしょう」という話で、今回まとめるつもりだったんですが^^。「美しさ」の基準をデザイナーがどこに持てば良いか? 考えてみれば避けて通れない話しです。

今回のメルマガのテーマです。整理してみます。

>>次ページ “良いデザイン”をあえて定義するなら……

デザインとは「どう見えるか」ではなく、「どう機能するか」の問題である。……とジョブズは言ってるけど、「美しさ」をないがしろにしているわけではない、「美しさ」ってデザインにとって大切だよ。

と……デザインにとって「見た目」や「美しさ」が大切なのはよくわかった! じゃあその「美しさの基準」はどこにあるのか? 基準っていうと「ものさし」みたいで少しわかりにくいとすれば、私達デザイナーが求めるべき「美しさ」は、「何を満たしていれば良いのか?」「何を実現していれば美しいと言えるのか?」「良いデザイン・そうでないデザインを分かつもの」は何か?

もちろん「美しいデザイン(良いデザイン)」は、容易に数値化出来るものではありません。

しかし、「世のデザインに求められる美しさ」の基準は、ある程度は社会全体で共有できるはずですし、抽象的な言葉になってしまうかもしれませんが、何かの言葉に置き換えることも可能なはずです。(つまりは定義化できるはずです)

一言で言えばそのデザインが美しいかどうか? 良いデザインであるか否か?の基準。私達デザイナーが「美しいデザイン」「良いデザイン」を作るにあたり「これさえ満たしていれば大丈夫」と目標にすべきものを言葉として選んでみれば、、、

そのデザインがターゲットユーザーの幸せに繋がっているのか?否か?

ただシンプルに「これ」につきるのではないでしょうか。

そしてこの「定義」は「美しさ」だけでなく、「機能性」「使いやすさ」を含みます。

シンプルでわかりやすいUIの実現。トリセツなしで子供から大人までいきなり使える程の使いやすさ。

こういう機能性がユーザーを幸せにしないわけはありません。

そしてもちろん「デザインの美しさ」だって、ユーザーを幸せにしないはずありませんよね。その製品(デザイン)を目にする度にユーザーが、「いいデザインだな、使いやすいな」とニンマリと(幸せに)させてくれる。

個人的にはここの部分、「ユーザーの幸せ度数」で言えば、凄いポイント高いと思います!

だってそういう「プラスアルファ」がなければ、人生は随分とつまらないですし、そういう「プラスアルファ」に全く価値がなければ、例えば「ポロシャツ」のモデルは世界に一つのモデルでも良くなってしまいますよね。

ユーザーターゲット毎に、ニンマリするポロシャツが違うからこそ、ファッション(デザイン)というものの存在価値はあります。

>>次ページ デザイナーが表現すべき美しさとは?

話を「美しさの基準」に戻しますね。

デザイナーは「デザインの美しさの基準」を、「ターゲットユーザーの幸せに繋がるかどうか?」の一点に絞って考えなければならない。

この事をまず考えなければいけないですし、最終的に目指すゴールもここにあるわけです。

注意しなければならないのは、その「美しさの基準」が「デザイナーの個性」を盾にした浅はかなエゴにそっていないか?ということです。

その「美しさ」が
・デザイン全体のテーマに合っているのか?
・機能性を損なわないものか?
・ターゲットユーザーが「美しい」と感じるものになっているか?

デザイナーが表現したい美しさが、そういう基準にそった美しさであれば、間違いではないでしょう。

そして、さっき書かせてもらった通り、逆に考えてみれば、「ターゲットユーザーが本当に幸せになるデザイン」を突き詰めて考えていけば、デザイナーは「機能性」と「美しさ」のどちらもかけがえのないデザインの要素として表現せざるを得なくなるのです。

またまた長くなりました。そろそろ終わります^^

「美しさ」って何か? 「デザイナーが表現すべき美しさは何を基準に考えるべきか」

そんなテーマで書いてきたつもりですが、やはり最後は「どう機能するのか?」も大事で、それを求める基準も「そのデザインがユーザーを幸せにしているか」という一点に絞られるんだ!と、そんな結論になってしまいました。

かなり根源的なお話で、普段は僕もここまであまり考えたりしないんですが、たまには「デザインって何?」というような、そもそもの問いを発して自らそれに答えてみる事も、大事ではないか?そんな風に思います。

最後まで読んでいただき有難うございました。

image by:Apple Japan

 

『プロが教える「美大いらずのデザイン講座」』
美大で教えているようなデザインの基礎を、初心者の方にもわかりやすく説明していきます。デザイン史やプロの現場の話も交え色々な角度からデザインについて書かせてもらいます。デザイナーになりたい方やただデザインに興味のある方等に読んで頂いてます。
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