MAG2 NEWS MENU

認知症のお年寄りが「安心して徘徊できる」街は作れるのか?

全国で、年間1万2,000人以上もいるとも言われている認知症(あるいは認知症が疑われる)の行方不明者。地域で行われた「はいかい高齢者見守り訓練」に参加し、認知症患者は思った以上に「認知症らしくない」という点に気付いたという、無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』の著者・廣田信子さんは、「地域住人ひとりひとりが少しの勇気を持つことで迷い人を発見できる可能性がグンとアップする」と記しています。

ひとりひとりのちょっとした勇気で「安心してはいかいできる街」を!

こんにちは! 廣田信子です。

先日、地域の「はいかい高齢者見守り訓練」に参加しました。浦安市と高齢者福祉団体、地域包括支援センターが共同で行うものです。認知症と認知症の方への理解を深め、住み慣れた地域で安心して暮らし続ける街づくりの一環で行われるもので、「安心してはいかいできる街」っていうすごい目標があります! お誘いを頂いて、ちょうど予定がついたので、参加してみましたが、これがとてもよかったです。

具体的に認知症で行方不明になった人がいる想定で行われます。今回、行方不明の認知症役の方は6名。それぞれ、認知症の方をサポートする仕事をされている方で認知症の方のことをよく知っているので、想定に合わせて、それぞれが見事にその役を演じてくれていて探すのは結構たいへんでした。

家族から行方不明の連絡を受け市からの「重要なお知らせメール」で協力要請があり、市民が、対象者を探す協力をするという設定です。6班に分かれ、認知症の方を見つけ、驚かせないように声掛けをして、その方であることを確認し、警察の生活安全課に連絡するという訓練です。

簡単なことのようで、実際にやってみると、なかなか大変だということがわかります。認知症の方は、一目で認知症と分かるようにしてはいないのです。

年齢や見た目や服装等の情報も、必ずしもその通りではないので、あまり先入観を持つと見逃してしまいます。家族がいない間にいなくなると、服装の情報も正確ではありません。帽子をかぶって出たはずの人が、帽子をなくしてしまっていたり、いつもは杖をついている人が杖をもっていなかったり、ということもあるのです。

そして、ちょっと似ているなと思っても道を歩いている人、公園のベンチに座っている人に、もし違っていたらと思うとなかなか声が掛けにくいのです。実際に、きっとあの人だと思って、そっとみんなで後をつけて声をかけたら違っていたという報告もありました。ですから、狙いをつけて声掛けをするというのではなく、ごく普通に声をかけてひょっとしたら探している本人かもしれないし、そうでなければ、探している人がいることを伝えて、見かけなかったか情報を聞くというぐらいのつもりで、気楽に声掛けできることが大事だと、実感しました。

また、複数で後をつけたり、取り囲むようにすると、相手が恐怖を感じるので、せいぜい2人ぐらいで、横からさりげなく近づき、笑顔で正面から声掛けをしてみる…それは、「こんにちは。暑いですね」「雨が降りそうですね」というようなアイスブレイク的なものでもいいでしょうし、ちょっと道を尋ねて相手の反応を見るということでもいいでしょう。

ベンチに座っていたら、隣に座って、「どちらからいらっしゃったんですか。ここはいい公園ですね~」なんて声をかけてみる。もし、困っている様子があったら、「何かお手伝いできることがありますか~」と声をかけてみるのもいいでしょう。

幅広く声掛けをして対象者でなければ見かけなかったかを聞く、そういうことがたくさんできると見つけられる可能性が高くなると、参加者がみな実感しました。ちょっとした勇気がいりますが、実際にやってみることで、ハードルはぐっと低くなりました。

で、子供も地域の情報はすごく持っているので、子供に聞くのも有効です。子供が、「あっちにいたよ~」と教えてくれたケースもあったようです。

ひとり、ひとりが、ちょっとした勇気を出すことでまわりとの関係性が変わるって私たちが提唱している「切手のいらない年賀状運動」や「エレベータートーク」でのゆるいつながりづくりとも同じだと思いました。

そして、今回の「はいかい高齢者見守り訓練」というイベントは参加者のつながりづくりにも最高でした! 地域をいっしょに歩きながら会話も弾みますし、一つの目標に向かって、みんなで協力する一体感もあります。で、人への心配りのコツを学ぶ場にもなりました。

カフェや茶話会もいいけど、こういう試みで、見守り体験をしながらつながりづくりをするのも一石二鳥でいいな~と思いました。

image by: andreevarf / Shutterstock.com

 

まんしょんオタクのマンションこぼれ話
マンションのことなら誰よりもよく知る廣田信子がマンション住まいの方、これからマンションに住みたいと思っている方、マンションに関わるお仕事をされている方など、マンションに関わるすべての人へ、マンションを取り巻く様々なストーリーをお届けします。
<<登録はこちら>>

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け