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法律をも無視。いじめ問題と真摯に向き合わぬ学校の呆れた言い訳

先日、いじめを受けた生徒の保護者から相談を受けた弁護士が、マスコミにその事実を発表しました。3年前に制定された「いじめ防止対策推進法」が学校現場で生かされていないことを指摘し、学校側の問題をマスコミを通して明らかにしたのです。無料メルマガ『いじめから子供を守ろう!ネットワーク』では、この勇気ある行動を「日本の教育を正すためにも必要なこと」と高く評価するとともに、文科省の「いじめ防止対策推進法」見直しの動きとその疑問点について論じています。

子供の命を優先した対応を期待する

10月も下旬となりました。さわやかな秋晴れのもと、学園祭や修学旅行など楽しい行事が開催されています。その一方で、いじめで学校に行けないとの相談が、毎日、寄せられています。

学校が安心できる空間でなければ、いじめられている子供は学校に行けません。「いじめ防止対策推進法」(以下「いじめ防止法」)では、安心して勉強できる環境を整える措置として、いじめ加害者の別室学習や出席停止等を定めています。

しかしながら、先日、毎日新聞で次のようなニュースが報道されました。滋賀県高島市で、小学6年の女児が同級生からのいじめで心身症になって入院、保護者が弁護士に頼んで、加害児童の別室学習、出席停止、懲戒などを求める申し入れ書を学校と教育委員会に提出し、さらに、弁護士が、申し入れした事実をマスコミに発表したというのです。

弁護士は、「大津市の中学生いじめ自殺を契機にしたいじめ防止対策推進法が制定されて3年になるのに、法が学校現場で生かされていない」と指摘し、「同法に基づく措置を求めた」と話したと報道されています。「いじめ防止法」は制定されていても、いまだに法律を無視してかまわないという空気が学校を支配しているようです。

実際、私たちのところにも、同様の相談が届いています。いじめ加害者が教室にいるので怖くて教室に入れず、学校にほとんど行けない状態になっているのに、校長が、「私は絶対に、加害者の別室学習など認めない」と被害者側からの要望を拒否したとか、「別室に連れて行っても、この子はきっと教室に戻ってきてしまうので別室学習はやりません」などと、理由にならない理由で対処してくれないというのです。

他にも、「担任に何回もいじめを相談していたのに、校長に伝わっていなかった」、「被害者がいじめだと訴えているのに、教師がこれはいじめではないと強弁する」、「いじめに関するアンケートを全く行っていない」、「いじめが原因で30日以上不登校になっているのに学校が重大事態と認めてくれない」等々の相談があとを絶ちません。

このように、学校現場での「いじめ防止法」の効果が疑問視されていることを受けて、現在、同法の見直しが検討されています。10月12日に文部科学省いじめ防止対策協議会は、「防止対策の素案」を提示しました。その中で、「教職員がいじめ情報の共有を怠れば懲戒処分になり得ることを周知するとしています。この点は、学校の隠蔽体質に大きく切り込んでいると言えます。

このように評価できる点がある一方、大きな疑問点もあります。それは、素案では「いじめの範囲」として「好意であっても相手が傷ついたらいじめ」、「けんかは双方向のいじめ」という考え方が示された点です。具体例として報道された内容は、

  1. 算数の問題を解こうとしていたAさんに対し、Bさんが親切心から解き方と答えを教えたところ、あと一息で正解にたどりつこうとしていたAさんが泣きだした。
  2. AさんはBさんに「もっと友だちと積極的に話した方がいいよ」と助言したつもりだったが、対人関係に悩んでいたBさんは、その言葉で深く傷ついた。
  3. 相互にネット上で悪口を言い合っているケースは「双方向のいじめ」。となっています。

この3例を読まれていかがでしょうか。いじめの定義としての「相手の心が傷ついたらいじめなんだ」という考え方は大切ですが、ここまで行ったら「極論」です。これを受け入れるならば、例えば、授業中に先生から「騒がしい。静かにしなさい」と注意された子が泣き出したらそれは「先生によるいじめ」ということになってしまいます。何事も行き過ぎは危険です。

お互いの心が理解できないで起きるトラブルはいじめではありません。また、ケンカからいじめに発展することはありますが、ケンカは「双方向のいじめ」ではありません。「有識者」と呼ばれる先生方が、こんなこともわからないのでしょうか。

今回、取り上げたように文科省は「いじめ防止法」の見直しに着手しています。本来は、「子供の命を守る」ための議論のはずなのですが、残念ながら、「子供を守るんだという熱意が薄れているようにも見えます。その背景には「教師の負担が増えるものには反対だ」という一部の教員からの意見が足を引っ張っているのではないでしょうか。

冒頭で引用した保護者のように、「いじめは悪い。学校はいじめを隠すな」という姿勢を貫いて泣き寝入りすることなく、弁護士やマスコミを味方につけて「いじめ問題」と戦うことは、日本の教育を正すためにも必要なことだと思います。

ぜひとも、本気で子供の命を守ろうと考えている先生方の意見が優先されて欲しいものです。

今後も、「いじめ防止法」の実効化、いじめ防止、いじめ解決を目指して活動を続けてまいります。いじめ相談も随時承っております。些細なことでもご遠慮なくご相談いただければ幸いです。

いじめから子供を守ろう ネットワーク
井澤・松井

image by: Shutterstock

 

いじめから子供を守ろう!ネットワーク
「いじめ」と学校の「いじめ隠ぺい」から、子供たちを救うための、父母によるネットワークです。いじめの実態やいじめ発見法、いじめ撃退法、学校との交渉法、いじめ相談などを掲載します。
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