【書評】MX「5時に夢中!」の大川Pが無名のマツコを起用したワケ

 

また、「おママの花道」というタイトルの、都内の各地のスナックの名物ママやお店の名物料理を紹介するというコーナーがあった。実際に始めてみると、スナックのママさんたちには、「歌舞伎町の風俗店で4万8,000人斬りをしたママ」「関東最大のレディース暴走族の総長だったママ」「ヤクザの彼氏にマグロ用冷凍庫に閉じ込められたママ」など、それぞれに壮絶なエピソードが数多くあった。

だから名物料理などお店紹介の部分を削りに削って、ママの人生だけにスポットを当てるという、哀しくて面白い「人生に寄り添う企画」になった。

さらには、スナックにはカラオケがつきものだと、VTRの締めに「人生の一曲を歌う」という「おママ対抗歌合戦」が始まり、現在も続いている同番組の名物コーナーになった。年越し特番でも放送されるグランドチャンピオン大会は、あのMr.Childrenの桜井和寿が「年末は『おママ対抗歌合戦』を見ている」と発言したことでネット上でも大きな話題となった。

『5時に夢中!』は大川プロデューサーを入れても各曜日4~5人程度の少人数での制作であり、テレビの帯番組としては異例のスタッフ数の少なさだ。しかし、何十人もスタッフのいる番組では、末端スタッフは自分が番組が関わっている実感がなく、「俺がいなくても回るだろう」と考えてしまう。

『5時に夢中!』はスタッフが一人でも欠ければ本当に番組が回らなくなってしまい、番組に関わっている実感を強く持てるというより持たざるを得ない状況になる。その「当事者意識」によって、全員が番組に対して番組をよくするために企画を立てたり改善案を出したりと「前のめりの姿勢」になってくれる。これが、少人数だからこそ生まれる数少ない利点の一つだと言える。

そして、低予算のためギャラも十分に捻出できず、出てくれる人がいないという苦境を経てきたことから、レギュラーコメンテーターやMC、ゲスト出演者の皆さんに対して、常に「出ていただいてありがとうございます」という謙虚な気持ちを持つことができる。

その苦境時代を知らないスタッフの中には、出演者に恵まれている今の状態が普通だと勘違いして出演者やマネージャーに「出してやっている」というような不遜な態度をとる輩が出てくるが、その時は大川プロデューサーは力の限りブチ切れる

出演者に気持ちよく喋って気持ちよく帰ってもらうため、出演者の魅力が生きる企画を一生懸命に考えるのが『5時に夢中!』のスタッフの義務。出演者に対して「出してやっている」と思った時は『5時に夢中!』が終わる時だと思っている、と、大川貴史プロデューサーは述べている。

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