在米日本人作家が警告する、トランプ・リスク「最悪のケース」

 

――では、具体的にどのようなことがきっかけでトランプ政権の危機というものが表面化するものと思われますか?

冷泉:彼にとってみたら、当選してからずっと株高できているわけですよ。これって結構、皆さんが予想してたのと全然違う展開なんですよね。10月頃までは誰もが「まさかトランプは当選しないけど、もし当選したら大暴落だ」って言ってわけだから。

大統領選の開票当日、私は日本にいたんですが、日本時間のお昼頃に「トランプ優勢」っていう情報が流れて、その後あれよあれよっていう間にフロリダやペンシルベニアを取ったじゃないですか。その時、日本の株価はガンガン下がって、円も101円ぐらいまで上がったりと、この世の終わりのような雰囲気になりましたよね。ところが、日本の市場が閉まった午後4時ぐらいにトランプさんの当確が出て、彼が勝利宣言ですごくまともなことを言ったと。そうしたら、ヨーロッパの株はすうっと戻していったんですよ。それ以降、ずっと株高で来ているわけなんですが、これって政権への期待感の現れでもあるんでしょうけど、トランプさんにしてすれば逆にやりにくいですよね。これから下がる可能性があるわけだから。

リーマンショックが2008年に起きて、2009年がアメリカ経済のどん底だったんですが、それ以降は今まで、アメリカの株は上がり続けているんです。だからトランプさんが心配するように、株価が下がるタイミングが今後あるかもしれない。そうなるとアメリカってすごく現金な社会なので、「株価が下がったから、お金を使うのやーめた」ってなりますから。そうなると「消費が落ち込む→景気が悪くなる→雇用が悪くなる→失業率が上がる→大統領の支持率が下がる」っていうスパイラルが、起こると思うんです。

これって、シビアな人に言わせると「就任から半年で起きる」ってことなんですけど、逆にどんなに甘く見積もったとしても、中間選挙が行われる2年後の2018年までは持たないでしょう。とはいえ、トランプさんもバカじゃないだろうし、少なくとも政権にいる億万長者のスタッフたちは、みんなバカじゃないですから。そうなった時に適切な手を打てれば、うまく乗り切れると思うんですけどね。ただ、そういう局面が恐らく私の感覚でいうと、何となく1年半ぐらいの間に訪れるような気がしますね。

――閣僚の顔ぶれを見ても、正しい方向に導いてくれそうな人材っていうのはいなそうですか?

冷泉みんな優秀なんですよ。頭が滅茶苦茶いい人が揃ってますから。ただ、彼らが何を目指しているのかがよく分からないんですよ、本当にね。

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一番分からないのが、何で国務長官が石油メジャーの社長っていう、訳の分からない人事になったかじゃないですか。そのうえエネルギー長官も、もともと石油関係だったテキサスの知事さんだったりとか。今の時代何やったって石油の値段って上がるわけないんですよ。シェールはガンガン出るし、天然ガスは世界中でだぶついているわけですから、例え戦争をやったって、石油の値段なんて上がりませんよ。そういった意味でも、彼らが何を目指しているのかって、よく分からないですね。

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