在米日本人作家が警告する、トランプ・リスク「最悪のケース」

 

――トランプ政権の不安材料としては、これら以外にも「利益相反問題」も取り沙汰されていますね。

冷泉:いわゆる「トランプリスク3連発」っていうのがあるんですよ。まずは株価下落と失業率上昇で、みんながブーブー文句言い始めるっていうのが第1弾。そしてお金持ちと貧困層っていう2つの支持層の意見が対立して、閣内もギクシャクし始めるのが第2弾ですね。そこに、ニューヨーク・タイムズあたりがずっと嗅ぎまわっているという、トランプさんの会社と大統領職の公私混同疑惑、つまり「利益相反問題の決定的なところが明るみになると。これらが3段方式で発生するというのが、トランプリスクのひとつのトータルの姿じゃないかなと思っています。

利益相反問題」に関しては、色んな話が出てきてますよね。顧問弁護士が出てきて「確かにトランプのビジネス続くし、それは息子たちが引き継ぐけど、オヤジさんが大統領に就任したら、外国での業務提携や業務拡大は一切しない」って言っていたにも関わらず、その後すぐにスコットランドにあるトランプさんが所有してるゴルフコースに対しての拡張申請が通っちゃったりね。

許可したのはスコットランド政府なんだけど、経済貢献のためにやりなさいってことで、義務なんですって。だから止めれないし、拡張工事が終わった後は、そこでガンガン営業しなきゃいけないじゃないですか、元を取るために。そういうことになると、もしもスコットランドの人たちが「今度大きな大会やるけれど、どこのコースにする?」って話になったら、「トランプコースかな」ってなっちゃうんですよ。「やっぱりあれだけ投資してくれたからトランプにしようか」ってことで。それって、やっぱりマズいんですよ。
 
あるいは、どこかの国の王様か大統領とかがワシントンを訪問した時とかに、「どのホテルにお泊まりですか」って言われたときに、「リッツ・カールトン」って言ったら、トランプ氏はたちまちケンカ腰になりそうじゃないですか。「あなたにご迷惑が掛かるので、リッツ・カールトンにしました、おほほ」とかいう、奥ゆかしい話が通じる人じゃないですし。だから「やっぱりトランプホテルはいいですね。ベットもふかふかだし。やはり人生の旨味をご存じな方がオーナーなだけに流石ですな」ってことになって、それにトランプさんも「いやぁ、どうもどうも」って応えちゃうわけです。「ちなみに割引もあったらしいですけども、私はフルで泊まりましたから」「そうか、ありがとう」だなんて言っちゃいそうですからね、彼は苦労人ですし。でもマズいんですよ、それってやっぱり。そのあたりの問題はどこかで炸裂しそうですよね。

――根本的に解決するには、資産を売却するなり、放棄するしか方法はなさそうですよね。

冷泉:ところが、記者会見で顧問弁護士がポロっと言ってたんですけど、実は全株売却も視野に入れたらしいんです。でもそうすると、トランプ一族はものすごい負債を背負うことになるんですって。だから上場することも視野に入れたけど、それはとても間に合わないから、仕方なく息子さん達が継承することにしたと。トランプ側は「何ら法律違反はしていません」って言ってるんだけど、その話を聞いて、私は予想通りだなって思ったんです。「あぁ、やっぱりこの人たちは当選するって思ってなかったんだな」って。まぁ可哀そうと言えば可哀そうな話なんですが、身から出たサビですからね。

この手の話は、もうすでにゴロゴロと出てるんですよ。そのなかでも最も大きい爆弾が、いわゆる「ドイツ銀行問題」。トランプ・オーガニゼーションっていう会社が、ドイツ銀行から日本円換算で900億円ぐらい、下手すると1000億円ぐらい借りてるんですよ。ドイツ銀行も経営がヤバいんで、返せっていう話になってるんですけど、トランプ側は無い袖は振れないってことで、ケンカになってるんです。そんな状況だけに、今後トランプさんがメルケル首相と会った際に、こっそり「ちょっとドイツ銀行の件で……」とか言い出したりって、彼ならやりかねないんですよね。どっかの怪しい王様の国とかならまだしも、アメリカの大統領がそれをやっちゃったら相当マズいですよね。

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そういった危うさは、誰もが何となく薄々と気づいているんです。ただ、それでも貧困層たちは彼のことを支持するんです。「あのお方は自らの額に汗して、政府から変な援助を受けたりインチキとかもしないで、酸いも甘いも心得て頑張ってきた苦労人なんや!そんなトランプはんをキレイごとで叩くなんて、とんでもない億万長者で、ニューヨーク・タイムズばっかり読んで、おほほと偉そうで、ヒラリーみたいに着飾って、とんでもないやつや!」みたいなノリで。

ところが「トランプリスク3連発」が発動して、やがて「トランプも私たちの味方じゃなかった」みたいな空気になる危険が、どこかにあるわけです。もしそうなったら、そこで政権は立ち往生ですよ。そうなったら、あの人は多分「やってられねえよ、アホらしい」ってことで、さっさとケツまくって辞めちゃうんじゃないかと思うんです。そんな政権放棄による混乱の可能性も含めた「トランプリスク4段ロケット方式」といった事態が、今後大いにありえそうな気がしますね。

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