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【書評】渡辺俊介を一億円選手にした「1センチ1000万円」思考法

ビジネスの現場でもよくある「なんでこんなことをしなければ…」というシーン。しかしそんなネガティブな仕事も、千葉ロッテなどで活躍したミスターサブマリンこと渡辺俊介投手を1億円プレーヤーにしたある考え方を応用すれば、たちまち意味あるものに、そして達成感を得られるものに変えられてしまいます。無料メルマガ『ビジネス発想源』では著者の弘中勝さんが、渡辺投手の著書を取り上げつつその方法を紹介しています。

技術の金額換算

最近読んだ本の内容からの話。

世界一低いと言われるアンダースローで知られ、技巧派として千葉ロッテマリーンズで活躍した渡辺俊介投手は、学生の頃は目立たない存在だった。中学生の頃、コントロールの悪さを見かねた父からアンダースローを勧められて転向したものの、国学院栃木高校では常に小関竜也投手の控えで、国学院大学でも常に制球力の悪さを露呈した。

しかし、渡辺投手の投球をたまたま見ていた新日鐵君津の應武篤良監督がスカウトを熱望し、新日鐵君津に入団して、優秀選手賞を獲得。シドニーオリンピックでも日本代表に選出され、2001年に千葉ロッテマリーンズに入団した。

最近のプロ野球で、アンダースロー投手は少なく、「絶滅危惧種」とまで言われていた。渡辺投手も当初、ファーム(二軍)で結果を残しても一軍に上がったら打たれてしまうケースが多く、「アンダースローは一軍じゃ通用しないのかな…。だから最近、プロ野球にアンダースローはいないのか」と自信をなくしていった。

ドーン! と早い球を投げて抑えないと首脳陣に認めてもらえないだろうと思うも、スピードを求めるとコントロールが悪くなる。

そんな頃、テレビ局に勤める知人が、日本のプロ野球で活躍した歴代アンダースロー投手のフォームを1本のビデオテープにまとめてくれ、渡辺投手はそのビデオを穴があくほど繰り返し見た。杉浦忠投手、足立光宏投手、山田久志投手、上田次朗投手、金城基康投手、仁科時成投手、松沼博久投手…、と諸先輩の投球を見ているうちに、「コントロールが良いアンダースロー投手の共通点」を発見することができた。

アンダースロー投手の左足の上げ方は、みんなそれぞれ特徴があってバラバラなのに、コントロールの良いアンダースロー投手はみんな、どんな上げ方をしても、同じ左足の下ろし方をしていた。早速ブルペンで試してみると、コントロールが安定し、そこからはスピードへのこだわりが消えて、タイミングを外したり、打たせて取ったりする技巧派の投手へと変貌していき結果を出していった

アマチュアのピッチャーの多くは足を上げた後、後方に上体を捻ってから投げるが、プロでは身体をしっかり横向きにしながらバッターの方に移動できなければ通用しない。下半身が後ろの足から前の足に体重移動する時上半身も一緒に移動するのが最も力が球に伝わるが、バッターは簡単にタイミングを取ってしまう

だから、上体を後ろに残したまま股関節と膝をやわらかく使って下半身だけを前に移動することで、その前後の間はバッターからほとんど見えないので、その間によってバッターはタイミングを崩す。スピードガンの表示は遅いのに、打球が詰まるようなピッチングができるようになる。その間は、オーバースロー投手よりも、膝をより前に突き出せるアンダースロー投手の方が長く取ることができて有利である。

しかも渡辺投手は、パワーもないし足も遅いが身体のやわらかさだけは子供の頃から群を抜いており、股関節も他の投手に比べてやわらかかった。両膝と股関節で、上半身と下半身の移動の間を作る。それを自在に使えるようになってから、渡辺投手は見違えるほどに結果が変わっていった。

渡辺投手は寮長で投手コーチの池田重喜氏に、「投げ出すときの左膝の位置が、1センチ1,000万円だと思ってやれ」と言われた。左膝を1センチ前に出して投げられるようになると1,000万円ずつ給料が上がる。

実際に渡辺投手は、プロに入った直後に比べて左膝を10センチは前に出せるようになり、給料もそれぐらい上がった。左膝が10センチ前に出れば、ボールを10センチ前で離すことができるからそれだけバッターにタイミングを崩せるのだ。

こうして、大きく制球力を手にした渡辺俊介投手は球界屈指の技巧派アンダースロー投手となり、千葉ロッテマリーンズの31年ぶりの優勝やWBCの日本代表チームの優勝に大きく貢献した。

出典は、最近読んだこの本です。ミスターサブマリンこと元ロッテの渡辺選手の著作。長所と情報を技術に活かす考え方がまとまってます。

アンダースロー論
(渡辺俊介 著/光文社)

「なんでこんな練習をしなくてはいけないんだ」「こんなことをやって、何になるんだ」と思ってしまう地道な練習や鍛錬は、スポーツや芸術だけではなく、ビジネスの現場においてもよくあることです。

下積み時代や、新事業のテストマーケティング時には何かとコツコツやらなければならないものです。

それを「金額換算」するというのは、成長をイメージできる良い方法かもしれません。

この技術があと1秒速くなれば100万円の利益とか、これが何回できるようになると何万円の給料増とか、お辞儀を何センチ深くすると売上が何万円上がるとか、会議をあと何分減らせばどれだけのコスト減だとか、それによって得られる結果を金額で換算するとモチベーションも上がります

さらに、それを金額換算できるということは、目指さなければならない目標も、それによりどういう利点があるのかという結果もきちんと分析ができているということです。

もちろん、金額だけが目的となるのは本末転倒だという意見も多いでしょうが、より目的が明確になるということです。

自分たちの仕事のあらゆる一挙手一投足に、金額を設定してみてはいかがでしょう?

わずかな秒数や、わずかな長さなどが、実は意外にものすごく大きな数字になっているのが分かるかもしれませんよ。

【今日の発想源実践】(実践期限:1日間)

image by: Shutterstock.com

 

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【著者】 弘中勝 【発行周期】 日刊

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