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35歳以上は切り捨て? 子育て世帯優先のUR都市機構に殺される人々

いつまで経っても解消されない日本の少子化問題の大きな原因のひとつに上げられる「経済的不安」。そんな悩みを抱えた若い世帯を応援すべく、埼玉県とUR都市機構がタッグを組み条件の良い賃貸住宅を安く貸し出す「子育てハッピー県営住宅」をスタートさせました。無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』の著者・廣田信子さんは、これを評価しながらも、郊外の賃貸マンションオーナーが抱える深刻な問題等について言及しています。

UR賃貸住宅を少子化対策で借り上げる?

こんにちは! 廣田信子です。

埼玉県とUR都市機構はUR賃貸住宅を県営住宅として借り上げる新しい仕組みをスタートさせました。

今、公的住宅を新たにつくるのは、時代に合いませんが、住宅にかかるコストの大きさや、住宅の狭さが、子供を産むことをためらわせると要因になっている…、としたら、県営住宅並みの家賃でUR賃貸に入居できるように…、という施策は、安心して子供を産んでもらうためには有効だと思われます。

で、子供を産んでもらいたいということが分りやすく条件に表れています。夫婦とも34歳以下が条件なのです。

最初、記事(住宅新報3月7日号)を目にしたとき、UR賃貸の空室対策も兼ねているのかな…、と瞬間的に思ったのですが、そうではなく、対象物件は駅前などすぐに入居者が埋まりそうな好物件ばかりとのことです。グレードの高い賃貸を半額程度の家賃で、子供を産んでもらえそうな家族に提供していこうというのです。

住宅事情でほしくても望む数の子供を持てない家族には朗報…、と思いつつ、子供を産んでもらうことにしか意味づけができないのかとちょっと複雑な気がします。すべての人が適正な住環境を確保できることが必要なのに…。

今、すでに子供を抱えて狭い住宅、高い家賃に苦しんでいるシングルマザーの住宅事情も考えてほしい…。家賃負担に苦しんでいる年金暮らしの高齢世帯のことも考えてほしい…。ハウジング・プアと呼ばれる若者のことも考えてほしい…。そして、郊外型高経年団地の空室の活用も考えてほしい…と。

そのために、家賃補助という考え方は有効な手段だと思います。しかし、資本主義の社会は単純ではありません。すでに、よい物件を県営住宅並みの家賃で提供すれば、「民間の空家が更に増えかねない」と懸念する声も上がっているといいます。

そもそも、地主さんに、相続税対策とか、資産の有効活用とか言って、空地にどんどん賃貸マンションを建てさせたつけで、今、郊外の賃貸マンションの空きがたいへんな状態だと言います。

建てさせる会社は、家賃保証と言っていても、お客の奪い合いですから、新たに賃貸マンションを建てると、古いマンションから居住者をごっそり引き抜くというようなことも行われていると言います。で、古い賃貸マンションでは、家賃をどんどん下げさせて入居者を確保していくのです。家賃保証とはいっても、家賃の額までは保証していないという理屈です。

そんな状況ですから、借金をして賃貸マンションを作った大家さんからしたら、特定の物件に対する家賃補助は困るわけです。で、どうしようもなくなった賃貸マンションを買って再生したり、取り壊して戸建て住宅として分譲する…なんて、また新しいビジネスも生まれているのです。

ワンオーナーのマンションはそれができます。しかし、簡単には、全戸売りしたり、壊したりできない分譲マンションは、ビジネスのルートにはのりにくいのです。

でも、そこには、管理組合があり、コミュニティがあります。そういう分譲マンションならではの居住環境を生かし住宅に困っている人に住んでもらえるような家賃補助の施策は必要なのではないかと思います。

image by: Shutterstock.com

 

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【著者】 廣田信子 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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