年金受給者にとって何より気になるのが、その支給額。無料メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』の著者で年金アドバイザーのhirokiさんによると、特に「65歳になると年金は増えるのか?」という疑問を持つ方が多いといいますが、実際のところはどうなのでしょうか。hirokiさんにレクチャーしていただきました。どうやら性別と生年月日で変わってくるようですよ。
65歳前から年金を貰えてるが65歳になれば年金は増えるのか?
よく、65歳になると年金は増えるの? という疑問を持たれる方がいらっしゃいます。結論から言うと、大きく増える人もいればそんな変わらない人もいるという答えになります。特に性別と生年月日で変わってきますね。
なお、老齢の年金は昭和36年4月2日以降生まれの男性、昭和41年4月2日以降生まれの女性は完全に65歳からの支給になります。
※参考
なんか…男女で年金支給開始年齢に5年の差がありますが、その歴史の経緯を知りたい方は下記のリンクを見てみてください^_^
● どうして男女で年金支給開始年齢が5年異なっているのか?(過去メルマガ参考記事)
さて、今回は65歳前から貰える年代の方々。次の事例を見ていきましょう!
1.昭和28年3月30日生まれの男性(今月64歳になる。実際に歳を取るのは前日の3月29日。誕生日は誕生日ですが歳を取るのは前日となります)。
● 厚生年金支給開始年齢(日本年金機構)
年金記録は、大学生として20歳になる昭和48年3月から昭和49年7月までの17ヶ月間は未加入(なぜ未納ではなく未加入という表現を使っているかというと20歳以上の昼間学生は平成3年3月までは国民年金に任意で加入してもしなくてもよかったから。加入しなければ未加入となり、またこの未加入は年金受給資格に必要な期間のカラ期間になる。また、国民年金に任意で加入したけども未納にした部分もカラ期間扱い)。
● 諦めるなかれ。年金を25年納めなくても貰える「カラ期間」とは
昭和49年8月から大学卒業までの昭和50年3月までの8ヶ月間は国民年金保険料納付済。昭和50年(1975年)4月から60歳の前月である平成25年(2013年)2月までの455ヶ月間は民間企業で厚生年金加入。平成15年(2003年)3月までの336ヶ月は平均的な給与(平均標準報酬月額という)は35万円とします。平成15年4月から平成25年2月までの119ヶ月間は給与と賞与を合わせて加入期間で平均した額(平均標準報酬額という)は45万円とします。
※注意
なぜ平成15年3月と4月で分けてるかというと、4月以降は賞与も年金額に反映するようになったから(賞与は1回の支給につき150万が年金額に反映する限度)。なお、平成15年3月までの賞与には特別保険料として1%が徴収されていた。この1%分は年金財源に充てて、本人の将来の年金額には反映させてはいなかった。
この男性の生年月日から見ると、60歳からすでに厚生年金のみを受給しています。金額はザックリですが、今貰ってる厚生年金額。
35万円÷1,000×7.125×336ヶ月+45万円÷1,000×5.481×119ヶ月=83万7,900+29万3,508円=113万1,408円(月額9万4,284円)
じゃあ65歳になるとどうなるか。65歳の翌月分から次は国民年金(老齢基礎年金)からの年金が支給されます。
老齢基礎年金額は77万9,300円÷463ヶ月×480ヶ月=75万1,700円。
よって、65歳になると老齢厚生年金113万1,408円+老齢基礎年金75万1,700円=188万3,108円(月額15万6,925円)となり年金額が増えました。
国民年金保険料は8ヶ月間しか納めてないのに463ヶ月分貰えるのは、毎度書いてますが20歳から60歳までの厚生年金加入期間とか共済組合加入期間は同時に国民年金にも加入してるから。
なお、この男性が65歳になる時点(3月29日)で65歳未満の生計維持している配偶者(厚生年金期間や共済組合期間単独で20年以上、または厚年と共済合わせて20年以上になる年金を貰っていないものとします。配偶者がこういう20年以上の加入記録がある厚生年金等を貰えるようになると配偶者加給年金は停止になる。配偶者加給年金貰いたいからといって年金貰える年齢なのに故意に年金請求を遅らせても無意味)が居れば、配偶者が65歳になるまで更に年額38万9,800円の配偶者加給年金が付く場合がある。
配偶者加給年金が付くのであれば、年金総額は188万3,108円+配偶者加給年金38万9,800円=227万2,908円(月額18万9,409円)。
※注意
この男性は更に年額664円の年金額が増えます。経過的加算といいます。もし経過的加算の年金額を含めるなら年金総額は227万2,908円+経過的加算664円=227万3,572円(月額18万9,464円)となる。
● 経過的加算(日本年金機構)
次にこの男性と全く同じ年金記録の条件の女性の場合で話を進めます。
2.昭和28年3月30日生まれの女性でこちらも64歳になる。
この女性はどうなるか。この女性の場合は今回の事例の男性と同じく60歳から老齢厚生年金113万1,408円の年金を貰っていましたが、なんと65歳からではなく、64歳の翌月から「定額部分」という年金が支給され始めて年金額が増えます。
いくら増えるのか。
定額部分→1,625円(定額単価)×455ヶ月=73万9,375円。
よって64歳の翌月から113万1,408円+73万9,375円=187万0,783円(月額15万5,898円)。更に64歳到達日(3月29日)時点で65歳未満の生計維持している配偶者が居れば配偶者加給年金38万9,800円も加算。配偶者加給年金も支給されるとすれば、64歳の翌月から187万0,783円+38万9,800円=226万0,583円(月額18万8,381円)になる。
さっきの男性の場合は65歳時点で65歳未満の生計維持している配偶者がいるかどうかが条件でしたが、この女性の場合は64歳到達日時点を見ます。仮にこの女性の64歳時点で65歳未満の配偶者が居なかったとして、その後この女性が再婚などをして65歳時点で65歳未満の生計維持している配偶者が出来たとしても、配偶者加給年金は付かない。
さて、この女性が65歳になるとどうなるのか。さっきの男性みたいに急激に年金額が増えるのか。
まず老齢厚生年金は113万1,408円。で、65歳になると定額部分という73万9,375円の年金は丸々消滅します。
ですが、定額部分はそのまま老齢基礎年金に移行します。なぜ65歳になると定額部分が消えるかというと、昭和61年4月の年金大改正で定額部分を廃止して、代わりに国民年金(老齢基礎年金)を支給しようってなったから。定額部分は年金支給開始年齢引き上げに伴って、経過的に65歳前から支給してるだけ。
さて、定額部分から老齢基礎年金には移行しますが、両者は計算式が異なる為に経過的加算という年金を支給して金額が65歳前と変わらないようにします。
65歳からの老齢基礎年金は77万3,900円÷463ヶ月×480ヶ月=75万1,700円。
ついでに、参考までに経過的加算という年金を計算しておきます。
※経過的加算→定額単価1,625円×455ヶ月-77万9,300円÷480ヶ月×(昭和36年4月以降の20歳から60歳までの厚生年金や共済組合加入期間455ヶ月)=73万9,375円-73万8,711円=664円。
よって、この女性の65歳からの年金額は老齢厚生年金113万1,408円+経過的加算664円+老齢基礎年金75万1,700円+配偶者加給年金38万9,800円=227万3,572円(月額189,464円)。
というわけで…、65歳時点では、この事例の男性と女性の年金額は完全に一致しました。まあ、65歳になって喜びが大きいのはこの事例の男性といったところでしょうかね…(^^;;
※追記
65歳誕生月になると再度、年金請求書(ハガキタイプの簡単なやつ)が誕生月の初旬頃に送られてきますので、引き続き年金をもらう為には誕生月月末までに提出してください。提出が遅れると年金が一時的に差し止められてしまいます。提出すれば差し止められていた分は遡って支給。
もし65歳以降の年金をしばらく貰わない場合は最大5年据え置きで最大42%年金を増やせる年金の繰り下げというのもあります。
● 不安しかない年金額を、最大42%もあっさり増せる現実的な裏ワザ(まぐまぐニュース参考記事)
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