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「忖度できる部下」は可愛がられるのか。元役人に聞いてみた

森友学園問題で日本中に広まった「忖度」という言葉。しかし、これは昔から日本社会で伝統的に行われている「悪しき習慣」のようなものでもあります。無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』の著者で、役所のOBたちと飲みに行く機会があったという廣田信子さんによれば、彼らのほとんどが「忖度できる部下」を可愛がっていたそう。これに対し、廣田さんは日本人の変えるべき「意識」について持論を展開しています。

「政治家を使う」「役人を動かす」って何のこと?

こんにちは! 廣田信子です。

政治家を使う」「役人を動かす」。私がきらいな言葉ですが、何かの集まりがあると、ごく普通の市民の口から必ずと言っていいほど出る言葉です。権力を利用するということは、そんなに魅力的なことなのでしょうか。

何らかの団体の関係の中では、「天下りの役人を入れて、国からお金を引っ張って財政が安定した団体を目指すべき」なんていう主張が堂々と語られ、私は瞬間、暗い気持ちになります。なんたる時代錯誤!

また、国会議員や首長の選挙があると、自分の仕事や団体にプラスか、すなわち、仕事を受注しやすいか事業に便宜を図ってもらえるか、で、誰を応援するかを決めるということがごく当たり前に語られています。

私たち国民の側、市民の側も、かなりの多数の人が、政治や行政は公平ではないということを当たり前だと思い、うまく政治家を使ったり役人や首長を動かすことが賢いことだと思っているということです。

確かに、私から見ても、そういう「ひいきはいたるところで見られます。国の補助事業は、公募となっていても、募集する前から、役人がある団体に補助金を出すことを約束している、で、募集要項は、その団体に明らかに有利な内容となっている…。

自治体が事業者を公募するのに、実質的に、特定の業者しか応募できない条件が付いていたり、事前に準備していないと、とても応募できないほど、締切までがあまりに短かい…。

そんなことは多々あり、多くの人が「おかしい」と感じても、飲み会の席で文句を言うぐらいで、現実はそんなものだと受け入れているように感じています。

森友学園問題で、財務省の方が責められていますが、役人の方は賢いですから、出世コースに乗っている人が、自分の立場を危うくするようなことに、自ら手を染めるようなことはないと思います。しっかり自己防衛をしているはずです。

しかし、有力政治家の意向を汲み取って、表面的には公平な理屈が立つようにしながら、結果として何らかの成果を出すようにと、考えることはありえると思います。有力政治家にうとまれると、出世ができないということもあるのです。減点主義の世界ですから。

そして、上の意向を汲み取って現場の担当者が知恵を出す」ということも当然にあるでしょう。この「知恵を出す」という点では、役人のみなさんは本当に優秀だと思います。今年の流行語大賞間違いないと言われている「忖度はいたるところにあるのです。

先日、役人としてかなりの地位までいった方や一流民間企業の役員経験者といった方々と、飲む機会がありました。今は、すっかり、そういった世界から離れ、偉ぶることもなく、私たちと普通に活動している方々です。森友学園問題が話題になったので、私は、思わず聞きました。

「現職の時、自分の意図を汲んで動く部下はかわいがるがそれが読めない部下は評価しないということがあった?」

みんな瞬時に当然だよ~」と。

「役所も民間も、きれいごとだけでは済まない。明確に指示できないことも多々あるよ。それを汲み取って動く部下を優秀だと評価するに決まっている。サラリーマン社会で、それができなかったら、絶対に出世できないよ」

…と。

現実の中で生きるのは大変です。それでも、できるだけ、政治家や税金を自分や自分の組織の利益のために使うという考え方は変えていきたいと思います。

政治家のレベルは国民の意識のレベルで決まるというのは本当だと思います。

国会での森友問題の質疑応答を聞いていると、忖度体質とその結果そのものを問題とするより、同じ忖度体質の世界にいる人たちが、誰が得をしたか、誰がいい思いをしたか…という嫉妬でやりあっているように見えてしまいます。

でも、それは一般市民でも同じだと感じます。「政治家を使う」「役人を動かす」という言葉にそれが表れています。

組織の中で生きる苦労はあったでしょうが、定年退職し、子供を育て上げたら、もういいじゃないですか。国民全体のこと、市民全体のことを考えられる少しでも志のある政治家を選び、「使う」のではなく「応援」し、「役人を使う」なんて言わないで、役所と一緒になって市民の幸せのために自らができることをやっていく…。それが、政治のレベルを上げていく唯一の方法のように思えます。

幸いにも、私の周りには、そのお手本になる生き方の人がいます。私も、そんな生き方を目指したいと思います。次の世代のために…。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 廣田信子 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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