MAG2 NEWS MENU

労働力が不足する日本の未来を救うのは移民か、ロボットか

少子高齢化、人口減少による労働力不足の解消策として、「日本も外国人労働者の移民受け入れを」という声が高まっています。はたしてそれで万事は解決するのでしょうか。無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者・北野幸伯さんは、先日亡くなられた保守派の論客・渡部昇一氏の著書を引きながら、移民受け入れの是非を論じています。

移民とロボット、繁栄をもたらすのはどっち?

渡部昇一先生が17日、心不全で亡くなられたと聞き、とても悲しんでいます。私が渡部先生の本をはじめて読んだのは、今から27年前。『日はまだ昇る~日本経済「浮沈」の秘密』というタイトルでした。当時私は、モスクワに留学したばかり。ソ連人も、世界中から来ている留学生たちも、皆「日本が好きだ! 日本はすごい!」というので、とても驚いていた。

「え~~~、日本は世界中から嫌われているはずじゃないの?」

自虐史観に染まっていた私は、わけがわかりませんでした。しかし、渡部先生の「日はまだ昇る」を読んで、納得したのです。

現在の「移民問題」を予言

渡部先生はこの本の中で、1958年にイギリス旅行されたときの経験を書いておられます。

ロンドンのユースホステルに泊まったところ、働いているのは、パキスタン人など外国人労働者ばかりだった。いまから60年近く前、すでにそんな状態だった。保守党の政治家の一部は、当時から「外国人が増えていけば、将来ロンドンで人種戦争が起こり、血が流れる」と警告していた。

そして、1958年当時、こんなひどい遊びがあった。

パーキ・バッシングと言って、パキスタン人を殴りにいく遊びが、すでにあった。

 

(中略)

 

最近では、毎夏のようにテムズ川の南岸では血が流れている。イノク・ポーエルが言ったとおりの惨憺たる状況になってしまったのである。

皆さん、覚えておられるでしょうか? ロシアでも、自分の応援するチームが負けた時、サッカーファンの一部は、「キルギス人の清掃員を殴って憂さ晴らしする」そうです。

ペテルブルグのテロは、キルギス生まれのウズベク人(ロシアに帰化)がやったとされています。もし彼が、何度もひどい目にあったとすれば、「ISに入って復讐してやる!」と考えたとしても、不思議ではありません。私は、久しぶりにこの本を読んで、「なんだ、ロシアと同じことがイギリスでも起こっていたのか」と驚きました。

渡部先生は、いいます。

こういった現実は、人道的な議論を超越して起こる現象

である、と。

昨年、イギリス国民は「EU離脱」を選択しました。その大きな理由の一つが「移民問題」だったことは、皆さんもご存知です。このような現実をまったく知らないのか、日本政府は、「遅れをとりもどせ!」とばかりに、せっせと外国人労働者をいれています。欧米ロの失敗をそのまま繰り返すとは、なんと愚かな…。

日本は、なぜ西ドイツに勝ったのか?

さて、敗戦後「奇跡の経済成長」をはたした国が、二つありました。日本と西ドイツです。両国とも、「焼野原」からのスタートでしたが、奇跡的復興をなしとげた。しかし、ハイテク分野では、日本が西ドイツに勝ちました。何が原因だったのでしょうか?

渡部先生は、「西ドイツには、安い外国人労働者が大量に流れ込んだから」としています。

日本には、東ドイツから逃げてくる人間、または地続きのユーゴ、スペイン、イタリア、トルコ、あるいは韓国から来る人間がいなかったので、その人手不足をロボットで乗り切ろうと、懸命の努力をしたからである。一方、西ドイツには大量の人間が流入したから、ロボットを作る必然性がなかった。だが、この時の選択の違いによって、気がついてみると最先端の技術力、それもロボット分野で、圧倒的な差を日本につけられてしまったのである。

意識的ではないにしろ、当時の日本政府は、正しい政策を行っていたのですね。一方今の日本政府は、西ドイツの失敗を活かすことなく、あえて間違った道を進んでいます

介護ロボットの開発と普及を急げ!

また、渡部先生はこの本の中で、介護が必要なお年寄りに対し、非常に残酷な仕打ちをしているケースについて書いておられます。しかし、寝たきり老人の世話を長期間耐え続けることは、非常に難しい現実があると。それで、日本政府は、「フィリピンから看護人を入れよう」などと主張しています。こういう発想について渡部先生は。

高齢化社会へと、どんどん加速していくのに、看護人は減る一方だ。そこに、日本語を知らない外国人を入れようなどという発想は、双方にとって、まことに非人間的なことだろう。

では、どうすればいいのでしょうか?

基本介護はロボットにすべきであり、国家が懸賞を出しても、こういうロボットの開発を急ぐべきだと、私は考えている。

「移民問題」の本質

私は、移民全般に反対ではありません。シリコンバレーに来るような優秀な人材はどんどん入れるべきだと思います。しかし、「3K移民」にはずっと反対しつづけています。なぜでしょうか? それが、「差別だからです。なぜ、差別?

口に出していうかは別として、「移民推進派」の本音は、「日本人が嫌がる仕事は、貧しい外国人を安く雇ってやらせればいいさ!」だからです。これは、差別ではないですか? 「移民推進派」の人たちは、「優秀な外国人が日本に繁栄をもたらす」などといいます。しかし、実際に大量に入れているのは、「3K移民ばかり」なのです。

渡部先生は、おっしゃいます。

たしかに、「人手が足りなかったら外国人労働者を入れるべきで、それが国際化というものだ」と主張する日本人もいる。しかし人手が足りないような仕事は、日本の青少年が嫌がる仕事であり、だから人手が不足なのである。そこへ外国人を入れよというのはまことに失礼な発想だ。しかも安く上がるからというのでは、さらに失礼な発想だろう。

日本人が嫌う仕事を、金があるのを幸いに外国人にさせようというパターンは、レイシストのそれと少しも変わらない。

同感です。

渡部先生は、「外国人労働者」「移民」ではなく、「ロボット化」によって、日本は繁栄しつづけることができると考えておられました。私もそう思います。

image by: Shutterstock.com

北野幸伯この著者の記事一覧

日本のエリートがこっそり読んでいる秘伝のメルマガ。驚愕の予測的中率に、問合わせが殺到中。わけのわからない世界情勢を、世界一わかりやすく解説しています。まぐまぐ殿堂入り!まぐまぐ大賞2015年・総合大賞一位の実力!

無料メルマガ好評配信中

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 ロシア政治経済ジャーナル 』

【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け