子供も人間関係で悩んでる。親ができる思春期の子の「心のケア」

 

まず、学校という組織集団の中でのストレスをどう乗り越えるか、といった視点です。児童、生徒たちにとっては、成績上の問題などの悩みもありますが、大きなストレスとして、同級生や先輩、後輩との人間関係、先生との関係などなどの、「人間関係のストレス」を抱えています。この人間関係ストレスを解決する心のマネジメントを考えてみましょう。

思春期の子ども達は、「人からどう見られているかにとても敏感です。自我の確立の時期であり、だれしも対人関係で不安を抱えます。全員がだれともフランクに話せて、社交的であり、お友達を巻き込んで楽しい集団を作り出せるとしたら、どんなにか良いでしょう。

しかし、実際には、緘黙(かんもく)の子ども、「ひとりぼっちを好む子どももいます。最近の報道で、ある動物園で集団に馴染めず、壁をむいて一日中、立っているペンギンに共感を示す若者のコメントが話題になっていました。

学校の中にいると、登校しても、だれとも話さず、挨拶も交わさず、だまったまま帰宅する子どもをよく目にします。こんな子が増えてきているように思われます。下校途中に小学時代の親友をみつけて走り寄り、「今日初めて口をきいたぁ」と会話しているのを見ると驚かされます。

「傷つきたくないから」、「自己防衛なのだから」、と言ってしまえばそれまでですが、他人の言動に傷ついた子、人と人との間の距離感をつかめないでいる子、人間関係の保ち方で困っている子、助けを必要としている子、そんな子たちが今ここに存在しているのです。助けなければなりません。

そのためには、子どものありのままを受け入れ自己肯定できるよう支えることが大切です。これが前提です。保護者は、「誰が何と言おうとも、あなたはあなたらしく生きていけばいい」、と全てを受け入れ安心できる空間や居場所を提供することが大切です。

そのうえで、徐々に教えていかねばならないことがあります。人間関係に悩んでいる子ども達に、直接、話す際に、最初に言うべきことは「ものの見方、とらえ方」についてです。「物事を見るときの見方や感じ方は本当に人それぞれであり誰もがまったく同じではない、ということを知りましょう」ということを教えるということです。

保護者や教師が、同じ事実に対しても、いろいろな見方があることを教え、他人に対する寛容さや包容力を伸ばす教育が、未熟な思春期の子どもたちには必要です。

卑近な例ですが、小学4年生のときの印象に残っているエピソードを紹介します。昔の田舎の小学校のことです。障がいのある同級生の子がいました。授業中、立ち歩く、先生のいうことを聞けない、ルールも守らない、当然、集団行動はとれません。クラスのみんなは迷惑をかけられ、彼を嫌がっていました。

秋のある日、電車に乗って郊外へ遠足に出かけました。障がいのある彼は、停車する駅名すべてを止まる前に答え、その先の沿線上の駅名もスラスラと全部暗記していたのです。クラスメートたちは「すっげえ」と感心しきりでした。

翌日、彼は疲れか休んだのですが、担任の先生はクラス全員を前にして、「ほんとうは頭がいいんだよ」と彼の能力の高さをほめてほかにも動植物への優しい気持ち純粋な心をたたえました

先生はお別れが近いこともわかっていたのでしょう。彼は5年生になると、他の小学校の特別支援学級に移り、その後、二度と会えませんでしたが、人間としてとても大事なことを教えてくれました。担任の先生からは、思いやり、という言葉を示されましたが、今で言えば、ソーシャル・インクルージョン教育(注)だったと思います。子どもから見れば、ルールを守れない困った子ですが、先生は全く違う、慈愛の目で見ていたのです。

このように、子ども達にとって大切なことは、基本的に「他の人の長所やよいところを見る努力をすることを示していくことが大切です。

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