米国による「先制攻撃」が現実的にありえないシナリオである理由

 

安倍政権の幼稚園レベルの対応

そう見てくると、第4に、安倍政権の余りにも稚拙な対応が恥ずかしい。

安倍首相は、米国が「あらゆる選択肢をテーブルに乗せた」という話を聞いて、「おっ、トランプ政権は先制攻撃をも辞さない強硬路線に突き進むのだなと興奮し、それっ、共同演習だ、米韓防護だとハシャギまくった。しかし「あらゆる選択肢」には、もちろん軍事的先制攻撃シナリオも含まれていたけれども、上述のような理由で却下され、その反面では、AP通信が報道したように「北朝鮮を核保有国として容認する」(ことを通じて交渉を通じて問題を解決する)という軟弱なシナリオもまた含まれていたわけである。

米国が、対北朝鮮で開戦も辞さずという勢いで突き進むかと言えばそんなことはあり得ない。今のところはむしろ逆で、中国が主米国が従となった軍事的・経済的・政治的な「圧力」強化で北を交渉の場に引き出せるかどうかを試している。そこで鋭く問われる焦点は、まず北が核を放棄しなければ一切の交渉に応じないというこれまで通りの立場をとるのか、それともAP通信が報じたように、核放棄を含めて交渉の対象とするところへ踏み込むのかどうかというところにある。

とろこが安倍首相は、そのような米中共同による軟着陸路線の微妙さを全くご存じないかのようで、相変わらす米国盟主の下で日韓が協力して北朝鮮を力で攻め立てるという倒錯的な路線を追求し続けているかのようである。

 

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早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。

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