映画のCMなどでよく聞く「笑って泣ける名作です！」という惹句。今や一作品の中に「喜劇と悲劇が同居」しているのは珍しくありませんが、その手法第一号となった作品を挙げよと言われ即答できる方は多くないでしょう。無料メルマガ『１日１粒！「幸せのタネ」』の著者・須田將昭さんは、「喜劇と悲劇を最初に一つの作品に入れ込んだのは、チャップリンではないか」とした上で、現在も愛され、多くの人の心を揺り動かし続ける「チャップリン映画」の魅力を分析しています。
笑いあり、涙あり
A picture with a smile – and perhaps, a tear.
（笑いと…多分、涙の物語）
冒頭に引いた文句は、映画『キッド』のオープニングの字幕です。『キッド』は、チャーリー・チャップリンが脚本・製作・監督、それから音楽も手がけた映画です。
笑いと…多分、涙の物語
とありますが、コミカルな映画でありながら、ホロっと涙するシーンがそこかしこにあります。
今でこそ、「笑いあり、涙あり」の映画は当たり前ですが、一つの映画の中に、喜劇も悲劇も入っているのは、なんとこの映画が最初です。
1921年の映画です。放浪者（チャップリン）が、ひょんなことから捨て子を拾うことになります。チャップリン演じる放浪者は、ボロボロの格好です。靴にしても履いているズボンにしても。部屋の様子からも実に貧しい。にもかかわらず、捨て子を育てていくのです。それだけですでに涙がじわっと出てくるのですが、その様子を見ていると笑いもこみ上げてくる。
不思議な魅力の詰まった映画です。
チャップリンの映画の魅力は、一口には語り切れないのですが、ブルジョアを茶化しつつ、権力への痛烈な批判もあり、でもそれだけはありません。底に流れるペーソス（哀愁感、悲壮感）が、笑いと涙を誘います。
また、サイレント映画（とはいえ、音楽はありますが）なので、セリフは少し字幕で出るぐらいなのですが、なぜかちゃんと状況がわかります。
そういう意味でも、今の時代にこそあらためて見直してみたい映画だと感じます。機会があれば、一度チャップリンの映画を見てください。