前川氏は、獣医学部を新設する理由はさしあたって見当たらないこと、また特別な新しいプロジェクトを行なう計画も聞いていなかったので、官邸の圧力で「赤信号を青信号に、黒を白にさせられようとしている」と感じ、退官した身だがあえて問題提起として明らかにしたようだ。前川氏によれば、「総理の意向」といった形で認可すれば「行政のあり方が歪められてしまう」とみたようで、「役人は公正、公平な役人のあり方、吏道を全うすべきだと考えた」としている。
これに対し安倍首相は「友人だからといって筋を曲げるようなことは一切していない。構造特区に指定したのは、岩盤のように固い規制に穴をあけるためで何ら恣意的な目的にない」と主張し続けている。また菅官房長官は「総理の意向」などと記された文書について「怪文書みたいなものではないか」と一蹴。前川氏は文科省の天下り問題で「自ら辞める意向を示さず地位に恋々としがみついた人物」と普段は冷静な長官にしては珍しく個人攻撃をして驚かせた。
元官僚と官邸・与党のトップが連日メディアでやりあうといった事例は最近では珍しい。国民が疑問に思っている以上、国民の前ではっきりさせた方がよいだろう。官邸と巨大与党が、首相の友人に便宜を図ったというような印象をもたれたまま終結するのはいかがなものか。(財界 2017年7月4日号 第450回)
ページ: 1 2