MAG2 NEWS MENU

あのGoogleが、なぜ子会社化に? MBAホルダーが経営戦略を徹底分析

全世界を驚かしたグーグルの持ち株会社制度導入。その狙いはどこにあるのでしょうか。『ビジネスマン必読!1日3分で身につけるMBA講座』の著者でMBAホルダーの安部徹也さんが、組織戦略の観点からその背景に迫ります。

グーグルを子会社化!? その組織戦略の背景にあるものとは?

2015年8月10日、検索エンジン大手のグーグルが、会社を分割し、持ち株会社制度を導入するという発表が世界を駆け巡りました。

各紙の報道では、グーグルは今後、新たに設立する持ち株会社「アルファベット」の下で、インターネット検索と広告事業を中核とするグーグルを始めとして、自動車や住宅、医療など本業と関連性の薄い分野の新規事業は別会社を設立して、事業子会社としてビジネスを展開することになります。

これまで順調に拡大を続けてきたグーグルですが、なぜこのような組織をドラスティックに変更する決断をしたのでしょうか? 今回は組織戦略の観点から、その背景に迫っていきたいと思います。

組織戦略を構成する2つの組織形態

組織というのは、仕事を効率化させるために重要な役割を果たします。

この組織を構築する際には、基本的に2つのパターンから選択してくことになります。それが、機能別組織事業部制組織になります。

機能別組織とは、財務や人事、営業など個々の機能別にまとめられた組織です。

この機能別組織は、それぞれの部署において担当する業務が細分化され専門化されていて、意思決定の権限が上位の管理者に集中するという特徴があります。

規模の小さい組織では効率性と生産性が高くなるというメリットがある反面、組織が肥大化してくると組織の細分化や階層化が進み、逆に生産性が低下するというデメリットもあります。組織が大きくなるにつれ、業務が縦割りになり、組織間の連携が難しくなってくるのです。

一方、事業部制組織とは市場や地域、プロダクト毎にまとめられている組織です。1つの組織で事業が完結するよう財務や人事、営業など多くの機能を含んでいて、それぞれの事業部を統括する本社機能を有しています

この事業部制組織では、意思決定権限と執行権限を事業部ごとに委譲しやすく、特に大規模な組織では意思決定のスピードを速めることができるというメリットがあります。

ただ、各事業が独立してビジネスを展開するために、時として事業部間に対立を生む可能性があり、企業として全社的な意思統一が難しいことを考慮に入れておく必要があるでしょう。

このように、企業は自社の置かれている環境に応じて機能別組織と事業部制組織から適切なタイプを選択していく必要があるのです。

MBAの「教科書通り」のグーグルの組織戦略

グーグルの場合、検索エンジン事業を主体とした機能別組織からスタートして事業規模が拡大するにつれて、従来とは異なる新たな事業を組織の中に加えてきました。

たとえば、2006年に買収したYouTubeはまだインターネット検索・広告事業と関連が深いとしても、2010年にスタートした自動運転カープロジェクトや2013年のヘルスケア事業、また最近の人工知能やロボット事業など、実に業界の異なる複数の事業を1つの組織で展開してきたのです。

ただ、このような複数の事業を機能別組織で展開する場合、グーグルほどの規模を誇る企業では、効率が極端に悪化することにつながります。

また、機能別組織ではトップに意思決定権限が集中するため、様々な事業の重要な決定事項が重なれば事業展開のスピードが極端に落ち込むことになるのです。

「ドッグイヤー」と呼ばれる業界で、激しい争いを繰り広げているグーグルにとっては、これらの組織上の欠点は、放置しておけば取り返しのつかない事態に陥る可能性も高まっていたのです。

そこで、今回の組織変更は、組織を事業部制組織の進化形である持ち株会社制度に移行させることによって、組織の効率化を図り、事業展開のスピードをさらに加速させていく狙いがあったといえるでしょう。

実際に新組織体制では、事業子会社の中核を担うグーグルにおいてラリー・ペイジ氏やセルゲイ・ブリン氏、エリック・シュミット氏ら3人の創業者は経営から退き、新CEOとして上級副社長であるサンダー・ピチャイ氏を任命して、これまでの創業者が一手に収めていた権限を大きく委譲し新たな道を模索していくことになるのです。

「組織は戦略に従う」という言葉があるように、新たに描かれた戦略に応じて、組織を大きく変えてきたグーグル創業者達の狙いは当たるのでしょうか?

組織戦略的は「教科書通り」といえるだけに、その結果に注目していきましょう。

image by: Wikipedia

 

ビジネスマン必読!1日3分で身につけるMBA講座
テレビ東京『WBS』への出演など、マスメディアで活躍するMBAホルダー・安部徹也が、経営戦略やマーケティングなどビジネススクールで学ぶ最先端の理論を、わかり易く解説する無料のMBAメルマガ。
<<登録はこちら>>

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け