なぜトランプの長男は「自殺行為」に走ってしまったのか?

 

詳細を見ていきましょう。

 

悪評にまみれて記憶されるだろう一連のメールの中で、特に驚嘆に値する箇所が4つある。

 

1.「これはもちろんとてもハイレベルでデリケートな情報だが、ロシアとその政府が大統領選でトランプ氏を応援する一環のものだ」

 

(中略)

 

上記した一節こそが、明らかにこの4ページ目で最も注目されるハイライトだ。音楽業界の広報業者から国際的な謎の人に転じたロブ・ゴールドストーン氏は、大統領を目指していた人の息子に真正面から、ロシアが君の父さんに手を貸そうとしていると伝えているのだ。
(同上)

ロブ・ゴールドストーンさんは、トランプ・ジュニアさんとロシア人弁護士が会えるよう、仲介した人物です。

う~む。ロブさんのメールの一節「これはもちろんとてもハイレベルでデリケートな情報だが、ロシアとその政府が大統領選でトランプ氏を応援する一環のものだ」は、

1.「ロシア政府が、アメリカ大統領選に介入した」の証拠になる可能性がある。

そして、このメールを受け取ったトランプ・ジュニアさんがロシア人弁護士に会った事実は、

2.「トランプ陣営とロシア政府が結託していた」ことの証拠になる可能性がある。

少なくともジュニアさんは、「ロシア政府から機密情報の提供がある」ことを期待して会いにいっている。

2.「君の言う通りの内容なら最高だ特に夏の後半には」

 

句読点の不在が非常に目立つというのは横に置いて、トランプ・ジュニア氏がこうして返信したことから、自分がどういう事態に関わろうとしているのか、本人は完全に承知していたことが分かる。自分の父親とホワイトハウスの間に立ちはだかる唯一の人物について、犯罪の裏付けとなるような資料をロシア政府からもらえるかもしれないとなり、よだれを流さんばかりの状態だ。

 

しかもこの一節の後半からして、入手情報をどのタイミングで公表できるかトランプ・ジュニア氏が考えている様子がうかがえる。
(同上)

ここでは、トランプ・ジュニアさんが、「ロシアから得た機密情報をいつ使ってヒラリーに決定的打撃を与えようか?」と考えていることがわかります。これは、「ロシア政府が、ジュニア君を通して、アメリカ大統領選に介入した」、つまり、「トランプ陣営とロシア政府は結託していた証拠」になる可能性があります。

3.「モスクワからこの木曜日にやってくるロシア政府の弁護士と、君の会合を調整してくれと、エミンに頼まれた」

 

問題の弁護士、ナタリア・ベセルニツカヤ氏は、自分はロシア政府と関係ないと主張している。しかしゴールドストーン氏はここで彼女をトランプ・ジュニア氏に「ロシア政府の弁護士」と紹介している。
(同上)

エミンというのは、ロシアの(アゼルバイジャン系)歌手です。面白いですね。二人仲介者がいるのです。ジュニアロブエミンヒラリーの秘密を知る弁護士、ナタリア弁護士は、「自分はロシア政府と関係ない」としています。そうなのかもしれません。しかし、ジュニアさんは、「ロシア政府の弁護士」と期待して会っていた。

4.「To:ジャレッド・クシュナー、ポール・マナフォート」

 

一連のメールの一番上に、ホワイトハウスにとって特に気になるはずの名前が二つある。トランプ大統領の義理の息子のジャレッド・クシュナー大統領顧問と、当時のトランプ選対本部長ポール・マナフォート氏だ。

 

これはつまり二人とも、クリントン氏に打撃を与える「公式文書や情報」提供を申し出るというメールのやりとりの全容を受け取った上で、翌日に問題の会合に出席したことを意味する。
(同上)

トランプ・ジュニア、イヴァンカさんの夫クシュナーさん、マナフォード選対本部長は、「ロシア政府の代理人弁護士から、ヒラリーのヤバい機密情報を得ることができる」ことを期待してあった。このことは、「トランプ陣営がひろくロシア政府と結託していた」ことの証拠になる可能性があります。

以上、BBCの記事を紹介しました。「可能性があります」と歯切れの悪い結論になっていますが。私たち司法の素人が見て、「これは決定的だろう」と思っても、案外スルーされたりすることが多い。それに、「政治的力学」もやはり判決を左右する気がします。なんやかんやいっても、「解釈の余地」がありますから。

しかし、普通に考えれば「トランプさんはまた一歩弾劾に近づいた」ということでしょう。

 

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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