アベノミクスが6度目の挫折。政府文書からも「デフレ」が消滅

 

日本の金融構造の機能不全をそのままにしたのでは

百歩譲って、「デフレ脱却」という目標が正しかったとして、それを金融的な異次元緩和で成し遂げようとするのが適切だったのかどうか。

異次元緩和の大略を示せば、

マネタリーベース  13年3月   →→→     17年6月
           138兆        468兆(+330)
日銀の国債保有高   165兆        501兆(+336)
日銀当座預金      47兆        363兆(+316)
銀行預貸ギャップ   214兆        263兆(+ 49)
企業内部留保     306兆        375兆(+ 69)

マネタリーベース、すなわち日銀が供給する通貨の総額は、アベノミクスのスタート当初から今年6月までに330兆円も増えている。日銀がそれだけせっせとお札を刷って、そのほぼ同額の336兆円日銀の国債保有高が増えている。大雑把に言えば、日銀はこの4年余りに刷り増したお札を全部、国債購入に充てたということである。

日銀は直接市場で国債を買い漁ることは出来ないから、銀行の持っている国債を買い上げて、その代金を各銀行が日銀内においている当座預金口座に振り込む。この日銀当座預金は、本来は、各行に何か問題が生じて資金繰りに支障が生じた場合に、たちまち取り付け騒ぎが起きたりしないように適切な準備金を置いておくというのが本来の趣旨だが、実際には日銀と各行とのマネーのやりとりはすべてここを通過する。

で、ここからがアベノミクスの大誤算になるのだが、そうやって銀行に向かって有り余るマネーをシャワーのように浴びせかければ、銀行は居ても立ってもいられなくなって、日銀当座預金から金を引き出して、企業の設備投資資金や消費者の家や車のローンなどの形で回そうとするだろうという想定だったのだが、日銀当座預金の増額分が316兆で、日銀から振り込まれた分がほとんどそのまま滞留している。つまり、330兆円分の異次元緩和は、鳴り物入りで行われたにもかかわらず、すべて日銀の構内での自家中毒的なやりとりに留まっていて、そこから経済の血液たるマネーが全身に向かってどんどん循環して景気が良くなっていくということは起こらなかったのである。

どうしてそうなのかと言えば、それははっきりしていて、需要そのものが減退しているからである。いくら政府・日銀が企業や消費者に金を使わせるようとしても実需がなければ動かない。だから銀行の預貸ギャップ、すなわち預かったお金のうちどれだけを貸付に回したかの差額も増え続けるしかない。加えて、企業自身の内部留保も増えているので、仮に工場新設などの投資が必要になった場合でも、自己資金で賄うことが出来るので銀行の出番はない

こうして、日銀当座預金、銀行預貸ギャップ、企業内部留保という3重のダムに堰き止められて、単にお札を刷り増しただけでは何の効果もないことがますます明らかになってきた。

来年4月のアベノミクス発動から丸5年、それと重なって黒田総裁任期満了で再選があるのかどうなのか。これが秋の臨時国会の重要テーマとなるはずで、活発な議論が期待される。

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image by: 首相官邸

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早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。

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