アベノミクスが6度目の挫折。政府文書からも「デフレ」が消滅

 

黒田日銀総裁の発言は意味不明

この20日の日銀会見で黒田東彦総裁が、予想した通りに物価が上がらない理由について「賃金・物価が上がりにくいことを前提とした考え方や慣行が、企業や家計に残っている。根強いデフレ・マインドがある」と述べたのは、まるっきり意味不明である。

企業や家計に根強いデフレ・マインドがあるから、それを異次元金融緩和という一種の心理的ショック療法によって揺り覚まさせてインフレ期待マインドに導けば、人々は財布のヒモを緩めて投資や消費にお金を使い始めるという想定に立って、アベノミクスは設計され実行されたはずである。それが4年目を過ぎて、依然としてデフレ・マインドの根強さを克服できなかったというのであれば、

  1. まずは失敗を素直に認めるべきであるし、
  2. 次にそれは目標設定そのものの誤りなのか、目標は正しかったが異次元緩和という手段採用の誤りなのかを、全国民と世界に向かってきちんと説明すべきであるし、
  3. そしてそのことへの自らの責任の取り方について進んで語るべきである。

なのに黒田は「根強いデフレ・マインドがある」と、まるで他人事のように言い放ち、それに対して日銀クラブで記者から何か質問が出たのかどうか分からないが、少なくとも「総裁、ふざけるのもいい加減にして下さい。これはもう完全な失敗ということでしょう。どう責任をとるつもりですか」と食い下がるような記者がいなかったことだけは確かである(いればニュースになっているから)。

官邸記者クラブが菅義偉官房長官の仲良し記者でほぼ埋まっていて、臨時参加の記者が執拗に質問をすると顰蹙を買うことになるのと全く同様に、日銀記者クラブには黒田総裁が不機嫌になるようなことを言う者はいないのだろう。こうやって日本は知的に衰退していくのである。

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