怒りを発散するために思い切り怒鳴ったり、感情を表に出すことは、はたして有効なのでしょうか? 今回の無料メルマガ『弁護士谷原誠の【仕事の流儀】』では、著者で現役弁護士の谷原さんが、ある心理学の実験をもとにした怒りのコントロール方法を紹介しています。
動きで怒りを制御する方法
こんにちは。弁護士の谷原誠です。
今回は、怒りのコントロールについてです。
怒りを感じ時、怒りを発散するため、サンドバッグを叩いたり、思いっきり怒鳴ってみたり、という方法は有効でしょうか。感情を外に出して発散することは、なんとなく感情を鎮めるのに有効と思えます。
1990年代、アイオワ州立大学の心理学者、ブラッド・ブッシュマンは、怒りに関する実験を行いました。その結果、怒りを生じさせた後、静かにしていた被験者よりも、怒りを生じさせた後にサンドバッグを殴らせた被験者の方が怒りが増幅したばかりか、怒りの対象ではない人にまで怒りをぶつけるようになったといいます。
つまり、怒りを生じた時に、暴れたり、怒鳴ったり、という行為は、怒りを発散させて鎮めるのではなく、逆に増幅する、ということです。怒りを感じた時には、怒りに伴う行動を起こすと、怒りが増幅してしまう、とういうことです。動きに感情がつられる、ということですね。
怒ったままでいたい人はいないでしょう。では、どうすればいいでしょうか。
動きに感情がつられる、というのであれば、怒りを生じた時に、それを鎮めるためには、怒りを感じた時に怒る肉体の状態を起こさせないようにする、ということでしょう。では、怒りを生じた時、私たちは、どのような肉体の反応が起こるでしょうか。
・怒りが生じた時には全身に力が入る。
・立ち上がって前のめりになる
・呼吸が短く荒くなる。
・目尻が上がり、口角が下がる。
一般的には、このような傾向があるでしょう。そうであれば、この逆の行動を取ってみましょう。
・仰向けに寝て全身の力を抜く。
・ゆったりとしたソファに腰掛けて、全身の力を抜く。
・深呼吸をし、その後もできるだけゆっくり深く呼吸する。
・口角を上げ、目尻を下げる。
これらの行動は、行動と感情が矛盾することになります。怒りの感情と矛盾する肉体の動き、ということになります。
そうなると、心理学者であるレオン・フェスティンガーの「不協和解消理論」が適用されます。私たちは、感情と行動が矛盾すると、気持ちが悪くなって、どちらかをどちらかに揃えて矛盾を解消しようとします。とすれば、ここで、行動を維持できれば、感情がおさまるしかなくなるのではないでしょうか。怒りと反対の行動を取り続けることで、感情がやむなく行動に合わせるしかなくなる、ということです。
また、血糖値が低いグループは、高いグループに比べて3倍、怒りの程度が強いということです。お腹がすいている時にイライラしたり、怒りやすくなる、というのは、よく経験することですね。怒りが生じた場合には、糖質を摂取する、あるいは怒りやすい人は、糖質不足を避ける、ということも有効かもしれません。
このように、ちょっとした工夫で、怒りをコントロールすることも可能だと思いますので、普段、怒りを感じた時に試していただければと思います。
なお、下記の方法も有効です。
「怒りを覚えたら十数えよ。それでも怒りがおさまらなかったら、百まで数えよ。それでもだめなら千まで数えよ。」(トーマス・ジェファーソン)
今回は、ここまでです。
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