なぜ、年金の受給額はなかなか上がらないのか? 給付金の歴史を追う

 

ところで、もともと公的年金というのはあらかじめ決まった保険料を積み立てておいて、将来その積み立てたお金と運用収入も受け取るという積立方式から始まったものですが、戦後のハイパーインフレで積立金の価値が急激に減り、また年金給付が急速に上がっていったから積立方式が機能しなくなり、その時の現役世代の保険料をそのままその時の年金受給者に送るという賦課方式に変わっていった。積立方式は公平ではありますが、インフレと、いつまで生きるかわからないという長寿リスクに対応できない。

で、このオイルショックを機に昭和50年に財政赤字(国の税収より支出が上回る)になって、出生率もついに2.0を切った(平成17年の1.26を底に今は1.44)。とはいえ、その後も賃金も物価もとりあえず上がっていった(昭和50年からバブル崩壊までを経済の安定成長期という)から、昭和51年改正で年金を月額9万円に、昭和55年に月額13万円というふうに上げていった。

しかし、昭和45年に高齢化率が7%になって本格的に高齢化が始まり、昭和55年には9%、平成2年には12%、平成12年には17%、平成22年には23%…今は27%ちょい。2060年以降は40%前後で推移していく見通し。よって、高齢化は本格的になってきたし、少子化も進み始めたから、昭和40年代は経済が成長しまくってたからひたすら年金も上げられたけど、経済が停滞し始めたからその上げすぎた年金今度は抑制する方向に向いたんです。

ちなみに、平均寿命は昭和30年あたりは男63歳で女67歳ほどでしたが、昭和60年で男は74歳で女は80歳を超えた。これは2050年には男は83歳で、女は90歳を超える見通し。

年金支給開始年齢が引き上げられるなんて許せない!! って声は多いですが、そもそも平均寿命が60歳くらいの時に作られた年金を当時のままの年金支給開始年齢という自体が無理です(平成13年から平成42年までに順次60歳から65歳に引き上げてる最中)。

年金支給開始年齢引き上げについては昭和55年から実施しようとしたが、日経連や労働組合から猛烈に反対されて実施できなかった。昭和60年改正や平成元年改正でも年金支給開始年齢引き上げが見送られてしまって、実際に着手された平成13年まで実に20年間棚上げされてしまった。高齢化は進むのに支給開始年齢が引き上がらないというのは、支給は従来通りになるという事だから、その増幅する負担は後世代のツケに回される事になってしまった。

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