度重なる北朝鮮の挑発行為に対し、国連安保理は新たな制裁案を全会一致で採択しました。全会一致ということは、北朝鮮を「護衛国家」として擁護する中ロも賛成したということ。なぜ両国は反対しなかったのか、無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者で国際関係研究者の北野幸伯さんが、賢くなったアメリカの動きを上げつつ解説しています。
国連安保理、北朝鮮制裁決議を、全会一致で採択=アメリカは賢くなっている
皆さんご存知のように、北朝鮮は8月29日、北海道上空を通過する弾道ミサイルを発射しました。そして、9月3日、6回目の核実験を実施した。これに対して国連安保理は9月11日、新たな制裁決議を、全会一致で採択しました。
国際社会は現在、制裁を強化したい日本、アメリカ、韓国、なんやかんやと北朝鮮を守りたい中国、ロシアに分かれています。では、なぜ中ロは今回、「制裁強化」に賛成したのでしょうか??
BBC News9月12日を見てみましょう。
国連安保理、北朝鮮への制裁決議を全会一致で採択
BBC News 9/12(火)11:10配信
国連安全保障理事会は11日、6回目かつ過去最大の核実験を実施した北朝鮮に対する新たな制裁決議を全会一致で採択した。厳しい制裁に慎重な姿勢を示してきた中国やロシアも賛成に回った。
なぜ中国、ロシアは賛成に回ったのでしょうか?
今回の制裁決議案には当初、北朝鮮への石油輸出の全面禁止や最高指導者の金正恩・朝鮮労働党委員長の資産凍結を含む厳しい内容が含まれていたが、米国が譲歩した。
(同上)
アメリカの決議案には当初、
- 北朝鮮への石油輸出の全面禁止
- 金正恩の資産凍結
が含まれていた。「これは、厳しすぎる!」ということで、中ロが反対していた。アメリカは、両国に譲歩して、「石油全面禁輸」と「資産凍結」をひっこめた。それで中ロは、新制裁案に同意せざるを得なくなった。
新制裁の中身は???
では、新制裁の中身は、どうなっているのでしょうか?
米国がまとめた制裁決議案には、石炭や鉛、海産物の輸出禁止が含まれる。
採択された決議には、北朝鮮からの繊維製品の輸出禁止が含まれ、同国の核開発計画を進めるのに必要な資金源が標的になっている。
(同上)
石炭、鉛、海産物の輸出禁止。繊維の輸出禁止。北が核、ミサイル開発の資金を得るのを難しくしようと。
アメリカは、正しい道を進んでいる
アメリカは03年、大きな過ちを犯しました。そう、イラク戦争を始めた。
第1に、イラクには、大量破壊兵器がなかったのに攻撃した。確かにフセインは、悪い独裁者だったでしょう。しかし、イラクには「大量破壊兵器」はなく、「アルカイダとの関係」もなかった。つまり、これらの件で、フセインは「完全にシロ」だったのです。
第2に、国連安保理の許可を得ずに、イラク戦争を始めた。なぜかというと拒否権をもつ常任理事国のフランス、ロシア、中国が戦争に反対していた。それで、アメリカは、安保理を無視して攻めた。これで、アメリカの評判は失墜しました。
しかし、今回アメリカは、非常に忍耐強く、国連を重視しながら進んでいます。結果、北朝鮮は「世界の孤児」になり、中国、ロシアも徐々に守るのが難しくなってきている。
これからも北朝鮮は、挑発を繰り返すことでしょう。そのたび制裁は、徐々に強化されていきます。歩みは非常に遅く、イライラしますが、それでもアメリカ、日本は「正しい道」を進んでいるのです。