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京都のナゾ。なぜ五重塔は、ここまで高く造られたのか?

京の都を見守るように建つ五重塔。その五重塔、なぜあれほど高く造られているのかご存知でしょうか。今回の無料メルマガ『おもしろい京都案内』では著者の英学(はなぶさ がく)さんが、案外知られていないその理由を明かすとともに、東寺、醍醐寺にまつわるエピソードを紹介しています。

五重塔に秘められた物語

今回は、京都駅のすぐ近くにある東寺の五重塔、秀吉が花見をした醍醐の花見で有名な醍醐寺の五重塔をご案内します。そして後編として次回は御室桜で有名な御室仁和寺の五重塔、「八坂の塔」の名で親しまれている法観寺の五重塔をご紹介します。

どもれもみんな有名な五重塔なので実際にご覧になったこともあるかと思います。「八坂の塔」以外は全て世界遺産に登録されている寺院なので日本が世界に誇る五重塔です。それではまず東寺の五重塔です。

東寺(教王護国寺)

image by: 京都フリー写真素材

794年、平安京が造営されてから2年後に桓武天皇によって創建されたお寺です。当時は東寺とともに羅城門の西に西寺(さいじ)も造られたそうですが、鎌倉時代に焼失した後、再建されることはありませんでした。

東寺は現在まで国家鎮護の寺院として、また真言宗の総本山として隆盛し、信仰の一大拠点となりました。現在は世界文化遺産に登録されています。

東寺の五重塔は高さ約55メートルもあり、木造の建造物としては日本一の高さを誇ります。京都の玄関口である京都駅のすぐ南に1,000年以上前からそびえ立つランドマークです。

現在まで落雷などの火災で4回焼失しましたがその都度再建されたことは日本人の信仰の厚さを証明するものだと言えるでしょう。現在の五重塔は5代目で、1644年に江戸幕府3代将軍徳川家光によって再建されたものです。朝廷が建てた官営の寺院としての権威を示すため1,000年以上の間その威厳と格式を誇り受け継いできたのです。

真言密教の祖・空海は留学生として遣唐使として中国へ渡り、20年間仏教を基礎から学びました。空海は806年、33歳のとき帰国して、50歳の時に朝廷から東寺を与えられました。空海が中国で学んできた密教は当時の日本には斬新過ぎました。帰国したばかりの空海は都に入ることが許されなかったほどです。そのため九州の寺や、奈良の東大寺の別当などを経て京都の乙訓寺、神護寺などを転々としました。その後、817年和歌山の高野山の地を与えられ金剛峰寺を開いたのです。

東寺は西寺と共に平安京遷都2年後に造営が始められ、823年に桓武天皇の息子・嵯峨天皇によって空海に与えられました。東寺は栄え、西寺は衰退してしまったのはどうしてでしょう? 空海は当時最澄亡き後新仏教(密教)の第一人者でした。それに対して、西寺を与えられた守敏(しゅんびん)はそれほど有名な僧ではなかったからだと伝えられています。この二人は神泉苑で祈雨の祈願の法力を競ったのですが、空海が守敏に勝ちその後、東寺は益々栄えたといいます。

醍醐寺

image by: 京都フリー写真素材

「醍醐の花見」で有名な伏見区にある醍醐寺は、世界文化遺産にも登録されていて「文化財の宝庫」と呼ばれています。40点以上の国宝と約4万点にも及ぶ重要文化財を所蔵しているとても重要な寺院です。

その中でも圧倒的な存在感を誇っているのが京都府内最古の木造建築物でもある五重塔です。奈良県の法隆寺、山口県の瑠璃光寺にある五重塔と合わせて「日本三大名塔」の一つです。

この五重塔は、朱雀天皇が父・醍醐天皇の冥福を祈って、951年に建てたもので、創建当時の姿を今に残しています。東寺の五重塔は高さで日本一ですが、塔の美しさにおいては醍醐寺の五重塔が日本一ではないでしょうか。五重塔の高さは約38メートルで一番上の屋根のさらに上の部分にある相輪(そうりん)部分が約13メートルもあります。上の屋根ほど少しずつ小さく造られていて安定感を感じさせます。

フランスの哲学者、サルトルが塔の前に立ったとき言葉を失い呆然と立ち尽くしたといいます。私も数分立ち止まって見上げていたのを覚えています。

一挙に4つご紹介しようと思ったのですが、仁和寺と法観寺の五重塔は次回ご紹介致します。

古代インドではお釈迦様の遺骨を仏舎利(ぶっしゃり)といいます。その仏舎利を納めたお墓を「ストゥーパ」と言います。それが日本に伝わり漢字表記されたのが卒塔婆です。卒塔婆を象徴として塔が造られ建てられたのが五重塔です。なので五重塔にはお釈迦様のお墓という意味があるのです。出来るだけ多くの人が遠くからでも拝めるようにと建てられてものが五重塔だったのです。だからこそ可能な限り塔を高く造る必要があったのです。

いかがでしたか? 京都は日本人の知識と教養の宝庫です。これからもそのほんの一部でも皆さまにお伝え出来ればと思っています。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 英学(はなぶさ がく) 【発行周期】 ほぼ週刊

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