希望という名の絶望。大義なき新党と報道が日本を滅ぼす【宮脇睦】

 

一例を示します。

豊洲市場への移転は紆余曲折を経て、しぶしぶの面はありながらも、築地市場関係者にとって概ね「希望」でした。これをちゃぶ台返しで延期し、中止も匂わせたことは築地残留派にとっての「希望」でしたが、豊洲移転容認派にとっては「絶望」となります。

泰然鳴動してネズミもろくに出なかった結論「築地は守る豊洲は活かす」とは、盲目的な築地残留派にとってだけの希望で、業者が分断されることで市場全体と、豊洲市場の活性化のために集客施設を準備していた「万葉」にとっての「絶望」です。

希望とは実に主観的なもので、政策として掲げるには実に危ういものなのです。

この現実を踏まえず、濫用される「希望の主体は誰にあるのかと、長文読解の国語のテスト風に答えるなら「小池百合子」が模範解答になることでしょう。巷間皮肉られている「自分ファースト」のまんまです。

おかしな言葉は一丁目一番地に掲げている「しがらみのない政治」に代表されます。「しがらみ」とは関係性で、負の面ばかりではありません。人間関係から情報を得ることもあり、調整力が働くこともあります。

なにより人間社会の現実において「しがらみ」がなければまわらないことの方が多数です。親子、兄弟姉妹、友人、町内会、同級生、同窓生、同僚、取引先。これらをすべて断ち切って、某かのプロジェクトを完遂するのは困難を窮めます。

友人に専門家がいればそれを頼り、その恩に報いるために法律の範囲内、できる限りで便宜を図り、利益を供与するのは常識です。ましてや恩と恨みと情と縁で動く「政治」において「しがらみを絶無にすることは不可能です。

旧来からの不要な既得権の打破という意味だとしても、その既得権を打破した後に、すべての政治がドラスティックに行われるかといえばそんなことはなく、新たな「しがらみ」が生まれていくことは「都民ファーストの会」の運営をみれば明らかです。

都議会選挙では代表だった小池百合子氏は、選挙が終わると側近で特別秘書を務める野田数氏に席を譲り、さらに都議会一回生の元秘書に代表の玉座が、所属議員の同意のないまま禅譲されます。これは「しがらみ」ではないのでしょうか。

今回の衆院選挙において、都議会選挙で協力関係にあった「公明党」の前党首の太田昭宏氏の出馬が予定される東京12区に、希望の党から候補者を立てないのは、そのまんま「しがらみ」です。

それとも「良いしがらみ」と「悪いしがらみ」があるとでもいうのでしょうか。それを有り体に言えば「独裁」です。

小池氏は10月22日とされる衆院選に出ることを焦る必要はありません。例えば若狭勝氏が出馬するであろう東京10区は、以前は小池百合子氏の地盤で、小池出馬にあたって、彼が辞職して席を譲れば、いつでも国政復帰は可能です。

議員定数や報酬の縮減は、庶民の喝采を集めますが、本来は費用対効果から測定しなければならず、小池氏が繰り返す「ワイズスペンディング(賢い支出)」とは相反するものです。

初期投資は高くても、ランニングコストが数字の上では割高にみえても、それ以上の効果を得られるなら、それを選択するのが「ワイズスペンディング(賢い支出)」だからです。減らせば良いというものではありません

そもそも、先にも触れた豊洲移転を先延ばしにしたことで、年間240億円も無駄金が垂れ流されています。小池都政を見る限り、とても賢い支出ができるとは思えません。

真の地方分権」にしても、それが何を指すのかが示されていません。なにかと比較される関西地域政党から出発した「維新の党」が掲げた「道州制」のような具体策が示されていません

今後、示されるかもしれませんが、政策や理念を旗印に人が集まるのが「政党」からすれば、これも筋論から外れています。

走り出してから考えるベンチャー論は通じません。なぜなら小池百合子氏はすでにベテラン政治家であるだけでなく、何度も新党結党に立ち会っているプロ。番頭格の若狭勝氏でも2期、通算3年、ネットでは過去の女性アナウンサーとの不倫から「モナ男」と呼ばれる細野豪志氏は、2000年の初当選から17年のキャリアを持ちます。

それが具体的な政策を「これから」とするなら、何も考えていないのと同義です。

ネット配信されていた結党の記者会見を見ましたが、残念ながら具体策はなし。「しがらみのない」や「改革的な保守」といった、漠然とした言葉を繰り返すだけで、党の代表である小池百合子氏は都知事の仕事で途中退席する有様。

ただし、自由で民主的な我が国では、どんな学力でも知能程度でも、被選挙権があれば立候補できます。だから立候補は自由ですし、空疎なキャッチコピーを繰り返す代表と政党であっても、その権利は守られなければなりません。

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