八代英輝弁護士が指摘した筋論としての「郵政解散」をここで振り返ります。
小泉純一郎氏という政治家の悲願が「郵政民営化」でしたが、これには功罪があり、既得権を守りたい抵抗勢力がいたことも事実ですが、全国一律に同等の品質を提供するユニバーサルサービスを堅持するために、安易な民営化は危険だという主張にも説得力がありました。民営化による価格転嫁も懸念され、実際、今年に入って「ハガキ」が値上げになっています。
また、郵政民営化の真の狙いは、莫大な金融資産である「郵貯」にあるとされ、それを狙う米国の意向に従うだけで、国富が流出するという懸念もありました。
そんななか、郵政民営化のための法案が「参議院」で否決されました。これをもって小泉総理は「衆議院」を解散し総選挙に打って出たのです。参議院の否決で衆議院の解散、理屈に合いません。
郵政民営化に賛成しないものを「抵抗勢力」と認定して自ら総裁を務める自民党から追い出し、選挙区には「刺客」を立て追い詰めます。
いうまでもないことですが、政治は郵便事業だけではありません。それを郵政民営化という「ワンイシュー」で解散総選挙を実施したのです。
この手口が正当化されるのなら、そもそも政治家は不要です。すべての法案を「国民投票」で決めれば良いのですから。つまり郵政解散は大義どころか、代議制の民主主義から外れたものだったのです。
郵政解散に「大義」を重ねることが筋論として違う理由です。
もちろん、こうした政治的な手口すらも、手腕と呼び替える小泉流政治を国民が選んだのですから、その民意は優先されなければなりません。再び郵政民営化法案がまわってきた参議院はしぶしぶそれを認めます。政治とは妥協の芸術です。
それでもまだ、郵政民営化という「政策」があっただけ、いまの小池新党を巡るうごめきよりはマシと言えます。
小池新党こと「希望の党」の政策をウィキペディアから見てみます。
・希望の政治
- しがらみのない政治
- 議員定数・議員報酬の縮減
- 行政改革・徹底した情報公開
- 真の地方分権の確立
・希望の社会
- 女性政策など、ダイバーシティ政策の確立
- 多様な教育(奨学金、高度研究、生涯教育)
・希望の経済
- 消費税対応、実感できる景気回復の実現
- ポストアベノミクスにかわる成長戦略 不動産の有効活用 AI 金融
・希望を守る環境・エネルギー
- 原発ゼロとゼロエミッション社会への行程作成
- フードロス対策など
・憲法改正
- 希望溢れる日本の礎
…物書きの端くれとしてみれば、これはボツになるどころか相手にされないレベル、耳あたりの良い言葉を抽象的に並べただけです。言葉の間違いすらあります。「希望の経済」の項目にある「ポストアベノミクスにかわる成長戦略」とは、アベノミクスの次にあたる「ポストアベノミクス」に替わるということですから次の次。次も決まっていないのに、その次を考えるということ。無理です。
テレビ朝日「モーニングショー」で、政治評論家の田崎史郎氏がこれを指摘し、番組MCの羽鳥慎一氏も疑問を感じたと述べてから「インコースの内角攻め」と嘲笑していました。当然でしょう。
なにより「希望の○○」と並ぶ「政策」が抽象的というより、恣意性の象徴であり恐ろしさすら感じます。
Aさんにとっての希望が、Bさんにとっての絶望になることがあるように、希望とはその人の心の持ちようであり、置かれた立場により替わるものです。