強すぎる女帝。なぜ、メルケル首相は12年もトップに立てるのか?

 

メルケル、強さの秘密は、「変わり身の速さ」

WSJ9月22日付から引用します。

【ベルリン】ドイツ連邦議会選でアンゲラ・メルケル首相から政権奪取を狙う社会民主党(SPD)のマルティン・シュルツ党首は今年6月のSPD党大会で喝采を浴びた。選挙運動の中核である公約の発表に際し、同党首は「われわれは次期政権で、『婚姻上の平等(同性婚の合法化)』を実現するつもりだ!」と宣言したからだ。だがその翌日、メルケル氏は同性婚の議会採決に反対する長年の立場を引っ込めた。SPDが選挙運動で相手を攻撃する際の「材料」を奪ってみせたのだ。メルケル氏が12年間にわたって政権を維持しているのは、ある種の計算された政治的変わり身のおかげだ。

ライバルが、「同性愛者の結婚を認める!」と宣言した。メルケルさんは、それまで「同性愛者の結婚」に反対していた。ところが、反対するのをやめた。それで、WSJの結論は、

メルケル氏が12年間にわたって政権を維持しているのは、ある種の計算された政治的変わり身のおかげだ。同氏は自身の保守政党であるキリスト教民主同盟(CDU)の主義主張から一般市民のムードが離反したとみるや、立場を繰り返し──ときには唐突に──変えてきた。

 

このように変化する戦略が同氏の政治的な受け皿を広げ、その結果、反対勢力にとってみれば、同氏に対して使える攻撃材料が少なくなってしまうのだ。

(同上)

一般市民のムードがCDUの主張から離れると、メルケルさんは、立場を変える。日本でいえば、たとえば、安倍総理が「憲法改正の期は熟した!」と宣言した(とします)。ところが、庶民は、シラケている。野党は、「憲法改正絶対反対!」を叫び、力を伸ばしてきた。

そんなとき、メルケルさんだったら、「憲法改正の期は、熟していないようだ」と変心する。すると、野党は、「憲法改正反対!」で選挙を戦えなくなりますね(以上、「たとえ話」です)。メルケルさんは、こういうことをすると。

メルケル氏は、右派と左派の間にあった過去の分裂を戦略的に無視してきた。それによって、自らの政治的支配の範囲を拡大し、ライバルを周辺に追いやってきた。

 

同氏はこれまで、「変化する自らの立場」を売り物にしてきた。それは同氏の支持者たちが言う「独善をよしとしない姿勢」であり、この不確実な世界においてドイツがまさに必要とする姿勢である。
(同上)

「右派と左派の分裂を無視する」
「変化する自らの立場を売り物にする」
「独善をよしとしない姿勢」

だそうです。これって、別の言葉で、「軸がない」「節操がない」「信念がない」「誠実でない」などともいえますね。しかし、逆に「独善的でない」「柔軟性がある」「国民の声に耳を傾ける」「民主的だ」ともいえます。

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