コンセンサスを重視するドイツの統治システムにおいて、「変わり身が早い」ことへの批判はそれほどトゲを持つものではない。メルケル氏は、徴兵制、原子力発電、難民、そして最近では同性婚問題で立場を転換あるいは修正するなど、時に劇的な政治的シフトを断行してきた。だが、それは入念な分析の産物であり、社会的変化の反映でもあるとして売り込むことができた。この戦略シフトの結果、メルケル氏は左派寄りの有権者から支持を取り付ける一方、右派寄りの有権者の支持をも堅持してきた。一部の争点で見解が一致していなくても大目に見ようとする人々を取り込めたのだ。
戦略シフトで、保守の支持を維持しながら、リベラル有権者も味方につけていると。日本でいえば、保守は安倍総理の味方でしょう。これを基盤に、「左」に勢力を伸ばしていく。たとえば、
- 増税引き上げをやめます!
- ブラック企業をせん滅します!
- 残業ゼロを目指します!
- 子供3人産んだ家庭には、「家購入費を2,000万円まで補助します!」
(国は、ローンを肩代りする。2,000万円を30年間かけて払うので、財源は足りる)
などなど。
またメルケル氏の飾らない個性は、カリスマ的人物に疑い深い感情を長く抱き続けているドイツ人の共感を呼んでいる。ツイートせず、壮大な約束をするわけでもなく、演説で聴衆を鼓舞することもない。スーパーマーケットで買い物をし、自ら料理もし、週末には田舎のコテージで過ごす。以前、自分がドイツ人だと感じるのはどんなところかと質問された時、メルケル氏はこう答えた。「ポテトスープが大好きなところだ」と。
(同上)
「庶民的」であることが、メルケルさんの強さなのですね。しかもメルケルさんの場合、「庶民」を「演じている」感じがしません。本当に、そういう人なのでしょう。
誤解がないように書いておきますが、私は「メルケルさんがドイツの首相でいつづけることは、いいことだ」とはいいません。イスラム移民、難民の入れすぎで、欧州キリスト教文明は、将来滅びる可能性がある。そうなれば、メルケルさんの決断は「歴史的失敗」といわれることでしょう。また、彼女が「あまりにも親中」なのも、とても気になります。それでも、彼女が長期安定政権をつくった理由を知ることは、私たちの役にたつことでしょう。
image by: 首相官邸