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米中新冷戦時代を日本が生き残るために、インドの力が必要な理由

すでに突入していると言われる米中新冷戦時代。アメリカが国内第一主義を取りつつある中、日本にとって中国の脅威は増すばかりと言っても過言ではありません。今回の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では、著者で国際関係研究者の北野幸伯さんが読者からの質問に答える形で、これから先日本が安全保障のためにインドと組むべき理由について記しています。

日本は将来、大国になる?アメリカにつく?インドにつく?

読者のウミクジさまから、メールをいただきました。

北野先生お久しぶりです。いつも素晴らしい情報とご考察をお教えいただけてありがとうございます。

 

質問があります。少し気が早いかもしれませんが、もし米中新冷戦にアメリカが勝利した時、日本はどうすればいいんでしょうか?

 

中国に勝てたとしてもアメリカが覇権国家の地位から転落することは避けられないでしょうから、その後の世界は多極主義時代に突入することになりますよね? その時の日本には、大きく分けて3つの選択肢があると思います。

 

  1. 日本自身が多極世界の中の一極になる
  2. 現在よりは自立した親米同盟国としてアメリカの勢力に留まる
  3. アメリカを裏切って他の勢力(インド?)に寝返る

まあ、アメリカがどのように中国を倒すのか、その時のアメリカや日本がどのくらいの余力を残しているのかにもよるとは思いますが、北野先生はどれが一番いいと思いますか?

 

僕は1.をできるのが一番いいとは思いますが、現在の日本にそこまでの力があるとは思えませんし、欧州のように「野望を目指すために無理をしたせいで国民を不幸にする」ということが起きそうな気 がするので、3.がベターではないかと考えているのですが、北野先生はどのようにお思いでしょうか?

 

お忙しい中申し訳ありませんが、もしよろしければ回答していただ ければありがたいです。これからも無理をせず、お体にお気をつけてお過ごしください。

お答えします。

日本の大戦略

日本には今、敵が二国あります。一国はいうまでもなく、北朝鮮。もう一国は、「日本には尖閣だけでなく、沖縄の領有権もない!」と宣言している中国です。中国に対処する方法、今までは簡単でした。日米安保がきっちりしていれば問題なかった。証拠もあります。

2010年9月の尖閣中国漁船衝突事件。中国は、世界に向けて「尖閣はわが国固有の領土であり、核心的利益である!」と宣言します。そして、レアアース禁輸など日本に過酷な制裁を課した。しかし、オバマさん、クリントン国務長官、ゲーツ国防長官などが、「尖閣は日米安保の適用範囲である!」と宣言したことで大人しくなった。

2012年9月の尖閣国有化の時もそうでした。中国は、尖閣に軍事侵攻することも考えていたのです。しかし、アメリカがどう動くか、まず知らなければならない。そこで、習近平(当時国家副主席)が2012年9月19日、パネッタ国防長官に会い、「尖閣問題にアメリカは干渉するな!」と脅迫した。ところがパネッタさん、「尖閣は日米安保の適用範囲。軍事衝突になればアメリカも出ざるを得ない」と断言。これで、中国は引っ込んだのです。

というわけで、日米安保は、現状はっきり機能しています。いろいろなことを言う人がいますが、事実機能しているのです。

しかし、アメリカが年々衰退しているのも事実。私が05年の本『ボロボロになった覇権国家』の中で、「アメリカは没落する」と書いたら、RPEの読者さん以外、誰も本気にしませんでした。しかし、2017年の今、「アメリカにかつての強さはない」こと誰でも知っています。だから、「日米安保も将来どうなっていくのかわからない

そこで、日本がアメリカと並んで重視しなければならないのが、インドです。インドのGDPは2016年、2兆2,564億ドルで、世界7位。しかし、一人当たりGDPは同年1,723ドルで、世界144位という低さ。この国は、どう見ても「成長期前期」にいる。10年すると、おそらく日本のGDPを軽く超えていることでしょう。そして、アメリカ中国に並ぶ大国になることは間違いない。

そこで日本は、世界最大の民主主義国家で親日国インドとの関係をますます強化していきます。過去と現在のアメリカ。未来のインド。この二国は、日本にとって最重要国家なのです。

「中国後」の日本は、どうする?

ここからウミクジ様の質問が出てきます。

中国に勝てたとしてもアメリカが覇権国家の地位から転落することは避けられないでしょうから、その後の世界は多極主義時代に突入することになりますよね? その時の日本には、大きく分けて三つの 選択肢があると思います。

 

  1. 日本自身が多極世界の中の一極になる
  2. 現在よりは自立した親米同盟国としてアメリカの勢力に留まる
  3. アメリカを裏切って他の勢力(インド?)に寝返る

私の答えは、この三つ、どれでもありません。

まず、中共が崩壊しても、日米同盟はなるべく長く続けるべきです。なぜでしょうか? ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によると、アメリカの軍事費は2016年、6,110億ドルで、ダントツ世界一。2位中国(2,150億ドル)の2.8倍です。ちなみに日本の防衛費は世界8位(461億ドル)で、なんとアメリカの13分の1にすぎません。

現状日本にとって、「日米安保」は、「最大の資産」と言えます。10年後20年後、ひょっとしたらアメリカの軍事費は世界1ではないかもしれない。それでも2位か3位にはつけているでしょう。この関係を自らぶち壊す必要はないと考えます。

もう一つ、日米安保がなくなった後アメリカが親日国家でいる保証はありません。日英同盟が破棄された後、イギリスは、アメリカと組んで日本を潰すことにした。つまり、日英同盟解消で、イギリスは、味方から敵に転じたのです。アメリカもそうなる可能性があります。つまり日米安保維持は、「アメリカが反日的敵対勢力になるのを抑える意味もある。

さらに、ご指摘のとおり、アメリカは徐々に衰退していく方向。すると、自然と、日本の役割が大きくなることを期待されます。つまり、日本は、アメリカのお墨つきを得て、「軍事的自立」に向かって進んでいくことができる。

では、インドはどうでしょうか? これは、アメリカと一緒にインドと同盟を組めばいいですね。インドは、「世界最大の民主主義国家」である。核兵器もある。地政学的には、中東と中国のど真ん中に位置している。というわけで、日米印同盟というのは、十分ありえる話だと思います。

日本は、アメリカインド両方と仲良くし、しかも軍事的自立を目指していく。そんな方向性がベストなのではないでしょうか?

もう一つ、とても重要なことを書いておきます。中共が崩壊し、中国が民主化された。それで、永遠に中国が沈んでいるわけではありません。

ソ連は、1991年12月に崩壊した。新生ロシアは、8年後の99年には、成長を開始しています。そして、プーチンは、再びアメリカの強力なライバルになった。中共が崩壊しても、中国はまた復活してきます。新生中国が、親日であればいいですが、そうでないことも考えておかなければ。

image by: 安倍晋三 - Home | Facebook

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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