例えば、毎年100億円の利益をあげる力のある企業の発行株数が1000万株で、この会社の株の市場価格が2万円(一株あたりの利益の20倍)だったとします。
すると、一株あたりの利益は(100億円を1000万株で割って)1000円になります。仮に利益を100%配当に回すのであれば(通常は、運転資金の確保のためにそんなことはしません)、一株あたりの配当は1000円になります。配当なので、株主は翌年の確定申告で、この配当を収入として税務署に報告し、税金を払う必要があります。
逆に、会社がこの利益全て(100億円)を使って自社株買いをするとどうなるでしょうか。50万株が自社株買いにより消滅するため、市場に流通している株の数は950万株に減ることになります。
すると一株あたりの利益は、分母が小さくなっただけ増え、(1000円から)1053円に増えることになります。市場価格が、自社株購入前の「一株あたりの利益の20倍」に落ち着くのであれば、株価も同じく上昇して、21060円になって然るべきで、この上昇分1060円が、株主に対する還元となります。配当と違って、株価が上昇しただけなので、税金の支払いは必要ありません(株を売却した時に、税金を支払えば良いのです)。
これだけ書くと、「自社株買いの方が圧倒的に良い」ように思えるかも知れませんが、実際はそれほど単純ではありません。株価は、市場の心理で動くので、「一株あたりの利益」が増えたからといって、それと同じだけ株価が上昇する保証はありません。会社が持つ現金が減ったことを不安材料として、株価が下がる可能性すらあります(これは配当の場合も同じです)。
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