MAG2 NEWS MENU

鳥貴族の客数が7%減。28年ぶりの「値上げ」は失敗だったのか?

10月から28年ぶりの値上げを断行した焼き鳥チェーン「鳥貴族」。同月の客足は7%減と、過去最大の下げ幅となりました。しかし、無料メルマガ『店舗経営者の繁盛店講座|小売業・飲食店・サービス業』の著者・佐藤昌司さんは、10月の週末が1日少なかったことや台風が直撃したことなどもふまえ、結果は決して悪くないと分析。むしろ、値上げが成功した可能性を指摘し、その理由と外食産業の今後についても持論を展開しています。

鳥貴族の10月客数が7%も減少。値上げは失敗だったのか?

焼き鳥チェーン「鳥貴族の10月の既存店客数が前年より7.0%減りました。鳥貴族は2014年7月に株式を上場し、その翌月から月ごとの実績を公表していますが、その中では最大の下げ幅を記録した形です。

値上げが影響したと考えられます。鳥貴族は10月から、280円均一から298円均一(いずれも税抜き)に約6%値上げしました。28年ぶりとなる値上げです。値上げの理由は、人件費や食材の仕入れコストなどが上昇しているためとしています。

人件費に大きな影響を与えるアルバイトの時給は上昇が続いています。10月に東京都の最低時給は26円引き上げられ958円になりました。また、リクルートジョブズの調査によると、10月の三大都市圏の外食の平均時給(募集時)は前年同月比2.2%増の985円となっています。

食材の仕入れコストも上昇しています。例の1つとして、6月からの改正酒税法の影響で酒類の仕入れ価格が上昇しています。鳥貴族は値上げの理由の一つとして、このことを挙げています。

消費者の節約志向が弱まる気配を見せず、多くの外食が値上げに躊躇していますが、そうしたなか、鳥貴族は値上げに踏み切りました。そこで、その影響が出る鳥貴族の10月の動向に注目が集まっていましたが、結果、客数が7.0%も減少してしまったのです。

ただ、10月の客数が落ち込みを見せているのは鳥貴族だけではありません。外食各社で軒並み減少している状況です。

牛丼店大手3社を見てみます。すき家の客数は3.8%の減少にとどまっています。吉野家は21.6%減少しました。去年10月に実施した牛丼並盛りが1杯無料になるキャンペーンの影響で去年10月の客数が前年同月比で21.8%増加しているため、その反動減と考えられます。松屋は5.5%の減少でした。

居酒屋業界はどうでしょうか。ワタミグループは0.7%の減少です。減少幅は小さいように思えますが、4~9月は平均7%増加していたことを考えると、10月は伸び悩んだと考えることができます。塚田農場などを展開するエー・ピーカンパニーは10.7%の減少と大きく落ち込みました。ただ、4~9月は平均7.0%の減少だったことを考えると、10月の落ち込みはそれほどでもないと考えることができます。

その他の外食も落ち込みを見せています。ガストなどを展開するすかいらーく7.5%減少しました。同社は、天候不順の影響はそのうち3~4%程度と分析しています。マクドナルドは4.0%増加しましたが、7~9月は平均8.9%増加していたので、10月は伸び悩んだと考えることができます。ロイヤルホストは6.0%減スシローは3.6%減サイゼリヤは4.6%減となっています。他の外食でも多くが落ち込みを見せています。

10月の客数の増減に影響を及ぼした要因について見ていきます。

まず、今年の10月は前年より週末が1日少なかったことが客数の増減に影響を及ぼしたと考えられます。これにより2%程度減少したと考えられます。

次は、「天候」です。10月は週末に2回台風が直撃するなど天候に恵まれませんでした。すかいらーくはその影響で3~4%程度減少したとしていますが、妥当なところではないでしょうか。

これらを総合すると、週末数の違いと天候の影響による客数の減少は5~6%程度と考えることができます。これを鳥貴族に当てはめるとどうでしょうか。鳥貴族の減少は7.0%でした。そこから5~6ポイントを差し引いて考えると、値上げの影響による減少は1~2%程度と推測することができます。

一方、鳥貴族の10月の既存店客単価は3.5%の増加です。値上げによる客数の減少が1~2%というのが正しく、客単価の増加が値上げだけによるものだとすれば、値上げは売り上げを1.5~2.5%押し上げる効果があったと考えることができます。上限値は、客数の減少効果よりも客単価の増加効果の方が高くなります。

売り上げの押し上げ効果はもう少し高いと考えることもできます。

鳥貴族の客単価は長らく前年同月比でマイナスが続いていました。例えば、今年9月は1.4%減、8月は2.0%減となっています。17年7月期通期では各月平均1.0%の減少です。客単価が1%程度下落している中での話なので、値上げによる売り上げの押し上げ効果は先に示したものより1ポイント程度高い2.5~3.5%程度だったと考えることもできます。

サンプルが1月分だけなので現段階では断定的なことは言えませんが、値上げによる客単価の増加効果が客数の減少効果を上回る可能性が高いため、鳥貴族の値上げは正解だったと考えることもできそうです。

値上げ後の価格を200円台で収めたことが功を奏したと考えられます。値上げ幅は約6%と決して小さくはありませんが、280円均一から298円均一への値上げで、旧価格と新価格はともに200円台なので、「それほど値上げ幅は大きくないと感覚的に消費者が捉えたと推測できます。

これが300円台だったら話は違ったでしょう。たとえ値上げ幅がそれほどでなかったとしても、200円台から300円台への変更であったならば、「大きく値上がりした」と感覚的に消費者は捉えるはずです。

串カツ田中も以前、ビールやホッピーセット、各サワーなどを値上げしましたが、390円から399円への値上げにとどめています。わずか9円の値上げで、上昇率は2%に過ぎません。もう少し価格を高くしたい思いがあったのでしょうが、400円の大台に乗るのと乗らないのとでは、客数への影響において雲泥の違いがあります。

外食各社は難しい判断を迫られています。値上げしたいところですが、客離れを懸念して躊躇しているところが少なくありません。そうしたなか、鳥貴族は改正酒税法などを理由に値上げを断行しました。タイミングとして、改正酒税法は渡りに船だったのかもしれません。値上げの多少の口実にはなったでしょう。

他の外食各社は、もう数カ月、鳥貴族の客数の動向などを注視していくことになりそうです。その後、値上げに踏み切る外食がたくさん出てくるのかもしれません

image by: 鳥貴族 - Home | Facebook

店舗経営コンサルタントの視線で企業を鋭く分析!
毎日更新されるブログはこちら

佐藤昌司のブログ「商売ショーバイ」

佐藤昌司この著者の記事一覧

東京MXテレビ『バラいろダンディ』に出演、東洋経済オンライン『マクドナルドができていない「基本中の基本」』を寄稿、テレビ東京『たけしのニッポンのミカタ!スペシャル「並ぶ場所にはワケがある!行列からニッポンが見えるSP」』を監修した、店舗経営コンサルタント・佐藤昌司が発行するメルマガです。店舗経営や商売、ビジネスなどに役立つ情報を配信しています。

無料メルマガ好評配信中

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 店舗経営者の繁盛店講座|小売業・飲食店・サービス業 』

【著者】 佐藤昌司 【発行周期】 ほぼ日刊

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け