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大手ゼネコン大儲けの裏で疲弊する、下請け作業員の「壮絶現場」

最近話題となっている、リニア中央新幹線建設工事をめぐるゼネコン大手4社の談合問題ですが、多くの人は「またか」「儲ける会社が変わるだけ」などといった印象を抱かれたのではないでしょうか。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では、米国育ちで元ANA国際線CAという経歴を持つ健康社会学者の河合薫さんが、大手ゼネコン建設現場の実態を明かしています。

※本記事は有料メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』2017年12月20日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

ゼネコンの壮絶ブラック現場

リニア中央新幹線工事を巡り、鹿島建設、清水建設、大林組、大成建設のスーパーゼネコン4社に談合の疑いが持たれている事件で、大林組の幹部などが「談合を認めている」との報道がありました(19日付朝日新聞朝刊)。

総工費9兆円のメガプロジェクトです。

そんなにカネかけてゼネコン儲けさせて…。

そもそもリニアなんて必要ないじゃん!と思っているので、まったくもって意味不明です。と、“リニア問題”には言いたいことが山ほどあるのですが、今回はちょっと違う角度から、この問題を考えてみようと思います。

数ヶ月前、新国立競技場の建設工事に従事していた現場監督の男性当時23が過労自殺した問題を覚えているでしょうか?

男性は建設工事を受注した大成建設などのJVの1次下請けの社員で、通常の2倍以上の仕事を任されていました。

早朝5時に出勤し深夜0時過ぎに帰宅ひと月の残業時間は190時間超で、周囲の人たちも心配するほど疲弊しきっていたそうです。

国立競技場のすったもんだで行程が遅れ、そのしわ寄せが“現場”にいくのですから、言葉もありません。

実はこのときと同じ状況が、あちこちの現場で起きていることはあまり大きく報道されていません。

建設現場は異常な人手不足で、大手ゼネコンはコスト削減で下請けへの買いたたきをするなど、“超ブラック”になっています。

バブル崩壊後、新卒採用を見送るなどコスト圧縮に精を出してきました。

幸い公共事業も激減していたので、それでもなんとかなった。

ところが2011年の東日本大震災をきっかけに需要が急増

新卒を控えた影響で、現場監督が足りず派遣会社に依頼したため、現場の労務管理はノーチェックです。

人手不足→納期が遅れる→長時間労働→辞める人増加→スキル低下でミス多発→長時間労働

と超スーパーブラック状態に陥っています。

下請けは人手が足りないから孫請けに頼む。孫請けも人がいないとその下に頼む。

買いたたきに相当あってますよ。でも、断れば会社は潰れるから、とにかく受ける。

現場の賃金は上がらないでしょ。でも、寝る時間さえ削れば需要はあるんで、『稼げるときに稼ごう』と現場を掛け持ちする人たちもいるんです。

みんな疲労でいらいらして、人間関係は悪くなる一方だし、かなり現場はヤバいですよ。

実際に建設会社に務める方は、“現場の今”をこう話してくれました。

この男性によれば、リニアの現場も、オリンピック関連の現場も、すべて工程が遅れているので、上からは「早くやれ!」と尻を叩かれるばかりだそうです。

先月、東京労働局が2020年東京五輪・パラリンピックの主会場となる新国立競技場の建設にかかわる企業全762社を対象に、従業員の労働時間などを尋ねるアンケートを実施。

その結果、約6割にあたる81社で違法な長時間労働や残業代未払いなどの法令違反が見つかりました。

また、81社のうち、違法な長時間労働が見つかったのは、自殺した男性が勤めていた建設会社を含む37社。うち10社が月100時間超3社が月150時間超の違法残業をさせていたのです。

結局のところ、潤うのは大企業のみ。

大企業では働き方改革のもと残業規制も行なわれているケースも多い。

すると派遣社員下請けが“すべての尻拭い”をすることとなり、命を絶つ人や、突然死する人が量産されるーーー。

格差”はさまざまな形で、さまざまの場所で広がっています。

談合問題はおそらくその“上”にいる政治家などにつながっていくのでしょう。

でも、その下は?

今後もこの問題は取り上げていきますので、関係者の方は状況などお知らせいただければうれしいです。

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image by: shutterstock

※本記事は有料メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』2017年12月20日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

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デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』(2017年12月20日号)より一部抜粋

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米国育ち、ANA国際線CA、「ニュースステーション」初代気象予報士、その後一念発起し、東大大学院に進学し博士号を取得(健康社会学者 Ph.D)という異色のキャリアを重ねたから書ける“とっておきの情報”をアナタだけにお教えします。
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