但し、この考え方を憲法の条文にするには、要素として大きく5つに整理する必要があるように思います。そこで今回再整理をしたのが以下です。
(a)徹底したシビリアン・コントロール。
(b)日本の「国のかたち」を国連=連合国の正統性に帰属させる。
(c)国連や多国間安全保障の枠組みからの脱退・孤立を防止。
(d)軽武装、すなわち侵略、先制攻撃の禁止。
(e)大量破壊兵器保持の禁止と、拡散防止のための国際貢献義務。
このうち(b)と(c)については、現行の日本国憲法では前文で表現している部分です。具体的には「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持」という部分です。この「平和を愛する諸国民」という部分ですが、自民党の政治家などはよく「お花畑のような発想で危険な文言」だなどと批判しますが、見当違いも甚だしいものがあります。
この「平和を愛する諸国民」というのは、連合国=戦勝側=国際連合のことです。それ以外の何者でもありません。ですから、「公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持」というのは、最後の枢軸国として連合国に完全に降伏し、その枢軸国としての「国体」を放棄するという意味なのです。
この前文に問題があるとすれば、正にこの部分であって、確かにこれでは戦後処理の一環という一過性のものと誤解を受ける可能性があるわけです。ですから、仮に主要な条文を改正し、その際に前文にも手を入れるのであれば、このような「戦後処理条項」的な文言の代わりに、できれば本文の条文の中に(b)や(c)の部分は入れておかねばなりません。
シビリアンコントロール、つまり文民統制ということですが、これは形式的に現役武官が意思決定に入らないようにするというだけでは足りないと思います。軍の名誉や功績を追求したいという利害によって、国策が歪められてはならないということが本筋です。また仮に文民であっても、軍事的冒険主義を政争の具にさせない工夫も必要と思います。
いずれにしても、安倍案、自民党案、枝野案にはそれぞれに大きな欠点があるように思います。仮に、現状の延長で自衛隊を合憲化するというのが目的であれば、「前項の目的を達するため、自衛隊を設置することができる。」という素直な条文が叩き台になるでしょう。また、現状の「国のかたち」の理念をしっかり条文化するのであれば、「文民統制、国連=連合国への帰属、軽武装」ということを書き込む必要があると思います。
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