冷静なるプーチン「金正恩はゲームに勝った」という発言の真意

kitano20180116
 

北朝鮮の金正恩氏が新年の辞で「アメリカ本土を今すぐにでも核攻撃できるICBMが完成し、実戦配備した」と明言したことが注目されましたが、マティス米国防長官「まだ無理だろう」との見解を示しました。しかし、無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者で国際政治に詳しい北野幸伯さんによると、ロシアのプーチン大統領は金正恩氏の発言を「事実」と認識しているようです。このまま第2次朝鮮戦争は始まってしまうのでしょうか。

プーチン、「金正恩は、(アメリカとの)ゲームに勝った!」

プーチンが金正恩について非常に興味深い発言をしています。

「正恩氏、賢明で成熟した政治家」…プーチン氏

読売新聞 1/12(金)18:49配信

 

【モスクワ=畑武尊】ロシアのプーチン大統領は11日、北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長について「間違いなく賢明で成熟した政治家だ」と述べ、核・ミサイル開発を進める北朝鮮に国際社会が圧力を強める中で、正恩氏を擁護した。モスクワでの露メディア幹部らとの会合で語った。

間違いなく賢明で成熟した政治家」だそうです。「プーチンさんから見ると、ああいう(金正恩)のが賢明で成熟した政治家なのか…」と、かなりびっくりですが…。どういう意味なのでしょうか?

プーチン氏は「金氏はゲームに勝った。核爆弾と仮想敵国のどんな所にも到達するミサイルを持っている」と指摘。約2年ぶりに南北対話が再開したことを念頭に「(金氏は)いまは状況を落ち着かせることに関心がある」と述べ、核保有を背景に巧みな駆け引きをしているとの認識を示した。
(同上)

金氏はゲームに勝った。核爆弾と仮想敵国のどんな所にも到達するミサイルを持っている」そうです。

「金氏はゲームに勝った」。これは、もちろん「アメリカに勝った」という意味。「核爆弾と仮想敵国のどんな所にも到達するミサイルを持っている」。北は「核爆弾と仮想敵国(=つまりアメリカ)に到達するミサイルを持っている」。要するに、「北はアメリカ本土に到達するミサイルを保有しているので、アメリカは戦争を始められないだろう」と言っている。このあたり、プーチンとアメリカ国防総省の認識にズレがあるようです。

南北対話が再開したことを念頭に「(金氏は)いまは状況を落ち着かせることに関心がある」と述べ、核保有を背景に巧みな駆け引きをしている

これは何でしょうか? 金正恩は、すごい勢いで核開発、ミサイル開発を進めてきました。実験もどんどんやる。すると、アメリカサイドから警告されたり、脅迫されたりします。金正恩は、「やれるものならやってみろ! 韓国の民を100万人殺してやる!」と、ソウル市民を「人質」として利用していた。当然アメリカは戦争を躊躇します。金は、さらに核、ミサイル開発を進めていく。そして、ついにアメリカ本土に届く核兵器搭載可能なICBMを手に入れた。いまや、ワシントンやニューヨークを壊滅させる力を手に入れた(繰り返しますが、アメリカ国防総省は、「まだだ」としています)。これで、アメリカは北を攻撃することができない

金の次の課題は何でしょうか?

  1. 北朝鮮を「事実上の核保有国」として認めさせること。つまり、インド、パキスタン、イスラエルのような地位をゲットする
  2. 経済制裁を解除させること。そのためには、「いまは状況を落ち着かせることに関心がある」

とまあ、プーチンは、金正恩の言動をこのように分析しているのです。

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