冷静なるプーチン「金正恩はゲームに勝った」という発言の真意

 

プーチンは、朝鮮半島の「非核化」を望む

ところで、プーチンは北朝鮮の核保有を容認する気はないそうです。

一方でプーチン氏は、「朝鮮半島の非核化は対話を通じてのみできる」とも語り、対話による解決の必要性を改めて強調した。
(同上)

「朝鮮半島の非核化は対話を通じてのみできる」そうです。「一応、プーチンさんも北朝鮮の核保有には反対なのですね」と「ホッ」としますが。実をいうと、プーチンの北朝鮮核問題解決法」、実現すればすべての国にメリットをもたらすものです。何でしょうか?

この問題に実際関わっている国は、日本、アメリカ、韓国、中国、ロシア、北朝鮮です。このうち、日米韓は、「北朝鮮の核兵器保有は脅威なので、北の核兵器を破壊したい」と考えている。中国、ロシアは、「戦争が起こり、アメリカの同盟国韓国が朝鮮半島を統一すると、緩衝国家が消滅し米軍が中ロ国境に駐留することになるから困る」と考えている。だから彼らは、北朝鮮を守っているのです。

その一方で、「できれば北朝鮮の核保有をやめさせたい」とも考えている。なぜ? 中国とロシアは、「核拡散防止条約」(NPT合法的に核保有認められている(米英仏も、「合法的」に認められている)。NPT体制は、中ロに「合法的核保有」いう「特権的地位」を与えているので、これは維持したい。北朝鮮の核保有を認めれば、NPT体制が崩れ、日本や韓国が核兵器開発に走ったとき、「止める根拠」がなくなってしまいます。日本、韓国、あるいはイランは言うでしょう。「なぜ北朝鮮はOKで、俺たちはダメなのか?」と。こういう状態を避けたいので、中ロは、「非核化を支持している。それで、「国連安保理で制裁を支持する」一方で、「石油をこっそり供給して北を守る」といった一見矛盾した行動をとる。

最後に北朝鮮。金正恩が核開発に走る唯一の理由は、「アメリカが怖いから」です。アメリカは、フセインやカダフィを殺した。今は、シリアのアサドを殺そうとしている。特に、「核開発」を03年に放棄したカダフィが2011年に殺されたのは、大きな衝撃だった。金正恩は、アメリカを信用できないのです。

日米韓、中ロ北。すべての国を満足させる方法はあるのでしょうか? あります、トランプが全世界に向けて、「北が核を放棄すれば北の体制は保証する私は神と全世界にこのことを約束する!と宣言すればいい。そして、日韓中ロを「立会人」として、米北は正式な条約を結ぶ。この条約は、トランプ後の大統領も守らなければなりません。

この案が実現するとどうなるでしょうか? 日米韓は、北朝鮮の核の脅威から解放されて幸せ。中ロは、傀儡国家が残り、なおかつ半島非核化が実現して幸せ。北は、アメリカの脅威から解放され、体制が安泰になって幸せ。なんだか、メチャクチャ「非現実的」な話ですね。

しかし、プーチンは一度この方式で成功した実績があります。2013年8月、オバマは、シリア攻撃を始めようとした。理由は、「アサド軍が化学兵器を使ったから」でした。プーチンは、アサドを説得し、「化学兵器全廃」を約束させた。その後、迅速に「化学兵器の破棄プロセス」がはじまり、オバマはシリア攻撃をやめました。プーチンは、同じような方式を考えているのでしょう。

とはいえ、アメリカはその後、「IS掃討」を理由にシリア空爆を開始した。トランプは去年、シリアをミサイル攻撃し、世界を驚かせた。だから、「完全にうまくいった」とはいえない。それでも、化学兵器の全部(あるいはほとんど)を破棄したアサド体制は存続しています。

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